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しおりを挟むこの世界には、あやかしと呼ばれる者たちが住んでいる。
三觜天音も、あやかしだが妖術を用いて変化することも出来ないところは両親に似たようだ。
それでも、いじめられることもなく、平穏な生活を送っていた。それこそ、とある事件が起こるまでは、子供たちだけで日が暮れるまで遊ぶことも自由だった。
天音が、幼い頃に事故があって以来、変わってしまった。もっとも、変わったと言われているが、天音はその前のことを何一つ覚えていなくて、不自由になったと嘆いてつまらなそうにする子供たちの中に入れなかった。
(前って、今じゃ、そんなに違うのかな?)
一体、何があったのかを問うこともタブーとなり、そのうち学校に入ることになって、そのことを嘆くことも疑問に思う者もいなくなっていった。
天音は、覚えていないと思っていたが、夢はよく見ていた。ただ目が覚めるとそのことを覚えていないせいで、不思議な感覚に囚われるのは、いつものことになっていた。
その夢こそ、話すことがタブーとなった全容を物語っているものだった。
幼い頃、事故が起こるほんの少し前に明らかに身分の高い身なりの良すぎるて、顔の整ったあやかしの兄妹が、公園に来た。妹の方は目新しいのか、きちんと順番を待つために並んでいるのもお構いなしに割り込んで遊ぼうとしたのだ。
それを見て、天音がその子に声をかけた。
「みんな、並んでるのよ。遊びたいなら、順番を待たないと」
「嫌よ。今、遊びたいの」
その物言いにとある子供を思い出して、しかめっ面をしたのは一人二人ではなかった。
「あいつが居ないと思ったら、そっくりな余所者が来たな」
天音は、あいつと言っているのが誰のことかよくわかっていて苦笑したくなったが、それでもどうにか仲良く遊べないかと話すも、話が通じることはなかった。すると並んでいた子供が諦めたのか順番を譲り、その子が遊んでいいとなるも、今度は中々次の子に譲らなくなったのだ。
そういうところも、そっくりだとなり、子供たちの多くは並んでいても順番は回って来ないと月々と諦めていき、別の遊びを始めていた。そうなることが、慣れっこになっていたこともあり、子供たちは新入りのことなどほっといて好き勝手に遊んでいた。
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