25 / 111
第1章
25
しおりを挟む「プリムローズ。他人に見せられる顔じゃないって何度も言わせないで!」
「はぁ? お母様は、そればっかりね。そんなこと言うのお母様だけよ」
「っ、他所でもしているの!?」
母は、信じられないと怒鳴っていた。
妹のニヤニヤした顔をウィスタリアは改めて見た。
(あの顔を他所で……。あれは、今期を逃すわね。これは、私がいくら頑張っても無駄だった気がする)
何度たしなめてもやめない顔を見て、ウィスタリアはそんなことを思った。でも、それを本人は鏡で見てみたが、問題ないと言うのだ。
(それは、そうでしょうね)
それは当たり前だ。鏡で見るとニヤニヤした顔ではよく見えないはずだ。そのため鏡を見るとそれなりに見られる顔になる。
見られると言っても、それはプリムローズの思う顔だ。一般的からしたらズレているが、そこは仕方がない。今している化粧が、見られるものだと思っているのだから。
(写真でも撮ったら、わかるのでしょうけど。そんなことで、写真を撮らせたら、笑いものになるだけよね。その写真の扱いにも困るし……。祖父母も、あんな格好させて、何で何も言わないのよ)
ウィスタリアは、そんなことを思いつつ、婚約破棄の後で、色んなことが発覚しすぎて疲れというか。頭痛がするというか。
ソレムの相手をするより、妹とは彼女が生まれた時からの付き合いだ。物心つく前から可愛がってきた。それが、数年の間、それまでの僅かな間、妹を両親や祖父母任せにしたら、こんなことになったのだ。
幼い頃に面倒を引き起こすのは、プリムローズではなかった。言葉巧みに祖父母がプリムローズを誘導して、大変なことになっていた。
でも、今はすっかり誘導されて育ったことで、妹自身が手に負えない存在になってしまっているのだ。
ソレムよりはかなりわかりやすい。未だに奇想天外な自分ルールで物事を見るせいで、ウィスタリアですら半分正解することも滅多にない彼よりは。
それでも、ソレムよりも妹の方がまともだ。……身内贔屓かも知れないが、あちらはプリムローズのように身内にいいように甘やかされたわけではない。
そこが、不思議でならなかったが、元婚約者になる子息のことなど、どうでもいい。それよりも、身内のことだ。
(私が卒業するまでに妹をどうにかしなくては。卒業まで、数ヶ月。それまでに次の婚約者が見つからなかったら、妹を連れて潔く修道院にでも入ろう。そこで数年すごしたら、妹の嫁ぎ先が見つかるかも知れない)
ウィスタリアは、自分の嫁ぎ先のことは土返しにしていた。
その前にもっとどうにかしなくてはいけないのは……。
(私が婚約破棄となったのが、首切りでも、見限られたわけでもはないとみんなにわかってもらわなくては。そうでないとあの家に迷惑がかかってしまう。そんなことで、せっかく軌道に乗った事業を台無しになんてさせられない)
でも、このあとでウィスタリアがとんでもない目に合うとは、この時は知りもしなかった。
それが、ソレムからではなくて、身内から無邪気な殺意を向けられるとは流石に思わなかった。
38
お気に入りに追加
206
あなたにおすすめの小説
強い祝福が原因だった
棗
恋愛
大魔法使いと呼ばれる父と前公爵夫人である母の不貞により生まれた令嬢エイレーネー。
父を憎む義父や義父に同調する使用人達から冷遇されながらも、エイレーネーにしか姿が見えないうさぎのイヴのお陰で孤独にはならずに済んでいた。
大魔法使いを王国に留めておきたい王家の思惑により、王弟を父に持つソレイユ公爵家の公子ラウルと婚約関係にある。しかし、彼が愛情に満ち、優しく笑い合うのは義父の娘ガブリエルで。
愛される未来がないのなら、全てを捨てて実父の許へ行くと決意した。
※「殿下が好きなのは私だった」と同じ世界観となりますが此方の話を読まなくても大丈夫です。
※なろうさんにも公開しています。
(完)貴女は私の全てを奪う妹のふりをする他人ですよね?
