14 / 15
14
しおりを挟む周りの令嬢のみならず、アルカン国の者なら王太子が幽霊を見ようとして、色んなところに出向いているのを知っていた。
そんな変な趣味さえなければ、美青年なのにと誰もが残念がっているような王太子だったが、それがついに本物が見えるようになって、体調不良になっていると噂されるようになった。
それを言葉通りに信じている者は少なかったのだが、この出来事から気が変になったと思われることにもなった。留学して来るのを知って、あれこれ調べていたと思われることにもなったのだ。
暗黙のルールを王太子が無視したと言われるようになったのも、すぐだった。
養子になったとは言え、ヨランダは全く知らないのに会ったことがあるふりをしようとしてまで、前からの知り合いのようになりすましてでも、調べたのを誤魔化そうとしているとなったのだ。
だが、そんなことを噂されてまことしやかに言われているのなんて王太子は気にしていられなかった。
「ヨランダ! 頼む。どうにかしてくれ!!」
「っ、」
王太子は、見たくないものが見えるよう日々に疲れていた。そのため、ヨランダの肩を掴まえて必死に頼み込んでいた。
それに驚かないわけがない。いくら王太子でも、婚約者でもないのだ。突然、触られたら誰でも驚く。怒ってもいいところだが、ヨランダは戸惑う方が強かった。
「えっと、すみません。どう、とは?」
「幽霊だ! 君は見えるんだろ?」
「え? 見えませんけど」
だが、王太子はそんなわけないとヨランダにしつこくしてきたが、その時は令嬢や子息が、何やらやばいとなって引き離してくれた。
ヨランダは具合が悪いギリギリの時以外に幽霊が見えたことがなかった。しかも、それをすぎると綺麗サッパリ忘れるヨランダには身に覚えのないことでしかなかった。
それでも、王太子はしばらくするとヨランダのところにやって来た。身に覚えのないことをあれこれ言われても、ヨランダは困るばかりだった。
「兄上。そのくらいにして、部屋に戻りましょう」
「戻れない。あそこが一番いるんだ」
「あー、なら、他の部屋を用意させますから。ヨランダ嬢、すまない」
「いえ」
第2王子は、気をおかしくした王太子を回収する係をしていた。側近たちは、もう終わったとばかりに彼の側を離れてしまい、王太子の友人たちも気味悪がって話しかけなくなっていた。
そのため、第2王子が動くしかなかった。彼は、兄を見捨てられなかったようだ。
第2王子が迎えに来ると王太子は、仕方なさそうに戻って行った。
他の者では、あんなにすんなりと帰っては行けない。
そんな2人をヨランダは、どうしたものかと見送ったが、迷惑だからもう来ないでほしいと思うことはなかった。
ただ、どうにかしてほしいと来られても何もできないとしか言いようがないことにため息がこぼれた。
97
お気に入りに追加
193
あなたにおすすめの小説
罠にはめられた公爵令嬢~今度は私が報復する番です
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
ファンタジー
【私と私の家族の命を奪ったのは一体誰?】
私には婚約中の王子がいた。
ある夜のこと、内密で王子から城に呼び出されると、彼は見知らぬ女性と共に私を待ち受けていた。
そして突然告げられた一方的な婚約破棄。しかし二人の婚約は政略的なものであり、とてもでは無いが受け入れられるものではなかった。そこで婚約破棄の件は持ち帰らせてもらうことにしたその帰り道。突然馬車が襲われ、逃げる途中で私は滝に落下してしまう。
次に目覚めた場所は粗末な小屋の中で、私を助けたという青年が側にいた。そして彼の話で私は驚愕の事実を知ることになる。
目覚めた世界は10年後であり、家族は反逆罪で全員処刑されていた。更に驚くべきことに蘇った身体は全く別人の女性であった。
名前も素性も分からないこの身体で、自分と家族の命を奪った相手に必ず報復することに私は決めた――。
※他サイトでも投稿中
乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?
シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。
……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。

悪役令嬢が行方不明!?
mimiaizu
恋愛
乙女ゲームの設定では悪役令嬢だった公爵令嬢サエナリア・ヴァン・ソノーザ。そんな彼女が行方不明になるというゲームになかった事件(イベント)が起こる。彼女を見つけ出そうと捜索が始まる。そして、次々と明かされることになる真実に、妹が両親が、婚約者の王太子が、ヒロインの男爵令嬢が、皆が驚愕することになる。全てのカギを握るのは、一体誰なのだろう。
※初めての悪役令嬢物です。

身勝手の王子様の新しい婚約者が私ですって? 普通に嫌なので拒否します
こまの ととと
恋愛
長くて短い学園生活も終わり。卒業記念パーティーで思い出に花を咲かせる卒業生達。
そんな心温まる場面を破壊したのは、王子のある言葉からだった。
「この日をもってお前との婚約は破棄にする。そして!」
何故か肩を抱かれる私。私が新しい婚約者!?
冗談じゃない、もう相手が居るっての。
身勝手な言い分ばかり並べる王子は、果たしてどんな報いを受けるのか?
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m
悪役令嬢を陥れようとして失敗したヒロインのその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
女伯グリゼルダはもう不惑の歳だが、過去に起こしたスキャンダルが原因で異性から敬遠され未だに独身だった。
二十二年前、グリゼルダは恋仲になった王太子と結託して彼の婚約者である公爵令嬢を陥れようとした。
けれど、返り討ちに遭ってしまい、結局恋人である王太子とも破局してしまったのだ。
ある時、グリゼルダは王都で開かれた仮面舞踏会に参加する。そこで、トラヴィスという年下の青年と知り合ったグリゼルダは彼と恋仲になった。そして、どんどん彼に夢中になっていく。
だが、ある日。トラヴィスは、突然グリゼルダの前から姿を消してしまう。グリゼルダはショックのあまり倒れてしまい、気づいた時には病院のベッドの上にいた。
グリゼルダは、心配そうに自分の顔を覗き込む執事にトラヴィスと連絡が取れなくなってしまったことを伝える。すると、執事は首を傾げた。
そして、困惑した様子でグリゼルダに尋ねたのだ。「トラヴィスって、一体誰ですか? そんな方、この世に存在しませんよね?」と──。

悪役令嬢はモブ化した
F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。
しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す!
領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。
「……なんなのこれは。意味がわからないわ」
乙女ゲームのシナリオはこわい。
*注*誰にも前世の記憶はありません。
ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。
性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。
作者の趣味100%でダンジョンが出ました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる