初恋の人への想いが断ち切れず、溺愛していた妹に無邪気な殺意を向けられ、ようやく夢見た幸せに気づきましたが、手遅れだったのでしょうか?

珠宮さくら

文字の大きさ
上 下
66 / 112
第2章

16

しおりを挟む

マリカの話に付き合わされていたことと寝起きで一方的な話を聞かされることになったウィスタリアは、起きた時よりも、段々とぐったりし始めていた。

悲鳴の大きさのせいもあった。あんな大きな悲鳴を間近で聞いたことがなかった。わざとでないにしろ。二度と聞きたくない。

それにしても、女官長の説教はまだ終わらないようだ。段々と説教なのか。よくわからないものになっているようだが、終わりそうもない。

なので、マリカのしていた話をウィスタリアは思い返しながら、こんなことを思った。


(プリムローズの話よりは疲れないけど、危機の時代うんねんより天姫と王族の恋物語みたいになっていくのに疲れてしまったわ。恋愛ものにあんまり興味なかったから、余計疲れてしまった。そんなの実際には叶わないものが殆どだもの)


そんなウィスタリアに何があったかを女官長は、ようやく聞く気になったようだ。


(それを今、聞くのね)


声に出して言ってやりたかったが、そうは言わなかった。


「……そちらの方に既にお聞きになったのでは?」
「え? あ、いえ、一方的になってもよくないので」
「……そうですか。でも、私、長々と話すのは苦手なので、簡潔に済ませますね」


にっこりとそんなことを言いながら要点のみで話した。我ながらわかりやすかったはずだ。そんな嫌味を言いたくもなる。

女官長も、女官も、それにポカーンとしていたが。


(あれ? なんか、まずかったかな?)


どうやら、ここではわかりやすく話すより回りくどく長々と話すのが、教養あると思われているようだ。


「そんなことして、相手に伝わるんですか?」
「それは……」


女官長は、視線を彷徨わせた。女官たちは、伝わるなんて滅多にないようなことをケロッと言い、ウィスタリアの話はわかりやすかったと逆になぜか感心したようだ。


(そんなことで感心されても、全然、嬉しくないんだけど)


ウィスタリアは、白けた目を向けてしまった。


「それで、今度は私が質問しても?」


にっこりと微笑むと部屋の中を見渡した。


「ここはどこで、何がどうなっているのかを流行りに疎いので、わかりやすく簡潔に教えてくださる? 何度も聞くのは心苦しいし、一度で把握したいので」


回りくどくするのが教養あるなんて馬鹿げている。それに頭痛もしている。ウィスタリアは、不機嫌なのを笑顔で隠してはいるが、目は怒っているに違いない。

説教されていた2人は、ウィスタリアのそんな姿を見て説教されていた時よりも、ピシッとしていた。

説教していた女官長ですら、顔色を悪くさせていたが知ったことではない。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

思い出してしまったのです

月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。 妹のルルだけが特別なのはどうして? 婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの? でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。 愛されないのは当然です。 だって私は…。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

双子の妹を選んだ婚約者様、貴方に選ばれなかった事に感謝の言葉を送ります

すもも
恋愛
学園の卒業パーティ 人々の中心にいる婚約者ユーリは私を見つけて微笑んだ。 傍らに、私とよく似た顔、背丈、スタイルをした双子の妹エリスを抱き寄せながら。 「セレナ、お前の婚約者と言う立場は今、この瞬間、終わりを迎える」 私セレナが、ユーリの婚約者として過ごした7年間が否定された瞬間だった。

罠にはめられた公爵令嬢~今度は私が報復する番です

結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
【私と私の家族の命を奪ったのは一体誰?】 私には婚約中の王子がいた。 ある夜のこと、内密で王子から城に呼び出されると、彼は見知らぬ女性と共に私を待ち受けていた。 そして突然告げられた一方的な婚約破棄。しかし二人の婚約は政略的なものであり、とてもでは無いが受け入れられるものではなかった。そこで婚約破棄の件は持ち帰らせてもらうことにしたその帰り道。突然馬車が襲われ、逃げる途中で私は滝に落下してしまう。 次に目覚めた場所は粗末な小屋の中で、私を助けたという青年が側にいた。そして彼の話で私は驚愕の事実を知ることになる。 目覚めた世界は10年後であり、家族は反逆罪で全員処刑されていた。更に驚くべきことに蘇った身体は全く別人の女性であった。 名前も素性も分からないこの身体で、自分と家族の命を奪った相手に必ず報復することに私は決めた――。 ※他サイトでも投稿中

乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?

シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。 ……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。

【完結】裏切ったあなたを許さない

紫崎 藍華
恋愛
ジョナスはスザンナの婚約者だ。 そのジョナスがスザンナの妹のセレナとの婚約を望んでいると親から告げられた。 それは決定事項であるため婚約は解消され、それだけなく二人の邪魔になるからと領地から追放すると告げられた。 そこにセレナの意向が働いていることは間違いなく、スザンナはセレナに人生を翻弄されるのだった。

初恋の兄嫁を優先する私の旦那様へ。惨めな思いをあとどのくらい我慢したらいいですか。

梅雨の人
恋愛
ハーゲンシュタイン公爵の娘ローズは王命で第二王子サミュエルの婚約者となった。 王命でなければ誰もサミュエルの婚約者になろうとする高位貴族の令嬢が現れなかったからだ。 第一王子ウィリアムの婚約者となったブリアナに一目ぼれしてしまったサミュエルは、駄目だと分かっていても次第に互いの距離を近くしていったためだった。 常識のある周囲の冷ややかな視線にも気が付かない愚鈍なサミュエルと義姉ブリアナ。 ローズへの必要最低限の役目はかろうじて行っていたサミュエルだったが、常にその視線の先にはブリアナがいた。 みじめな婚約者時代を経てサミュエルと結婚し、さらに思いがけず王妃になってしまったローズはただひたすらその不遇の境遇を耐えた。 そんな中でもサミュエルが時折見せる優しさに、ローズは胸を高鳴らせてしまうのだった。 しかし、サミュエルとブリアナの愚かな言動がローズを深く傷つけ続け、遂にサミュエルは己の行動を深く後悔することになる―――。

処理中です...