9 / 15
9
しおりを挟む留学生ではなくなって、ヨランダは侯爵令嬢となったため、編入試験を受けたが、その試験結果は素晴らしいものだった。
「この結果なら、いつからでも大丈夫そうですよ。まずは療養をしっかりなさって、無理ない範囲からがよいでしょうね」
「そのことなのですが、ヨランダは選択授業を全て受けたがっているのです。そうなると途中からというのも難しいかと」
「選択授業を全てですか?」
「はい。そちらを受けたくて留学しようとしていたので」
「そうでしたか。……私の受け持つ選択授業は、長期休暇中に毎回、遅れている生徒がいるので補講に出て追いつくというのもありかと思いますが、他は先生方に聞いてみないと難しいですね」
だが、やる気に満ちていて、独学でも勉強していたヨランダは途中からでもいくつかの授業は問題なかった。
それによって、フェルギエール侯爵家の養子になったヨランダが一目置かれるようになって、何かと婚約者のいない子息たちが話しかけるのを見かねて、令嬢たちがヨランダの側にいるようになった。
そんな風にしてくれる令嬢が、ガイエ国にいなかったこともあり、友達ができたことにヨランダは喜んでいた。
彼女たちは、聡明なヨランダの側で勉強の仕方やわからないことをあれこれ聞いて、自分たちももっと頑張らなければと思う者ばかりだった。
その令嬢たちは、婚約者のいる者たちばかりで、婚約者の子息に恥をかかせたくないと色々と頑張っているものたちだった。
益々、素敵になっていこうとする婚約者の令嬢たちを見て、子息たちもヨランダが困っていると助けるようになった。
「全く、婚約者を探すのも結構だが、そんなことを頑張るより他にやるべきことがあるだろうに」
「本当ですね。追い払っても、追い払っても、寄って来るのですもの。厄介な虫ですわ」
「あの、ご迷惑をおかけして、申し訳ありません」
ヨランダは、思わず謝ってしまった。すると謝ることないとすぐに言われた。
「ヨランダ様は、それだけ魅力的なだけですわ」
「そうですとも。あんな群がって来るのより、素敵な方はたくさんいるのですよ」
「こらこら、追い払って置きながら、自分たちの身内を紹介しようとするな」
あわよくばと紹介しようとするのをやんわり止めたりしてくれた。
特に移動中や休み時間とかにヨランダの側に寄って来たりするので、1人では決していないようにした。
ヨランダが、何も知らないと思って、婚約者に無理やりなろうとした子息が現れたのだ。
それを知ったフェルギエール侯爵夫妻やエミリアンは、怒り心頭となり、その子息とその家に苦情と抗議がなされて、両親が息子を伴って平謝りに来たが、子息の方は……。
「こんな大事にすることないだろ」
「え?」
「嫌なら、私に断れば済んだのに」
「……」
子息は、ヨランダにポロッとそんなことを言ったのだ。それに絶句していると……。
「謝罪に見えられたのでは?」
すぐさま、クロードがギロッと伯爵夫妻を睨みつけた。ヴァランティーヌも、殺気立っていた。
「っ、も、申し訳ありません! 馬鹿者!! お前が、そんな考え方だから私たちか頭を下げることになるんだろうが!!」
「え? 何言ってるんですか。この女が告げ口しなければ、こうはなってないですよ」
侯爵令嬢をこの女呼ばわりしたのは、伯爵家の家の子息だった。
それを見ていて、ヨランダは元婚約者のことを思い出してしまっていた。
怒り心頭になる養父母と平謝りする伯爵夫妻とヨランダを未だに睨む子息と睨まれている方は、ぼんやりと元婚約者たちがどうしているかを考えていた。
ガイエ国にいた時は、養父母や今繰り広げられている彼の両親のようにヨランダの味方はいなかったのだ。
それこそ、目障りなヨランダがいなくなって、アンリエットたちは幸せを貪っていそうだ。それにしても、好き勝手にするお金は、一体どこから出ているのだろうか。
いくら、使用人たちの給料をケチっても、あそこまで好き勝手にできるお金はなかったはずだ。そこが、ヨランダは不思議に思えていた。
113
お気に入りに追加
193
あなたにおすすめの小説

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
私達、政略結婚ですから。
黎
恋愛
オルヒデーエは、来月ザイデルバスト王子との結婚を控えていた。しかし2年前に王宮に来て以来、王子とはろくに会わず話もしない。一方で1年前現れたレディ・トゥルペは、王子に指輪を贈られ、二人きりで会ってもいる。王子に自分達の関係性を問いただすも「政略結婚だが」と知らん顔、レディ・トゥルペも、オルヒデーエに向かって「政略結婚ですから」としたり顔。半年前からは、レディ・トゥルペに数々の嫌がらせをしたという噂まで流れていた。
それが罪状として読み上げられる中、オルヒデーエは王子との数少ない思い出を振り返り、その処断を待つ。
悪役令嬢を陥れようとして失敗したヒロインのその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
女伯グリゼルダはもう不惑の歳だが、過去に起こしたスキャンダルが原因で異性から敬遠され未だに独身だった。
二十二年前、グリゼルダは恋仲になった王太子と結託して彼の婚約者である公爵令嬢を陥れようとした。
けれど、返り討ちに遭ってしまい、結局恋人である王太子とも破局してしまったのだ。
ある時、グリゼルダは王都で開かれた仮面舞踏会に参加する。そこで、トラヴィスという年下の青年と知り合ったグリゼルダは彼と恋仲になった。そして、どんどん彼に夢中になっていく。
だが、ある日。トラヴィスは、突然グリゼルダの前から姿を消してしまう。グリゼルダはショックのあまり倒れてしまい、気づいた時には病院のベッドの上にいた。
グリゼルダは、心配そうに自分の顔を覗き込む執事にトラヴィスと連絡が取れなくなってしまったことを伝える。すると、執事は首を傾げた。
そして、困惑した様子でグリゼルダに尋ねたのだ。「トラヴィスって、一体誰ですか? そんな方、この世に存在しませんよね?」と──。

毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。
克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。
乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?
シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。
……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。

婚約破棄ですか。ゲームみたいに上手くはいきませんよ?
ゆるり
恋愛
公爵令嬢スカーレットは婚約者を紹介された時に前世を思い出した。そして、この世界が前世での乙女ゲームの世界に似ていることに気付く。シナリオなんて気にせず生きていくことを決めたが、学園にヒロイン気取りの少女が入学してきたことで、スカーレットの運命が変わっていく。全6話予定

思い出してしまったのです
月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。
妹のルルだけが特別なのはどうして?
婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの?
でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。
愛されないのは当然です。
だって私は…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる