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第2章
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しおりを挟む見習いは、ほら見たことか。元気じゃないかと言わんばかりにしたが、ウィスタリアは笑顔のまままくし立ててやった。
「ウィスタリア様。お部屋にお戻りください。なぜ、お止めしなかった?」
「……ストレスは発散させるべきだと思いまして」
「まぁ、確かにそうだが」
「え、あ、その……」
「あなたのような方がいると思うと神官長に一刻も早く会って話したいと言う気にもなれないわ。だって、自分の使いが、神官長は会いたいと言っているはずなのにボロクソに言っているのだもの。使いは、代弁者でしょ? 神官長の意向もわからぬ者を寄越すわけがない。そう思うのは、おかしいこと? 神官長は、そんなことは思っていない。言っていないと言うなら、あなたは使いとしての役割を担うことすら値しないわ」
見習いは、それにカチンときたのか。暴言をはいた。そんなことをしていたら、誰かが神官長を呼びに行ったようで、使いになった者がとんでもないことをウィスタリアに言っているのを聞いて、激怒した。
「お前は、何をしているんだ!!」
「し、神官長様!?」
ウィスタリアのことを見習いは、この女と言い、それにも神官長は怒っていた。
(馬鹿ね。こういうのは、一番聞かれちゃまずい人の気配を察するものよ。まぁ、手っ取り早く、聞かせようとしたのは、私だけど)
その後、その見習いを見ることはなかった。神官長は、神官に頼んでいたが、その神官が見習いに頼んでいることまでは知らなかったようだ。
神官長に頼まれた神官も、ウィスタリアが彼を見かけることはなかった。そもそも、神官の方なので声のみで、顔すら見ていないが。
色々あり過ぎたせいか。神官長は、忙しいだろうに自分が動くのが一番だと思ったようだ。
あれから、ウィスタリアと対面できると知らされてから、神官長が自ら時間を作って、ご機嫌伺いに来るようになった。
(神官長自ら教えてくれるなんて思わなかったわ)
ウィスタリアは、そこで神官長が教えてくれたこととマリカが話してくれたことを照らし合わせていた。
忘れてくれと言われるのも無理はないとは思ったが、ウィスタリアは……。
(とりあえず、話してくれているのを聞こうとしたのが間違えていたみたいになっているわね。でも、偏見まみれだとしたら、女官の教育がそもそも行き届いていないってことになる。そんな人しか居ないのか。舞い上がりすぎただけなのか)
ウィスタリアは目覚めてから身の回りの世話をしてくれる女官たちを何気なく観察していた。
神官長がこの世界のことや天姫について教えてくれる時間を作ってくれている割に、ウィスタリアの側にいる女官は……。
(教育不足が否めない気がするわ。マリカより、マシなレベルというか。女官長の目が光っているから、気が抜けずに仕事をしているけど、一方この部屋を出たり、女官長が見てないと私語を始める。私のことを天姫と呼びながら、馬鹿にしている気すらするのは、どうしてなんだろ? それに神官も、見習いも、同じように見下しているのがいるようだし、どうやっているの?)
待ちわびた天姫だとしたら、ウィスタリアの今の扱われ方は変だと思っていた。随所に天姫とウィスタリアのことを呼ぶ女官たちの態度が、ウィスタリアにそう思わせていた。
それこそ、そう呼んでくれとウィスタリアが頼んだわけではない。むしろ、名前で呼んでほしいと言っても、天姫と呼ぶのをやめないのだ。やめない代わりにそう思ってなんか欠片もない態度をされるのだ。
それがわかってしまうウィスタリアは、首を傾げたくなった。
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