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第2章
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しおりを挟む(とんでもない勘違いをされてるわ。遣わされたなんて、大層な人間じゃない。妹に殺されて、それに全く抵抗せずに気がついたら、ここにいたってだけだもの。……そう、抵抗しなかったのよね)
そんなことを思ったが、ウィスタリアは聞いてもいないのに天姫とやらについて、うっとりとして語る若い女官に頭を抱えたくなった。別にそこまで、天姫とやらのことを聞きたいとは思っていない。それより、他のことを聞きたい。教えてほしいことが、他にもあるというのに語らうつもりも、女性に伝わるわけもなかった。
申し訳ないが、ウィスタリアはこんなことを思った。
(苦手なタイプだわ)
まるで、夢見る乙女のように天姫とやらのことを語りだした。女官は、マリカという名前だった。
自分の名前はサラッと聞いてもいないのに教えてくれたが、ウィスタリアに自己紹介をさせる時間も与えなかった。
喋りだしたら止まらないところがあったようだ。それは、緊張するとそうなるのかと思ったが、彼女の場合は素のようだ。
(これが身内なら、仕方がないと思うけど。身内以外でも、爵位やらで仕方がないと思うことはあったけど。この状況だと、今後のことを考えると付き合うしかないわよね)
立ち位置がわからないのだ。ペラペラと話すマリカを止めるよりも、それも情報だからと聞いておこうとしたが、いつも以上にウィスタリアは面倒くさいと思った。
(あの子に付き合わされるより、あの女にあれやこれやと嫌味言われることより、見ず知らずの相手を初めて面倒くさいと思う日が来るなんて思わなかったわ)
ウィスタリアの周りにはいないタイプだった。時間を長引かせたい時には重宝しそうだが、そんなことになることなど滅多にない。
そうなるとこの手の女性は、嫌われる。
(友達も少なそうね。話だしたら止まらないタイプなら、話させる前に退避しないと面倒だもの。……あ、だから、ここで1人で寝てる私を見てろって仕事を与えられたってことか。……でも、それって目が覚めた後のことを考えてくれてにいわよね)
ウィスタリアは、そんなことを思いながら聞いていた。
ずっと目覚めないウィスタリアにずっと付き添っているはずが、彼女はウィスタリアがずっと眠っていたこともあり、どうせ自分が見てても起きないだろうと別のところに行っていたそうだ。
ツッコみたいが、それはスルーした。どうせ、後で叱られることになるはずだ。
(……そうならなかったら、これからずっと、これに付き合わされるってことよね。……他の人が見張りな時に起きればよかった)
そんなことを思ってしまっても、培って来た経験から嫌な顔一つ見せずにマリカの話を聞いていた。
相づちを打つことも、共感するように合いの手をしてすらいないのに止まらないのは、ある意味凄い。これは、聞いてほしいというより……。
(完全に話したいだけね)
ウィスタリアは、彼女にターゲットというなのに餌食にされただけのようだ。
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