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しおりを挟むそんなことがあってから数日して、それが届いた。
「シーグリッドから?」
アルフリーダは、従妹からの手紙に眉をこれでもかと顰めた。結婚式の当日に届いたそれに名前を見ただけでイラッとした。どうせ、同じ日に結婚式をセッティングしたことへの小言だろうとアルフリーダは、それを読むどころか。手にすることもしなかった。したくなかった。
誰から届いたものかを確認できるように置かれたそれにも、イラッとした。これ見よがしに置かれているのだ。両親に次からはきちんと中身を確認するように言われて、そうすると答えていたが、それをすっかり忘れてアルフリーダは、こんなことを愚痴っていた。
「ったく、結婚式の日に届くように送るなんて嫌なことするわ。同じ日にしたのを根に持っているのね。本当に嫌な従妹だわ」
ぶつくさと嫌味を言いながら、アルフリーダはそれを綺麗に見なかったことにして早めに式場に向かった。結局、参加してくれる人はアルフリーダが思っていた以上に全然来ないことはわかりきっていた。もう、アルフリーダは招待状に一喜一憂するのもしなくなるほどわかりやすかった。
それでも、アルフリーダの両親は渋々でも結婚式に出てくれた。あとは、式場の人が見栄えを考えてエキストラを入れてくれたから、そこそこ見れるまでにはなっていた。
もっともエキストラの人たちは、ただでご飯が食べられると知って集まったに過ぎない。それでも、アルフリーダは結婚式ができたことを喜んでいた。
式を終えたアルフリーダは、シーグリッドが寄越した手紙のことなど、綺麗さっぱり忘れて、夫となったエーヴェルトとハネムーンに出かけた。
その間にアルフリーダの両親は、シーグリッドのところに向かって謝罪に奔走していたようだが、そんなことなど知りもせずに楽しんでいた。
「それで、私はいつ、そっちに行けばいいの?」
「そっち……? 何のことだ?」
「とぼけないでよ。エーヴェルト様の家に行く日取りよ」
「? なぜ、私の実家に行くんだ?」
「なぜって、私たち結婚したのよ?」
ハネムーンに行っていたアルフリーダは、中々エーヴェルトが今後の話をしないため、自分からその話をしたのだが、どうにも会話が成り立たなかった。
それにアルフリーダは眉を顰めていたが、どうにも噛み合わない会話にエーヴェルトの方も首を傾げた。
「ちょっと待ってくれ。私は、跡継ぎから外されている。婿入りをさせてくれるのだろ?」
「は? 婿入り? 何言っているのよ。あの家は、親戚の息子を養子にして継がせることは、ずっと前から決まっていることよ」
「決まっているって、何だ? わざわざ、養子を取ることないだろ」
エーヴェルトは、跡継ぎの娘に婿入りできると思っていたのにそうはならないと言われて、イラッとしていた。それまでのエーヴェルトと違って、アルフリーダにこんなことを言った。
「なんだ。お前も、使えない女だな」
「はぁ?!」
「だって、そうだろ? 器量もいまいち、頭もいまいち。シーグリッドのことを何かとライバル視しているようだが、あっちからすれば、お前くらいなのを眼中に入れなきゃならないなんて面倒くさいだけだろ」
「な、何ですって!?」
そう、シーグリッドは思い通りにならないとわかった時にこうなることを知っていた。そのため、アルフリーダに結婚して大丈夫なのかと手紙に書いて送っていたのだが、それこそ最後のチャンスのように思うことなく、シーグリッドからの手紙にうざいと思ってが未だに読んでいないままとなっていることで、アルフリーダはやっと夫となったエーヴェルトの本性を知ることになった。
彼のこの性格のせいで、婚約が破棄にどれだけなってきたことか。数年前にシーグリッドと婚約破棄となってから、よくなるどころか。悪くなっていく一方となっているのも、アルフリーダは知らなかった。
そもそも、破棄となった原因もやたらとよく食べるとか。そんなことだと勝手に思っていた。それもあるのだが。
「まぁ、結婚してしまったんだ。そっちの姓にして、婿入りすることになるように婚姻届けを出してしまったから戻ったら、君の両親と話し合わないと駄目だろうな」
「そんな」
アルフリーダは、何を勝手なことをしているとばかりにエーヴェルトを見た。
「なんだ? それが嫌なら離婚するしかなくなるが、そっちが離婚してほしいのなら、それ相応の慰謝料を出してもらわないと割にあわなくなるぞ? 君のせいで、私が離婚になるんだからな」
「な、何で私のせいになるのよ!?」
エーヴェルトはさも当たり前のようにアルフリーダに言い、結婚式をやらせようとしていた本当の意味がようやくわかった気がした。それこそ、あとの祭りでしかなかったが。
結婚式を取りやめて、婚約を破棄した方がよかったと思っても、もう結婚してしまった後のため、何も言えなくなって、アルフリーダはグッと黙った。
そんな時にハネムーンから戻って来て両親にエーヴェルトのことを話さなければと思っていたところにシーグリッドが寄越していた手紙を見つけた。
ふと、何が書かれているのかとアルフリーダは初めてシーグリッドからもらった手紙に興味をもった。
そして、中を読んでみると……。
「っ、シーグリッドは、私を心配してくれていたんだわ。それなのに私ったら、ろくなことが書かれていないと思って読まずにいたから」
色々とやって来たのにシーグリッドが、自分の心配を純粋にしてくれていたことにアルフリーダは涙せずにはいられなかった。
「シーグリッド」
従妹の優しさが身にしみてならなかった。
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