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しおりを挟むそんなことになっているとも知らず、天音はお目当ての王子を見ることも叶わず、話す機会もないことに不満を持って、早々に夏期講習に来なくなっていると思っていた。
何なら初日に講習を受けずに帰ったとすら思っていたが、最後まで参加していたと聞いて驚いていた。
(成長したってこと……?)
そうであったらいいが、違う気がしだ天音だが、王女や他の人に梨乃のことを聞くことはなかった。
知らない方がいいことのように思えた。
王子は、機嫌がすこぶるよかった。それもこれも、天音と毎日会えたことが大きかったようだ。
王女は、真逆梨乃の相手をしていて、他の人たちと一緒に彼女の面倒を見ることになり、やさぐれていた。
「本当に最悪だったわ」
「お疲れさん」
婚約者の剛に労われていた。
「だが、珍しいな。そんなに必死になるなんて、やっぱり義仁のためか?」
「お兄様だけのためじゃないわ」
「?」
剛は、ブラコンな蓮加が天音のために何かやるとは思ってもみなかった。
それにしては、何かと天音を気にかけているのは、兄に対してのアピールだけではないようだ。
「彼女は、私の初めての友達なのよ」
「友達?」
「向こうは、覚えてないだろうけど」
蓮加は懐かしむような顔をした。
「それって、義仁が暴走した時の……」
「剛。やめて」
「っ、悪い」
婚約者となった剛ですら、妖力が強い蓮加に間近で放たれたら、震え上がるものがあった。
「……ごめん」
「いや、俺が悪かった」
それは、あやかしの世界では話してはならないタブーとなっていた。
厳戒令がひかれて、その事実を把握しているのは僅かとなっていた。
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