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オーギュストが、苦しそうに笑っていたところに公爵が戻って来たと知らせが来たので移動した。

だが、オーギュストは笑いのツボから抜け出せずにいた。


「何があった?」
「笑いのツボにハマったようです」
「……」


ユルシュルが、そう言うと養父となった公爵は、珍しそうな顔をして息子を見た。

それは、公爵夫人も同じだったが、ユルシュルがきちんと挨拶をして、王女のことを聞くとオーギュストを怪訝な顔をして見てから、話してくれた。


「……では、王太子と婚約なさるんですね?」
「そうなる」


今回のことで、王女は自分の首を絞め上げてしまった。そんなことをしたと知っても、王太子は婚約したいと譲らなかったようだ。

侯爵家は、今回のことで危うく王太子の逆鱗に触れそうになったが、そうはならなかったことにホッとしているようだ。


「それで、オーギュストがあぁなったのは、何だったんだ?」
「私も、それが気になるわ」


ユルシュルは、その話を養父母にした。更にデボラが描いたデザインも見せた。


「これを贈ったとは、聞いていないな」
「流石にぴったりで、こんなに素敵なデザインのものを頼めはしないはずよ」
「?」
「あー、ユルシュル。あちらの姪は、センスがないんだ」
「っ、」


オーギュストは、公爵の言葉に吹き出していた。どうやら、シャルルの女顔だけでなくて、センスの良いうんねんの辺りで選べはしないと思ったようだ。いや、両方かも知れない。


「あなたの側付きのメイドに調べさせなかったの?」
「追えなかったそうです」
「あら、そうなの?」


デボラは、何とも言えない顔をした。養母は、実父よりも見る目がある。メイドのことで、いいのを捕まえたと前に言われたことがある。

今回は、連れて来たことを知って歓迎してくれていた。


「追えないなら、益々、あの子のしたことじゃないな」
「……まぁ、いいじゃない。もう、あの家の尻拭いをすることもないのだもの」


養父は、怪訝な顔をしていたが、養母はそんなことを言った。どうやら、こんなことがこれからも続くことになりかねないから、縁を切ることにしたようだ。その辺、抜かりがなさすぎる。

ユルシュルは、ドレスの送り主やら、ブリュエットの雇い主やらがちょっとだけ気になったが、もう関係ないと思って忘れることにした。

叔母が、そう言うのを聞いたことが大きかった。

大体、女顔のシャルルに本気だとしても、冗談だとしても、デザインからオーダーメイドのものをわざわざ贈って来るような相手だ。お金とその辺の才能があるのはわかる。

でも、シャルルに送りつけて何をしたかったのかとブリュエットが手紙のことで動いていたのを見て、雇い主が一緒だろうとも、別々だろうとも、ユルシュルはそれ以上の興味を持つ相手には思えなかったこともあり、丁度いいと思って侯爵家でのことは終わったことにした。

そもそも、ユルシュルがいる間は、どうにかすると言ったが、あの家を出たのだから、どうにかする必要はないのだから、終わらせてもいいことでしかなかった。


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