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しおりを挟む使用人たちによって、磨き抜かれて美しくなっていき、元気に日に日になっているヨランダのところにエミリアンは何かと顔を出してはいた。
「その、ヨランダ」
「はい」
「我が家に養子になるのは、そんなに嫌なのか?」
「……嫌というか」
「ん?」
「……母が何を考えていたのかと考えるとどうしても、その行き着いてしまうんです」
「?」
エミリアンは、母に似ていることは知っていたが、それと関係していそうだと思いながら、ヨランダが何を気にしているのかがわからなくて首を傾げた。
「その、私、母に嫌われていたのかなと」
「へ?」
「そんなことないわ!!」
「「っ!?」」
そこに聞き耳を立てていたヴァランティーヌが、乱入してきてヨランダとエミリアンは驚いてしまった。気づいていた使用人たちですら、驚くような乱入だった。
「は、母上! 驚かせないでください。ヨランダ、大丈夫か?」
「び、びっくりしました」
「ごめんなさい。でも、聞き捨てならなくて、あなたのお母様があなたを嫌うなんてありえないわ」
「……」
「母上。落ち着いてください。ヨランダ、なぜ、そう思うんだ?」
「……あの、子息との婚約を決めたのが、母なんです」
「「え?」」
それにエミリアンとヴァランティーヌは、驚いてしまった。この国ではありえないことだ。てっきり、アポリネール子爵が婚約させていたと思っていたが、違うとなってヴァランティーヌですら混乱していた。
「そんな、あなたの話を聞きもせずに義姉の話を鵜呑みにするような子息を婚約者にした? そんな、何か思惑があったのよ」
「それは、どんな思惑ですか?」
「えっと、それは……」
ヨランダに聞かれて、ヴァランティーヌは言葉に詰まってしまった。
「ヨランダは、そんなのを婚約者にさせたから、嫌われてたと思っているのか?」
エミリアンの言葉に頷いた。ヴァランティーヌは、従姉妹がそんなことをしたと聞いて混乱しっぱなしだった。
「母上。なぜ、そんなのを婚約者にしたかは聞かれましたか?」
「……相応しいのを選んだとしか聞いてないわ」
「やっぱり。私も、そう言われました」
それを聞いて、エミリアンもヨランダが言うのは無理ないなと思い始めてしまった。
「みんな、ここにいたのか。ヨランダ、気分がよければ、ケーキでも……。どうした?」
クロードは、街で評判のケーキを買って早めに仕事から戻って来た。
ヨランダのところに集まっていると聞いて、覗いて見れば何やら暗く沈んでいて、使用人たちもどうしたものかと言う顔をしていた。
「父上」
「旦那様」
「ん?」
2人に呼ばれ、ヨランダは俯いたままだった。
「何があった?」
そこから、説明していくのはエミリアンとヴァランティーヌだ。
ヨランダは、何とも言えない顔をしていたままだった。
こんな顔で、とりあえずケーキでもなんて言う話はできなかった。
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