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第2章
∞一5
しおりを挟むフェリシアが必死になって、デュドネに集まってしまっている呪っていた負の感情をなくそうとして、あの国をあの国にいる人たちを救おうとしていたが、それももう限界となっていた。
どんなに頑張っても、救おうとすればするほど、それを繰り返すうちに酷くなっていくのだ。
そして、それで上手くいかない不平不満を全てフェリシアのせいだとして、罵詈雑言を言葉にし続けるのだ。
どんなに救いたくとも、そんなことを日に何度も思う人たちを救うことなど、フェリシアにもできなかった。
更には、アルセーヌの言葉に涙して、とっくに限界を超えていて、もう無理だと思っていたフェリシアは、この世界からいなくなることにした。
それが、本物ではないと思われているフェリシアにできる唯一のことにもなっていた。本物のはずのフェリシアを眠り続けていて、何もしていない無能者のように言い、更にはメーデイアのところに行った者を戻れないようにしている性悪女のように思っていて、フェリシアに助けてもらう気などないのだ。メーデイアが、どうにかしてくれると思っていて、縋るのはメーデイアばかりだった。
そして、メーデイアの言葉に反応するようにフェリシアとアルセーヌは、この世界から消えることにした。それが、みんなの望みでもあるのだ。望まれるままに消えただけに過ぎなかった。
それによって、みんなが、担ぎ上げた聖女のメーデイアがやり直すことになった世界で、誰もが認める聖女として召喚されたとしてもてはやされることになった。
それは、フェリシアがいた世界ではなくなっただけではない。
フェリシアの側に常にいたアルセーヌもいない世界となっていた。
「メーデイア! 君は聖女なんだろ?! この世界を救ってくれ!」
王太子であり、婚約者のシプリアンに縋りつかれ、色んな人たちにも縋り付かれることになったメーデイアは、必死になって逃げた。
「そんなこと知らないわよ!」
「助けてくれ!」
「っ、」
逃げても逃げても、メーデイアは聖女として世界の人々に期待され続け、違うと言えば言うほど、やり直すことになるたび、少しずつ過去に遡り続けて、気づけばアルセーヌの前世の聖女がこの世界に来て救ったはずの過去まで遡っていた。
「どうなっているのよ!?」
やり直すたび、メーデイアは記憶を失くすことはなく、全てを覚えていた。婚約者だったはずのシプリアンが存在しなくなり、召喚された聖女として世界で認められた存在になっていたことに愕然とした。
「あの女がいなくなっていただけでなくて、少しずつ遡って召喚したはずの聖女に私がなるなんて、どうなっているのよ!?」
追放した女の力なんて大したものではないと嘲笑っていたのにメーデイアは、抵抗すればするほど、周りに縋られ期待されるままに聖女となっていて、逃げるなんてことができなくなっていた。
「メーデイア。こんなところにいたのか。元いた世界に帰りたいなら、世界を救え」
「はぁ?! 救ったところで、元いた世界になんて帰せないくせに!」
「そんなことはわからないだろ。世界を救ってくれたら、その方法を探すと言っているんだ」
メーデイアは、自分が召喚されて来たのではないと言ったが、誰も信じはしなかった。
そうして、メーデイアに縋りたい先にあったのは、是が非でも自分たちが召喚した聖女に助けてもらおうとしていた。
「だから、私は聖女じゃないんだってば!!」
やり直しを続けながら、メーデイアはうんざりしていた。
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