青空一夏
恋愛
公爵令嬢の私は婚約者の王太子殿下と優しい家族に、気の合う親友に囲まれ充実した生活を送っていた。それは完璧なバランスがとれた幸せな世界。
けれど、それは一人の女のせいで歪んだ世界になっていくのだった。なぜ私がこんな思いをしなければならないの?
中世ヨーロッパ風異世界。魔道具使用により現代文明のような便利さが普通仕様になっている異世界です。
すべてを思い出したのが、王太子と結婚した後でした
珠宮さくら
恋愛
ペチュニアが、乙女ゲームの世界に転生したと気づいた時には、すべてが終わっていた。
色々と始まらなさ過ぎて、同じ名前の令嬢が騒ぐのを見聞きして、ようやく思い出した時には王太子と結婚した後。
バグったせいか、ヒロインがヒロインらしくなかったせいか。ゲーム通りに何一ついかなかったが、ペチュニアは前世では出来なかったことをこの世界で満喫することになる。
※全4話。
婚約破棄ですか? ならば国王に溺愛されている私が断罪致します。
久方
恋愛
「エミア・ローラン! お前との婚約を破棄する!」
煌びやかな舞踏会の真っ最中に突然、婚約破棄を言い渡されたエミア・ローラン。
その理由とやらが、とてつもなくしょうもない。
だったら良いでしょう。
私が綺麗に断罪して魅せますわ!
令嬢エミア・ローランの考えた秘策とは!?
貴方が側妃を望んだのです
cyaru
恋愛
「君はそれでいいのか」王太子ハロルドは言った。
「えぇ。勿論ですわ」婚約者の公爵令嬢フランセアは答えた。
誠の愛に気がついたと言われたフランセアは微笑んで答えた。
※2022年6月12日。一部書き足しました。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
史実などに基づいたものではない事をご理解ください。
※話の都合上、残酷な描写がありますがそれがざまぁなのかは受け取り方は人それぞれです。
表現的にどうかと思う回は冒頭に注意喚起を書き込むようにしますが有無は作者の判断です。
※更新していくうえでタグは幾つか増えます。
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
姉の厄介さは叔母譲りでしたが、嘘のようにあっさりと私の人生からいなくなりました
珠宮さくら
恋愛
イヴォンヌ・ロカンクールは、自分宛てに届いたものを勝手に開けてしまう姉に悩まされていた。
それも、イヴォンヌの婚約者からの贈り物で、それを阻止しようとする使用人たちが悪戦苦闘しているのを心配して、諦めるしかなくなっていた。
それが日常となってしまい、イヴォンヌの心が疲弊していく一方となっていたところで、そこから目まぐるしく変化していくとは思いもしなかった。
身勝手だったのは、誰なのでしょうか。
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢になるはずの子が、潔く(?)身を引いたらこうなりました。なんで?
聖女様が現れた。聖女の力は確かにあるのになかなか開花せず封じられたままだけど、予言を的中させみんなの心を掴んだ。ルーチェは、そんな聖女様に心惹かれる婚約者を繋ぎ止める気は起きなかった。
小説家になろう様でも投稿しています。
「聖女に比べてお前には癒しが足りない」と婚約破棄される将来が見えたので、医者になって彼を見返すことにしました。
ぽんぽこ@書籍発売中!!
恋愛
「ジュリア=ミゲット。お前のようなお飾りではなく、俺の病気を癒してくれるマリーこそ、王妃に相応しいのだ!!」
侯爵令嬢だったジュリアはアンドレ王子の婚約者だった。王妃教育はあんまり乗り気ではなかったけれど、それが役目なのだからとそれなりに頑張ってきた。だがそんな彼女はとある夢を見た。三年後の婚姻式で、アンドレ王子に婚約破棄を言い渡される悪夢を。
「……認めませんわ。あんな未来は絶対にお断り致します」
そんな夢を回避するため、ジュリアは行動を開始する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる