初恋の人への想いが断ち切れず、溺愛していた妹に無邪気な殺意を向けられ、ようやく夢見た幸せに気づきましたが、手遅れだったのでしょうか?

珠宮さくら

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第1章

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そんなことをソレムがしている間にウィスタリアが亡くなってしまい、流石のソレムもしばらく大人しくしていたかのように見えたが、婚約しようと思っていた令嬢がみんな婚約者がいることを挽回しようと思い悩んでいただけに過ぎなかった。

もっとも、みんなの顔と名前を覚えていたかは怪しいところだが。

その話を聞いていたプリムローズは、ソレムに既に手ひどく言われていたのをすっかり忘れていた。


「そんなわけないわ!」
「え?」
「いきなり、どうしたの?」


プリムローズに気を遣って普通に扱っていたのは、ウィスタリアの友達の令嬢たちだった。

突然の奇行に驚く間もなく、プリムローズはどこかに行ってしまった。


「何、あれ?」
「さぁ?」
「以前にも増して、わけがわからないわね。ウィスタリアの代わりにどうにかしようとしても、難しいわ」
「ウィスタリアですら、あの妹には困っていたんだもの。私たちくらいじゃ無理よ」
「それもそうね」


そんな風に思われていたプリムローズは、姉が死んでからやたらと声をかけられることを勘違いしていた。

やっと、姉に遠慮していた面々が自分に話しかけるようになったと思ってすらいた。

その令嬢たちが、ウィスタリアの友達だとまでは全く覚えていなかったことで、そんな風に勘違いしていた。

その上、ソレムの話を聞いて何かの間違いだと思ったのだ。自分より馬鹿な令嬢だと覚えられているはずがないと思って、また都合よく記憶が書き換えられていた。

みんなが言っているのなんてあてにならないとばかり、やたらとソレムの側をうろちょろし始めた。それは、まだ可愛い言い方だ。明らかに異常行動にしか見えなかった。


「何しているのかしらね」
「わからないわ。もうお手上げよ」


令嬢たちは、プリムローズが何をしたいのかが全くわからずに放置することにした。一生懸命に寄り添おうとしたが、ウィスタリアの友達はどうにもプリムローズという令嬢が好きになれなかった。

プリムローズは、そんな風に姉の友達から見放されたことにも、気づくことなくソレムの側にいるようになった。

だが、ソレムはウィスタリアの妹の顔や名前を全く覚えておらず、一度既に会って色々言ったことを彼もまたきれいサッパリわすれていた。

ただウィスタリアの妹が物凄い馬鹿な令嬢と言うことだけはきっちり覚えていた。そこは、忘れていなかった。

そういうところから、お似合いと言えるような2人だが、プリムローズが再び思い知ることになるまで、大した時間はかからなかった。


「お前が、私の婚約者になれるわけないだろ。物凄い馬鹿な令嬢を婚約者にしたら、私は恥をかく。それに何だ。その変な格好と化粧は、ウィスタリアみたいな令嬢の方がまだマシだ。隣になんて並んで立ちたくない。いい笑いものにされるだけだ」
「っ!?」


プリムローズは、ソレムに散々なことを言われることになった。それは誰もが思っていたことだが、それを面と向かって言ったことはなかった。

それは、ウィスタリアが彼女の姉なこともあり、周りが気を遣っていたから暗黙の了解のようにプリムローズにそんなことを言う者がいなかったのだ。

それをソレムが今まで言えなかったことをはっきりと言った瞬間だった。

その時ばかりは、ソレムがとても真面目でまともな子息に見えた。


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