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しおりを挟むドゴン!
「っ、あっぶな!!」
「剛」
「お前なぁ、妖力漏れ過ぎだ」
蓮加の周りが綺麗に凹んでいた。剛は、寸前のところで後ろに下がって、潰されることはなかった。
授業が始まる前なこととこの辺に人がいなかったこともよかったから、巻き込まれる者はいなかった。人のいないところに蓮加が選んで行ったのだろう。
「何よ。寸前で回避くらいできるでしょ。そうじゃなきゃ、私の婚約者なんてやってられないはずよ」
「あのなぁ、回避くらいって言うが、命がけなんだぞ」
剛は、その辺が長けているからこそ、蓮加の婚約者に選ばれたようなものだと思っていた。
蓮加が、兄を何かと唆して悪巧みを企てる悪友を好いているとは微塵も思ってはいないのだ。
「天音は?」
「義仁と授業に行ったようだ」
「怪しまれたわよね」
「どうかな。具合でも悪くしたとか思ってるかもな」
「……まさか。私の心配なんてするわけないわ」
「そうか? 天音嬢なら、あると思うが」
「……」
蓮加は、心配などされたことがなかった。
幼い頃に蓮加の周りで、遊ぶルールを教えてくれる者もいなかった。
兄にせがんで、同じ年頃の子のいるところに行ったのは、気まぐれだった。車で、移動中に見かけた光景が、蓮加の頭から離れなかったのだ。
「お兄様」
「……どうした?」
だから、わがままを言った。兄は、ただ妹がしてみたいと言ったことに付き添ってくれただけだった。
そこで、天音に会って、彼女に会いたくて、あそこに行こうとしたのは、蓮加だけでなくなったものは、すぐだった。
二人に普通に接してくれた彼女が、死にかけることになるとは思いもしなかった。
あの事件から、義仁は極力、人と関わらなくなった。暴走した自分を抑えられる者がいないことで、心を閉ざした。
「蓮加。お前まで、私に付き合うことはない」
「お兄様」
極力人を避ける兄にそんなことを言われたが、自分のせいだと思う気持ちが拭えなくて、妖力が暴走するようになったのも、その頃からだった。
そのガス抜きのように剛と婚約したのだ。
剛は、それまで義仁と好き勝手して悪戯もよくしていたが、事件後にすっかり様変わりした義仁にどう接していいか正直わからなかった。
そんな時に蓮加と婚約することになり、シスコン気味な義仁に何かしら言われるかと思ったが、思っているようなリアクションはなかった。
感情を押し込めて無理しているとわかったのは、それからしばらくしてからだった。
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