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とんでもないタイミングで結婚式をしたアルフリーダは、すぐさま離婚することになって笑いものになったかと言うとそうはならなかった。

アルフリーダではなくて、エーヴェルトの方が笑いものになっていた。全ては、エーヴェルトにアルフリーダが騙されたかのようになっていた。

シーグリッドのところにきちんと謝罪したこととシーグリッドがエーヴェルトの元婚約者たちに従姉が何も聞かされずに結婚した話をしたことで、騙したまま結婚したことが瞬く間に広がったのだ。

それこそ、エーヴェルトがとんでもない子息なことは知れ渡っていた。それを知らなかったのはわずかだったし、アルフリーダの婚約破棄に何度もなっている令嬢ではあったが、シーグリッドがアルフリーダの味方となったことで、夫となった王太子も裏で動いたようだ。


「アルフリーダ。大変な目にあったわね」
「……」
「今度、パーティーをやるの。よかったら、来て」
「誘ってくれて、ありがと。でも……」
「何も気にすることないわ」


アルフリーダは、家で大人しくしていようとしても、何かと声をかけられるようになったのは、従妹が王太子と結婚したことが大きかったようだ。

そこで、これまで無視していた令嬢たちも話しかけて来るようになって、前から親身になっていたかのようにされて、それにうざいと思っていても適当にあしらっていたら、今回の騒動を知って興味を持った王子に見初められて、婚約することになるとは思いもしなかった。


「シーグリッドに手紙を書かなきゃ」


それこそ、アルフリーダが素直になってからは何もかもが上手くいったが、それもこれもシーグリッドが王太子や周りに頼んで根回ししてくれたおかげだと思って、感謝し続けることになった。

シーグリッドへの手紙を書いている時、アルフリーダは嬉しそうにしていて、婚約した王子は……。


「手紙の主がライバルだな」


ぼそっとそんなことを言っていたのをアルフリーダが耳にしたことはなかった。

かと言って王子がシーグリッドに何かすることはなかった。そんなことをしても、彼女の夫は黙っていない。そのため、ライバルに一生勝てないなと王子は思って苦笑していた。







その真逆にエーヴェルトの実家は……。


「エーヴェルト! お前は、なんてことをしてくれたんだ!!」
「弟の婚約まで台無しにするとは、さっさと勘当しておけばよかったのよ」


エーヴェルトの弟は、愚痴愚痴と色々言っている両親に冷めた目を向けていた。勘当するタイミングなんて、両手に足りないほどあったのだ。

弟は、こんなことになったのもあって婚約者やその家族に迷惑がかかりそうだから婚約を破棄することにした。

そんなことを言いながらも、エーヴェルトのことをあれこれ心配するのをやめない両親に次男が愛想を尽かす方が早かった。

あの家で一番まともな人物が、跡継ぎをやめてしまい、さっさと婿入り先を見つけたことで、エーヴェルトを跡継ぎに戻すことにした両親も、両親だった。

まぁ、その後のことなんて、わかりきっている。エーヴェルトとその両親は散々な人生を歩むことになり、その家と縁を切った弟の方は、兄たちに妬まれるような人生を送った。


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