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第3章
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しおりを挟む王太子が、ついに結婚するとなり、街は更にお祭り騒ぎになっていた。
それこそ、ウィスタリアが王太子と婚約するはずと思っていた時よりも、若干盛り上がりに欠けていたようだが、リーリエはウィスタリアだった時に街に出かけていなかったから、その違いを知ることはなかった。
(王太子が結婚しないわけないものね。でも、半年なんて早すぎるわ。王太子妃の教育は、いくら頑張ってもそんな短期間で終えられるはずがないもの。……勉強三昧でも間に合わないはず。結婚相手が、気の毒に思えるのは私だけかな?)
新しい婚約者は、早く結婚するように急かされて大変だったのはすぐに想像がつく。
王太子が結婚するまでの間にリーリエは、プリムローズが姉を殺したことを暴露したらしいことは耳にした。
しかも、ソレルと婚約するのは自分だと思っていたのにできずに頭にきて、必要もないのに殺して損したようなことを言ったようだとも聞いて、何とも言えない顔をしてしまった。
(あの子らしいわね)
それが事実であろうとなかろうとも、リーリエは終わったことだと思っていて、苦笑するしかなかった。
その後、姉の突然の死で頭をおかしくしたとばかりに療養させようとしたが、上手くいかずに迷惑かけられたくないとばかりに勘当されることになったようだ。
その辺は、真相を知った両親がキレたのではないかとリーリエは思っていた。リーリエとなった今は、そんな風に思っていられるが、あの時生き残っていたら、殺意くらい芽生えたはずだ。
(……怒ることが無駄だと思っていたからわからないわね。流石に殺されそうになったと言ったら、プリムローズをどこかにやってはくれただろうけど)
そんな風に思っていた。
その後、プリムローズは母方の祖父母が孫がいわれもない嘘のせいで、可哀想なことになっているとばかりに養子にしたらしい。
それも、リーリエとなっても簡単に想像がついた。あの祖父母なら、何をしていても、そんなわけがないと言う人たちだ。
(実際にしているとどうして思わなかいんだか。お祖母様にそっくりなんだから、わかりそうなのに)
リーリエは、そんなことを思ってしまった。ウィスタリアの時の記憶が色褪せないまま、まぁあるリーリエは何とも言えない顔をしていた。
文字通りあの祖父母はプリムローズを目の中に入れても痛くないと言うような人たちだと思っていた。
それこそ、ある程度の距離から、あーでもないこーでもないと言うのは簡単だ。
でも、養子にしたら、大変なんて言葉ではおさまりきらないほど、プリムローズは迷惑しかかけはしない。誰の養子になろうとも、あの調子のままでは迷惑しかかけていないはずだ。
(それこそ、そういう風にしたのは、祖父母の影響をもろに受けたからだもの。養子にして、身に沁みたでしょうね。自分たちがしたことで、プリムローズがあぁなったのだもの。……でも、それだけじゃない。どんなに無駄だと思っても、妹だった時にもっと姉としてしっかり向き合えばよかったのよね)
常識くらいはわかる程度にもっと口煩くすればよかったと後悔していた。
別の世界で、そっくりな見た目で苦労をした女性が素晴らしい人になっていたのを見たせいで、なおさらそう思って仕方がなかった。
(プリムローズが苦労しても、あんなにいい子になれるかは微妙だけど。昔は、素直でいい子だったのだもの。元はいい子なのよ。……あの頃が懐かしい)
ずっと、あの家にウィスタリアがいたら、今よりはまともな令嬢になっていたはずだ。少なくとも、姉を殺して幸せになろうとしたりはしなかったはずだし、罪悪感くらい持てたはずだ。
そんな風な令嬢になるように仕向けた祖父母にウィスタリアが会わせようとしなかったら、そうなっていたはずだ。
そう思うとプリムローズも可哀想な令嬢と言えるのではなかろうか。
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