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第1章

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ウィスタリアは、婚約者がしでかしたことを挽回するのは、どんなに上手くいっても卒業するギリギリになると思っていたが、マルグリットが以前言っていた通りに助けてくれることになった。

彼女の婚約者の家は、隣国にあり凄いパイプを持っていたことで救われたところが大きかった。

それにマルグリットも、お茶をした時に尽くしに尽くしすぎていると言ったのを後悔していたようで、それをどうにかできるのが自分ではなくて、婚約者になることに歯がゆそうにしていたが、それでもそれが大いに役立ったことを知って共に喜んでくれた。

そうなったのも、落ち込んでいた彼女をウィスタリアが目にしていたのも大きかった。


(あんなに落ち込ませてしまって、申し訳ないわ。マルグリットのせいではないのに)


お茶に誘ったせいだと思って落ち込んでいたのは、マルグリットだけではなかった。あの時、お茶くらいと誘ってくれた令嬢たちは、みんなそこまでだったことを知ることになったのだ。

ウィスタリアは、それもあって、これはチャンスなのだと思うことにした。挽回するどころか。味方というか。同じ夢を見て実現しようとしてくれる人を増やすためのチャンスだ。


(そうよ。そのためにも隣国で、マルグリットの婚約者の方にこの事業のことをわかってもらわなければ)


他の者なら、そんなのをチャンスだと思えないと言いそうだが、ウィスタリアはこれが必要だったと思わせるべく動いた。

ウィスタリアに申し訳なかったと謝らせたくなくて、みんなが思ってくれたからこそ、更に発展することができたと言いたいのもあり、ウィスタリアはこれまで以上に気合をいれて動いた。


「マルグリットが、あなたのことを唯一無二の友達だと言うだけはある。ぜひ、父と会ってくれ。それと私の弟の友人にも会ってくれないか?」
「弟さんのご友人ですか?」


年上の方々に会うように言われることはよくあったが、弟の友人に会ってほしいと言われたことに首を傾げた。


「あぁ。きっと、あなたと話が合う。弟と私は少し年が離れているんだが、その友人はかなり頭がいいんだ。私も、時々どころか。中々ついていけないようなとても聡明で、古代語も堪能なんだ。私と話していても、退屈そうにはしないが、あなたとなら退屈だという顔を隠そうとはしないだろう」
「そんな、私程度では、そんなに聡明な方の相手が務まるとは思えません」


(年の離れた方で、更に古代語が堪能とあらば、婚約者になれなくて、古代語を学ばなくなって数年経つ私では、役不足だわ)


「そんなことはない。マルグリットから聞いた。あなたも、古代語が堪能だと。私は、かじった程度でしかないんだ。だから、私ではどうにも退屈させてしまうことしか言えない。父上も、堪能とまではいかない。本人が、そう言ってはいないんだが、平凡な私たちでは退屈だと思られても仕方がない」
「……」


(なら、益々会いづらいわ)


過度な期待をされていることにウィスタリアは、どうしたものかと思ったが、どうしても頼みたいと言うので困ってしまった。

まずは、マルグリットの婚約者の父親と会い、息子同様に幼い息子の友人に会ってほしいとこれまた頼み込まれてしまったのだ。

あまりにも必死に会ってほしいと言われるので、ウィスタリアはそうすることにした。期待に添える自信など、ウィスタリアに欠片もなかった。

だが、会ってみると色んな話で盛り上がることになったのだ。

ウィスタリアですら、年下だとは思えないほどの博識っぷりで、マルグリットの婚約者とその父親も一緒にいたのだが、ウィスタリアたちの会話に全く入っては来れないまま、その彼が凄い!とウィスタリアの話を聞いて感激して大喜びしたのだ。


「あなたは、凄い人ですね」
「え?」
「あの方が、あんな風にはしゃぐのを初めて見た。年相応な姿など、見せたこともない」
「……」


ウィスタリアは、聡明すぎるため、同い年の子供と同じことではしゃぐことができなかったのだろうとすぐにわかった。


(私は、同じように夢を語らえる方がいたからよかったのよね。……あれ? 今の王太子とそれをしたのだったかしら? 今の王太子ではなくて、他の方だったような……? この方のような方と私は……)


そんなことを思っていると……。


「ウィスタリア嬢。時間は大丈夫ですか?」
「はい。今度は、何のお話しましょうか?」


目の前で、年相応に楽しそうにする少年にウィスタリアは、懐かしいものを感じていた。

でも、それは誰と比べてのことかを考えないようにした。ただ、楽しむ時間は限られている。よそ事など、今は考えずに満喫しようと思うことにした。

聡明な少年が、凄い!と言うことを聞きつけてくる者も多かった。

だからこそ、マルグリットの婚約者の父親もこの事業は上手くいくと思ったようだ。

それでも、検討してみると言い、数日して……。


「ぜひ、スポンサーにならせてほしい」
「っ、あ、ありがとうございます!」


一緒に行ったソレムの父親は感激していた。それだけではない。隣国では、ウィスタリアと少年が楽しげに話すのを聞いているだけでも素晴らしいとなり、事業のことよりも、聡明な2人の古代語の討論を絶賛してくれ、多くの貴族がスポンサーに名乗りを上げてくれるまでになったのだ。

その中の殆どが、マルグリットの弟の友人が絶賛していただけはあるとウィスタリアのことを褒めたのだ。

少年もさることながら、ウィスタリアは彼女が思うほど古代語に関しても、その他に関しても、王太子の婚約者になるためにと必死に勉強したことは無駄にはなっていなかったのだ。


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