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第1章
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しおりを挟む「見事にでしたね」
「そうだな。さて、見終わったことだし、帰るか」
「うん!」
プリムローズは、花火を見たことで満足していた。帰る気でいたのにそこに現れたのだ。
「あら、プリムローズちゃん! ここにいたのね」
「あ、おばあさまだ」
「「っ、」」
母方の祖父母と両親とプリムローズは遭遇して、あからさまな顔をしたのは、プリムローズの両親だった。
「プリムローズ。街に行かないのか?」
「?」
「お父様、もう遅いで私たちは帰ります」
「あら、街を見せずに帰るの? 可哀想じゃない」
「そうだぞ。プリムローズ、何でも好きなもの買ってやるぞ」
「食べ物でも、遊ぶものでもいいわよ。好きなものを買ってあげる」
「でも」
「あら、ウィスタリアは?」
「おうち」
「そうなの、なら、お土産に何か買って帰りましょうよ」
「おみやげ」
「お母様、何も、今日でなくとも……」
「今日しかないものも売っているのよ?」
「そうなの?」
「そうだぞ。今日は、特別だからな」
「……いきたい。おみやげ、かう」
街には行かないと言っているのにプリムローズを言葉巧みに誘導して、プリムローズを連れて行ってしまったのを忌々しそうに見ていた。
「あなた」
「お前に止められないんだ。私にも無理だ」
「そうですけど」
「あれだけ言うんだから、大丈夫だろ。プリムローズも、懐いているんだ。流石に連れて帰るだろ」
「……そうよね」
「やれやれ、せっかくの花火が台無しだ」
「本当ですね。やはり、私たちの結婚式のが一番でしたね」
両親は、厄介な2人にできるなら関わりたくないと思っていた。
プリムローズをあれだけ言って連れて行ったのだから、きちんと面倒見てくれるものと思っていた。
でも、祖父母は、両親よりも酷かった。どちらも保護者として失格だとしても、最悪すぎた。
「あら、プリムローズちゃんは?」
「は? お2人が連れて行ったではありませんか」
「人聞き悪いことを言わないでちょうだい」
無理やり街に連れて行ったのだから、連れて帰って来ると思っていた両親は、祖父母が姿が見えなくなったから、先に帰ったと思っていたと言うのに激怒した。
街に行く気はない両親は、祖父母がプリムローズを連れて行ったのだから、連れて帰って来るものと思っていたが、祖父母は違っていたのだ。
お互いが、プリムローズが迷子になったのは、相手のせいだと喧嘩しているところにウィスタリアは、騒ぎを聞きつけて部屋から出て来て、言い争うだけの大人たちに怒り以上の呆れを感じた。
(なんてことなの。あの子を置いて来るなんて)
すぐにプリムローズを探すために家の使用人たちに手配してもらい、街の自警にも連絡して迷子がいないかを問い合わせるとすぐに見つかった。それをしたのは、ウィスタリアだった。
案の定、プリムローズが街に行って迷子になってしまい、大変なことになったが、その経緯を聞いて探すでもなく責任のすりあいをしている大人たちにウィスタリアは呆れるしかなかった。
(一緒に行けばよかった)
プリムローズが無事見つかったことを喜ぶ大人たちにウィスタリアは、そんなことを思うばかりだった。
よほど、心細い思いをしたのか。プリムローズは、姉にひっついて回って大変だったが、それにこりて、もう祖父母とは何があっても着いて行かないと思っていた。
それに祖父母も、そんなことをしたのだ。大いに反省していると思っていたが、そんなことにはならなかった。
祖父母が頑張ったのは、全く別のことだった。
「全く酷いわよね。あんなに混んでいるならそう言ってくれればいいのに」
「そうだな。迷子になると思っていたから、ウィスタリアは出かけないと言ったんだ」
「……」
「酷い姉がいたものね」
「全くだ。プリムローズは優しいから、お姉さんのお土産を買おうとしただけなのに」
「そうだな。ウィスタリアのために動こうとしたから、こうなったんだ」
プリムローズにあの日のことをどうにかして、祖父母は自分たちのせいではないと印象付けたかったようだ。
この一件で、祖父母と一緒にいたくないと拒否されたのが、よほどこらえたようで両親のせい。ウィスタリアのせいだとプリムローズに会うたび言い、祖父母はプリムローズに珍しいお菓子や隣国で流行りの洋服などを会うたび、あげた。
そのうち、その記憶がプリムローズの中で本当になってしまうだけでなく、祖父母は嫌われたくないとばかりに甘やかし、よく知りもしないのに怒られたと言うプリムローズの言葉だけを切り取って、無闇矢鱈と叱るなと両親やウィスタリアに言うようになってもいった。
そうなる前までとは違い、祖父母が何とかしてくれると思って、わがまま放題になっていき、それが治らないままになってしまうが、両親は早々に付き合いきれないとプリムローズに何か言うのも、祖父母にやめるように言うのも面倒くさくなってしなかった。
ウィスタリアには、そんな余裕はなかった。婚約できなかったことで、色々と言われてしまうことになったのだ。それに応対するのに疲れてしまっていて、妹のことに構えなくなっていた。
どんなに煩わしく思っていても両親にとっては娘だ。祖父母をどうにかしてくれると思っていた。いや、思いたかった。花火のあとで、連れて行かれて、置いて来たのだ。
だが、早々に末娘のことなのに面倒がって放置していたとは思わなかった。妹のことだけでなくて、祖父母の相手すら面倒くさくなって、3人で好き勝手させておけば、面倒を見ることもないことに気づいてしまったようだ。
それにウィスタリアが、花火を見せに連れて行ってと言わなければ、そもそもあんなことにならなかったかのように両親が思っていたことも、ウィスタリアは後から知って言葉を失ったが、それらは後の祭りのような状態になっていた。
(全部、私のせいってことにしたようね。両親も、祖父母も、そっくりね)
そんな両親にあぁ、そう言えばと思ったのは、すぐだった。
(こういう人たちだったわ。祖父母が酷いから忘れていたけど、両親もそうだった。されて嫌なことを自分たちがされなければ、関係ない人たちだった)
母方の祖父母が酷いと両親は愚痴愚痴言っているが、ウィスタリアからしたら酷さの程度が違うが両親も中々だと思うことは度々あった。
でも、そこまでの間にウィスタリアは、王太子と婚約できなかったことで色々起こっていた。ウィスタリアも、自分のことで手一杯だったが、それでも誰かのせいだと思うより自分がやればよかったと思っていた。
自分が姉としてきちんと妹を見ていたら、プリムローズは大人たちの都合で、あんな風にならなかったと後悔している気持ちが消えることはなかった。
されど、ウィスタリアもまだ子供だ。婚約がうまくいかず、図に乗っていたつもりはないが、婚約できなかったことで、婚約できたというのにその令嬢に何かと言われて、日々探しまわってでも絡まれていて、それに物凄く疲れていた。
それすら、両親はフォローの1つしてくれず、身内は好き勝手にしていただけで、婚約できなかったのはウィスタリアなのだから、できなかった者がどうにかすればいいと思っていたことで、婚約できないはずがないと吹聴して回っていたツケをウィスタリアがどうにかしている状況だったが、それは言い訳に過ぎなかった。
プリムローズの頼れる相手は、ウィスタリアしかいなかったのだから。
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