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しおりを挟むガイエ国王の子爵家では、ヨランダが留学生に選ばれていたことを知って、義姉のアンリエットは学園で恥ずかしそうにしていた。
この国では、留学する理由が男漁りや女漁りのためと思われているせいだ。
もっとも、直前まで婚約者がいて、破棄をしたのも留学が決まった方ではないのだが、全てはヨランダがしたかのようにして、アンリエットは外面をよくしてできた義理の姉を演じていた。
「恥ずかしい限りだわ」
「君が、恥入ることはない。全ては、ヨランダが悪いんだ。全く、破棄して良かった。まさか、留学が決まっていたとは思わなかった」
そんなことをアリステッドが話していた時だった。それまで、黙って聞いていた令嬢が、こんなことを言い出したのだ。
「いくら元婚約者であろうとも、名前を呼び捨てになさるのは、おやめになられた方がいいわ」
「は? なぜだ?」
「ご存じないのですか? ヨランダ様は、あちらでフェルギエール侯爵家の養子になられたのですよ」
サラッとそんなことを令嬢が言ったが、アリステッドはすぐにありえないと言った。アンリエットは、眉を顰めていた。
「そんなわけないだろ。破棄されて傷物になって勘当されたのに」
すぐさま、馬鹿にした物言いをしたのは、アリステッドだ。
それに返したのは、別の子息だった。
「事実だ。あちらの学園で、数十年どころか。数百年単位の才女と言われている。留学のもくても、あちらの学園の選択授業全てを受けたかったからだとか。よく知りもしないで、馬鹿にするのはやめた方がいい」
「そうやって、頭のいいものを遠ざけるせいで、ここの学園の学力が世界で一番低いし、この国が他所で出来損ないであろうとも、簡単に卒業できると馬鹿にされるのよ」
頭がいいものたちは、他所の国からここの出身だと聞くなり縁談の話がなくなることにげんなりしていた。そのため、留学しようとしても、ハードルが高すぎて留学できないのだ。
それこそ、他の学園を卒業したとなるとそれだけで、いいところに嫁げたり婿入りできるチャンスが広がるのだが、それすらできなくなっている。
そんな不満が爆発したのも、ヨランダが留学が決まった矢先にこんなことになったからに他ならない。我慢の限界を迎えたのだ。
前までは、何か言い返して、ヨランダの留学のことが台無しにならないかと口出しできずにいたのだが、それもなくなった。
するとどう聞いても、アンリエットがヨランダを貶めるためにしていたのは明らかなことばかりなのに。ヨランダが気に入らないからとアンリエットの味方をしている連中が、いなくなってもなおあれこれとヨランダを侮辱するのを耳にして、我慢するだけ無駄だと思ったのだ。
そんなことをするより、もうヨランダに迷惑をかけることにはならない。それならば、言いたいことを言ってやろうと思う者は、1人、2人ではおさまらなかった。
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