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天音は両親のことやら知り合いのことやらを思って、げんなりしていると……。


「天音」
「殿下」
「……」
「義仁様」
「移動しているのか?」
「はい。次は、王女殿下たちと合同授業なので、わざわざ王女殿下たちが迎えに来てくださったんです」
「それで、剛まで一緒なのか」
「蓮加と一緒に迎えに行ったんだ。んな怖い顔すんなって」
「……」
「お兄様。たまにはランチをご一緒しませんか?」
「いや、そんな時間は……」


そこまで言いながら、天音が一緒なことを思い出したようだ。

同年代と群がることを避ける王子は、天音をじっと見ていたかと思うとこう言ったのだ。


「そう、だな。そのくらいなら」


そう答えたこと剛や周りが、ぎょっとしていた。

いや、彼つきの執事である犬飼は、すぐさま他の者に合図をして、色々と手筈を整えようとしていたが、そんな周りに天音が気づくことはなかった。






「蓮加は?」
「妖力が暴走しておさまらないから、部屋に戻った。あれは、しばらく無理そうだ」
「珍しいな」
「天音嬢にいいところ見せようとして、張り切りすぎたみたいだ」
「そうか」


義仁は、それを聞いて笑っていた。

天音は、食堂で食事することに緊張していたが、他の生徒たちのように並ばずに席に座ると並べられることにびっくりしていた。


(この状況で、食べるのね。……凄い視線を感じるわ)


そんなことを思いながら、王女がいてくれたらと思っていた。が、食事を食べ始めるうちにその美味しさに目を輝かせることになった。


「美味しい」
「気に入ったか?」
「えぇ、とっても」
「そうか」


義仁は、美味しそうに食べる天音を見て、微笑んでいた。


「マジか」
「……なんだ?」
「いや、お前が笑ってるの久々に見た」
「え?」
「……」


天音が、不思議そうにするのを見て剛は補足するようにこう言った。


「あー、ほら、忙しくしてるから、仕方がないが」
「そうなのですか? 殿下、よく笑っておられますけど」
「……天音嬢は、よく見るのか?」
「えぇ」
「へぇ~」
「剛」


そんなことがありながら、天音は美味しい食事に夢中になっていた。

それを義仁たちに見られていることにも気づいていなかった。


「……天音嬢。苺が好きなのか?」
「えっと、果物は好きです」
「なら、俺のやる」
「え?」
「……」

剛が、そんなことを言い出したことに王子は、眉を顰めていた。


「いつもなら、蓮加にやるんだがいないからな。どうにも甘いものは、好まないんだ」
「そうなのですか」


チラッと見ると王子のところには、デザートはなかった。


(ここのデザートは、美味しいって王女がよく話していたから、楽しみにしていたのよね)


そこに犬飼が、殿下のところにデザートがなかったと謝りながら置いていた。それは、〇〇たちのより苺が多めだった。


「天音。これを」
「え? でも……」
「あー、悪い。天音嬢、それ蓮加のところに持って行かせていいか? あいつ、今日のデザート楽しみにしてたの忘れてた」
「あ、はい」


剛の言葉に天音は、すぐにデザートを彼に返して、義仁の差し出す方を受け取った。

その間も、じっと義仁に見つめられて天音は、変な緊張をしながらも、デザートを満喫した。

それに義仁が、心からホッとしているのにも気づいていなかった。

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