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しおりを挟むそれまで、黙っていた面々は、アンリエットが何をしていたかを話した。それは、結構なものたちが知ることだった。
更には親子で、再婚の前からアポリネール子爵家に住み着いていたことなどを話した。
だが、すぐに否定したのは、その話を全く知らなかったであろうアリステッドだった。
「そんな根も葉もないことを言うな! 証拠もないくせに」
「あら、あるわ。アポリネール子爵家で、解雇された使用人たちが、見聞きしていたわ。あなたが、ヨランダ様と婚約破棄した理由の使用人のようなことをさせていたのは、その女と母親よ。お金が勿体ないからって使用人の給料を自分たちが使いから、そうしたのよ」
使用人たちは、てんでバラバラに再就職していた。あのアポリネール子爵家を無理やり辞めさせられたとして、ヨランダのために給料をかなりカットされても最後まで残ってヨランダを守ろうとしていた者たちは、さっさと辞めた者たちよりも、今や給料が良かったりする。
そんな使用人たちが、ヨランダが婚約破棄され、勘当されたことを知って黙っていられなくなって口を開いたのだ。
それによって、切々とヨランダがされてきたことが雇われた先で暴露され、そんな仕打ちをされていたのかと夫人や令嬢は、涙なくして聞けなかった。
ヨランダのためにと留学するまで我慢していた。みんな、ヨランダのためにと思っていたのだが、それで彼女は自分に味方はいないと思っていたように見えてならなかった。
そんなことはない。アンリエットに味方している令嬢たちばかり目立っていたが、そんなことないのだとあの頃は言えなかった。
だが、アリステッドとアンリエットには、今更に聞こえたようだ。
もっともアンリエットに味方していた令嬢たちは、面倒な話が始まったとばかりにいなくなっていた。巻き込まれたくなかったのだろう。
「っ、嘘よ! そんなことしてないわ!!」
「そうだ! たかが使用人の話など、信じられるか!」
「あら、そう。なら、その女と母親が、アポリネール子爵家で、あれこれ買い物しているのを調べてみたら? ヨランダ様のお母様が亡くなってすぐから、色々買い物しているみたいだから、証拠になるのではないかしら」
「ふん! それで、何も出て来なかったら、どうする?」
「謝罪するわ」
「そうだな。きちんと謝る。その変わり、証拠が出てきたら、そっちが謝れ」
「はっ、いいだろ。出るわけがないがな!」
「そんな、わざわざ調べずとも、ただの行き違いでしょうし」
売り言葉に買い言葉で、そんなことになっていた。
アンリエットは、どうにかやめさせようとしていたが、それも上手くいかなかった。彼女が、全て上手くいっていると思っていたことも、見せかけだったからに他ならない。ヨランダが気に入らないからとアンリエットの味方のようにしていただけで、面倒なことになれば味方する気は全くない連中しか、彼女の側にいなかったのだ。
そのため、今回のようになった時にアンリエットとアリステッドを味方する者が現れなかったのだ。今後、もう現れることはないだろう。味方しても面倒にしか巻き込まれはしないのはわかりきっている。
「いや、今回ばかりは我慢ならない。きちんと調べて、あいつらに謝罪させる。何なら土下座してもらう。君は、気にしなくていい」
「……」
アリステッドは、怒り心頭で調べさせたら、驚くほどたくさんの証拠が出て来た。
もちろん、アリステッドたちが謝罪しなければならない方向の証拠ばかりだ。
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