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第2章
∞一4
しおりを挟むそのせいで、デュドネから出れなくなってもフェリシアのせいだとメーデイアに言われるまま、フェリシアに対しての罵詈雑言ばかりがデュドネでは飛び交うことが止まらなくなっていた。
メーデイアは、好き勝手なことしかしていないのに。デュドネにいる者たちに力ある聖女だと周りに思われて、彼女に媚びへつらうために会いに来たのに貢ぎ物を持ってやって来たまま、戻れない人たちに白けた目を向けていた。
それだけではない。婚約者の王太子のシプリアンも、メーデイアにとって不満の対象になっていた。王太子というのに大したものを婚約者のメーデイアに与えられているのだ。それにイライラし始めていた。それでも、十分に贅沢三昧な日々を過ごしているのだが、本人はまだまだ不満なようだ。
デュドネに来れた者が戻れなくなったのと同じように元々、デュドネに住んでいる者も他所の国に行くことができなくなっていて、物資が外から何も入ってこなくなっていた。
そのせいで、フェリシアを追い出すまで散財していたメーデイアは、フェリシアがいなくなってから好きなものを買ってもらえなくなっていることに不満が蓄積され始めていたようだ。
それでも、その辺の貴族令嬢よりも、高価な物に囲まれていたが、目が肥えすぎたようで、それらもメーデイアには大した物に見えなくなっていた。
「全く、あの女を追い出してから、好きなものを手にできなくなってるのよね。せっかく、王太子の婚約者になれたのに婚約する前の方が贅沢できていたなんて皮肉もいいところだわ。普通は、婚約者になってからの方が、もっと良い物に囲まれているはずなのに」
それもこれも、フェリシアが未だに抵抗しているせいだと思っていた。
デュドネから、他国に行けないなんてことになっているのだ。そんなことできるのは、フェリシアしかいないと思っていた。
確かに実際にフェリシアがしているが、それも世界の全てがどす黒い感情に支配されて終わらないようにデュドネで食い止めようとしているからこそだった。
でも、そんなこと何も知らないメーデイアと他の者たちも、出れなくなった原因のフェリシアを日に何度も罵詈雑言を浴びせかけていた。
メーデイアも、何かあれば、すぐにフェリシアのせいにしていた。
「あの女のせいなのは間違いないわ。さっさといなくなればいいのに」
フェリシアの死をメーデイアは願わずにはいられなかった。彼女さえいなくなれば、好き勝手にできる。贅沢ができる。そう思っていた。
メーデイアには、それしかなかった。ただ、聖女となって贅沢三昧な日々を送れれば、それで他はどうでもよかった。
「さっさと消えてなくなれば、私がこの世界をもっと好き勝手にできるのよ。みんなが、私を本物の聖女だと思っているんだもの。偽者の聖女なんて、必要ないのよ」
まるで、それが聞こえたかのようにメーデイアは、何度目になるかわからないどす黒いものに飲み込まれて終わった。
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