9 / 10
9
しおりを挟むとんでもないタイミングで結婚式をしたアルフリーダは、すぐさま離婚することになって笑いものになったかと言うとそうはならなかった。
アルフリーダではなくて、エーヴェルトの方が笑いものになっていた。全ては、エーヴェルトにアルフリーダが騙されたかのようになっていた。
シーグリッドのところにきちんと謝罪したこととシーグリッドがエーヴェルトの元婚約者たちに従姉が何も聞かされずに結婚した話をしたことで、騙したまま結婚したことが瞬く間に広がったのだ。
それこそ、エーヴェルトがとんでもない子息なことは知れ渡っていた。それを知らなかったのはわずかだったし、アルフリーダの婚約破棄に何度もなっている令嬢ではあったが、シーグリッドがアルフリーダの味方となったことで、夫となった王太子も裏で動いたようだ。
「アルフリーダ。大変な目にあったわね」
「……」
「今度、パーティーをやるの。よかったら、来て」
「誘ってくれて、ありがと。でも……」
「何も気にすることないわ」
アルフリーダは、家で大人しくしていようとしても、何かと声をかけられるようになったのは、従妹が王太子と結婚したことが大きかったようだ。
そこで、これまで無視していた令嬢たちも話しかけて来るようになって、前から親身になっていたかのようにされて、それにうざいと思っていても適当にあしらっていたら、今回の騒動を知って興味を持った王子に見初められて、婚約することになるとは思いもしなかった。
「シーグリッドに手紙を書かなきゃ」
それこそ、アルフリーダが素直になってからは何もかもが上手くいったが、それもこれもシーグリッドが王太子や周りに頼んで根回ししてくれたおかげだと思って、感謝し続けることになった。
シーグリッドへの手紙を書いている時、アルフリーダは嬉しそうにしていて、婚約した王子は……。
「手紙の主がライバルだな」
ぼそっとそんなことを言っていたのをアルフリーダが耳にしたことはなかった。
かと言って王子がシーグリッドに何かすることはなかった。そんなことをしても、彼女の夫は黙っていない。そのため、ライバルに一生勝てないなと王子は思って苦笑していた。
その真逆にエーヴェルトの実家は……。
「エーヴェルト! お前は、なんてことをしてくれたんだ!!」
「弟の婚約まで台無しにするとは、さっさと勘当しておけばよかったのよ」
エーヴェルトの弟は、愚痴愚痴と色々言っている両親に冷めた目を向けていた。勘当するタイミングなんて、両手に足りないほどあったのだ。
弟は、こんなことになったのもあって婚約者やその家族に迷惑がかかりそうだから婚約を破棄することにした。
そんなことを言いながらも、エーヴェルトのことをあれこれ心配するのをやめない両親に次男が愛想を尽かす方が早かった。
あの家で一番まともな人物が、跡継ぎをやめてしまい、さっさと婿入り先を見つけたことで、エーヴェルトを跡継ぎに戻すことにした両親も、両親だった。
まぁ、その後のことなんて、わかりきっている。エーヴェルトとその両親は散々な人生を歩むことになり、その家と縁を切った弟の方は、兄たちに妬まれるような人生を送った。
432
お気に入りに追加
693
あなたにおすすめの小説
【完結/短編】いつか分かってもらえる、などと、思わないでくださいね?
雲井咲穂(くもいさほ)
恋愛
宮廷の夜会で婚約者候補から外されたアルフェニア。不勉強で怠惰な第三王子のジークフリードの冷たい言葉にも彼女は微動だにせず、冷静に反論を展開する。
「華がない」と婚約破棄された私が、王家主催の舞踏会で人気です。
百谷シカ
恋愛
「君には『華』というものがない。そんな妻は必要ない」
いるんだかいないんだかわからない、存在感のない私。
ニネヴィー伯爵令嬢ローズマリー・ボイスは婚約を破棄された。
「無難な妻を選んだつもりが、こうも無能な娘を生むとは」
父も私を見放し、母は意気消沈。
唯一の望みは、年末に控えた王家主催の舞踏会。
第1王子フランシス殿下と第2王子ピーター殿下の花嫁選びが行われる。
高望みはしない。
でも多くの貴族が集う舞踏会にはチャンスがある……はず。
「これで結果を出せなければお前を修道院に入れて離婚する」
父は無慈悲で母は絶望。
そんな私の推薦人となったのは、ゼント伯爵ジョシュア・ロス卿だった。
「ローズマリー、君は可愛い。君は君であれば完璧なんだ」
メルー侯爵令息でもありピーター殿下の親友でもあるゼント伯爵。
彼は私に勇気をくれた。希望をくれた。
初めて私自身を見て、褒めてくれる人だった。
3ヶ月の準備期間を経て迎える王家主催の舞踏会。
華がないという理由で婚約破棄された私は、私のままだった。
でも最有力候補と噂されたレーテルカルノ伯爵令嬢と共に注目の的。
そして親友が推薦した花嫁候補にピーター殿下はとても好意的だった。
でも、私の心は……
===================
(他「エブリスタ」様に投稿)
【完結】不貞された私を責めるこの国はおかしい
春風由実
恋愛
婚約者が不貞をしたあげく、婚約破棄だと言ってきた。
そんな私がどうして議会に呼び出され糾弾される側なのでしょうか?
婚約者が不貞をしたのは私のせいで、
婚約破棄を命じられたのも私のせいですって?
うふふ。面白いことを仰いますわね。
※最終話まで毎日一話更新予定です。→3/27完結しました。
※カクヨムにも投稿しています。
完結 この手からこぼれ落ちるもの
ポチ
恋愛
やっと、本当のことが言えるよ。。。
長かった。。
君は、この家の第一夫人として
最高の女性だよ
全て君に任せるよ
僕は、ベリンダの事で忙しいからね?
全て君の思う通りやってくれれば良いからね?頼んだよ
僕が君に触れる事は無いけれど
この家の跡継ぎは、心配要らないよ?
君の父上の姪であるベリンダが
産んでくれるから
心配しないでね
そう、優しく微笑んだオリバー様
今まで優しかったのは?
私、女王にならなくてもいいの?
gacchi
恋愛
他国との戦争が続く中、女王になるために頑張っていたシルヴィア。16歳になる直前に父親である国王に告げられます。「お前の結婚相手が決まったよ。」「王配を決めたのですか?」「お前は女王にならないよ。」え?じゃあ、停戦のための政略結婚?え?どうしてあなたが結婚相手なの?5/9完結しました。ありがとうございました。
あなたには、この程度のこと、だったのかもしれませんが。
ふまさ
恋愛
楽しみにしていた、パーティー。けれどその場は、信じられないほどに凍り付いていた。
でも。
愉快そうに声を上げて笑う者が、一人、いた。
王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました
さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。
王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ
頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。
ゆるい設定です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる