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第2章
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しおりを挟む「第二皇子は、まだですか?」
神官長は、皇子たちが揃う前に第一皇子がジュニパーを選んだことに眉を顰めていたが、とやかく言わずにいた。
言えなかっただけのようだ。言ったところで、そもそも聞かないのかも知れない。
「それが、具合がよろしくないようでして」
「遅くなりました」
そこにやって来たのは、仮面を付けた第一皇子と同じ背恰好をした青年だった。仮面をつけているせいで、声がくぐもって聞こえた。
「私の天姫。申し訳ありません。遅参致しました」
まるで、早かろうと遅かろうとも、ウィスタリアのことを天姫だと思っているかのように第二皇子はウィスタリアに跪いて詫びたのだ。
それにウィスタリアは、かなり驚いてしまった。周りは、もっとざわついていたが、気になったのは目の前の皇子のことだ。
「私は、全く気にしてはおりません。それより、具合は大丈夫ですか?」
「こんな大事な場に遅れたことを怒るでもなく、私の身を案じてくださるのですね」
「あなただから、案じているわけではありません。目の前に具合が良くない方がいれば、たとえ親の仇でも、私は心配はします」
(助けるかは別として)
ウィスタリアは、思わず本音で途中まで話してしまっていた。
「……親の仇を心配したことがおありなのですか?」
「ただのたとえです」
そう言いながら、プリムローズが具合悪いとなれば、殺されることになった今でも変な話だが、心配はしてしまう。
それとあんなことをされても、それでも妹だと思ってしまうのだ。
(最後まで、わかりあえなかったけど。……人様に迷惑かけまくっていそうね。祖父母にかけているだけならいいけれど、全く関係ない人に迷惑かけているかと思うとそこだけが気がかりだわ。本来は、とても良い子なのに)
そんなことを思って、懐かしくなってしまった。
そんなウィスタリアを第二皇子のレンが、じっと見ていることに気づいていなかった。
第二皇子は、病弱で病気のせいで見るに耐えない顔をしていると噂されているのを聞いたのは、皇子たちと対面することになる少し前のことだった。
病弱だと聞いていたのもあるし、具合が悪いからと言っていたのを聞いていたのもあったが、なぜかウィスタリアはレンが具合が悪いことが手に取るようにわかった。
跪いているのを立たせたウィスタリアは、よろめくレンの身体を躊躇いなく支えた。それこそ、触るだけで伝染るかのようにされているのも耳にしてきたが、ウィスタリアは全く気にもしなかった。
レンは慣れていないのか身体が強張ったが、ウィスタリアはにっこりと微笑んだ。
「支えます。寄りかかっていてください」
「ですが」
「神官長。皇子殿下たちが、それぞれ天姫を選ぶと聞いていましたが、他にもあるのですか?」
「いえ、天姫様がそれで問題なければ、今日のところは終わりです」
「でしたら、第一皇子様、ジュニパー様。お先に失礼致します。レン様、ここから、私の与えられている部屋と私室ではどちらが近いのですか?」
「……なぜ、そんなことをお聞きになるのでしょう?」
「一刻も早く休んでほしいからです。それとすぐに侍医を呼んでもらわなくては」
ウィスタリアは、どうにかしてウィスタリアから身体を離そうとするレンの腕を肩に回して、腰を掴まえた。逃さないとばかりにガッチリと捕まえてやった。
「誰も呼ぶなと言うなら、私がつきっきりで看病します。それなら、私の部屋にまいりましょう。その方が勝手がわかりますから」
逃さないと言わんばかりにウィスタリアは、抵抗するレンを移動させた。
そんなウィスタリアをぽかーんとして見ているものばかりだったことにウィスタリアは気づいていなかった。
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