幼なじみで私の友達だと主張してお茶会やパーティーに紛れ込む令嬢に困っていたら、他にも私を利用する気満々な方々がいたようです

珠宮さくら

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アンリエットが、留学を終えて戻ると両親は心配そうにしながら出迎えてくれた。


「ただいま戻りました」
「お帰り。大丈夫だったか?」
「はい」
「あの人たちが、そこまでするとは思わなかったわ。アンリエットが、別の国に留学して良かったわ」
「……」


母は、姉が実家で煙たがられていて、娘も荷物状態になっているようで、実家を気にしていた。

それは、アンリエットも気になっていた。あちらには、母の兄がいる。アンリエットからすれば叔父だ。暴走気味のあの伯母に負けていなかったようだが、いつも家にいるのは妻だ。

2対1では大変ではないかとアンリエットの母は気にしていたようだが、負けていなかったようだ。

心配など無用だったことをアンリエットはしばらくして知ることになった。実家の方でも色々あり、伯母と従姉はこれ以上やったら出て行ってもらうという約束をすぐに破って、出て行くしかなくなったようだ。その後、2人がどうなったかは知らない。

その頃にはリシャールがアンリエットの国に留学しに来ていた。


「アンリエット」
「リシャール様?」
「留学しに来た」
「え? そうなのですか?」


アンリエットは、何も知らされていなかったが、学園にまた通うようになり、王太子が婚約者ができたというのに諦めきれずにアンリエットにつきまとっていた。

アンリエットは、それに全く気づいていなかったが、王太子の婚約者の令嬢に嫌がらせもされていた。

王女は、前までしつこく誘って来ていたが、まるで他人事のようにしていた。

それを知ってリシャールがやって来たのだが、そんなこと知らないアンリエットは、嬉しそうにしていた。


「とても嬉しいです。色々とご案内しますね」
「あぁ、そうしてくれると助かる」


リシャールは、王太子に会った時も牽制していたが、それは拍子抜けするものだった。

アンリエットにはしつこくできるようになっても、その婚約者に睨まれただけで、いなくなってしまうのだ。リシャールとしては、そんなに殺気立って睨んではいないのだが、それすら察知していなくなるまでになった。

どうやら、リシャールが怖いようだ。


「リシャール様?」
「従兄とは、全然違うな」
「?」


アンリエットは、婚約者のそんなつぶやきの意味を知ることはなかった。

リシャールの従兄は、睨んだくらいで怖気づくことはない。むしろ、笑顔で何か用かと寄って来る。その笑顔の方が睨まれるより怖いのをリシャールは知っている。

そんな王太子の情けない姿を見て、彼の婚約者は婚約を解消してほしいとよく両親に泣きついていたようだが、情けなかろうとも娘が王太子妃にさせようとして、限界を超えた令嬢は別の人と駆け落ちして行方をくらました。

その後も、婚約者が見つかっても、結婚したくないと必死になって逃げようとする令嬢ばかりで、国王と王妃は頭を悩ませることになったようだが、王太子は自分でどうにかしようという気力がなかったようだ。

そんな王太子を利用しようとして貴族が、娘や遠縁の令嬢を婚約者にしようとするも、勘当された方がマシだと言って逃げ出すほどで、アンリエットが嫁いだ国の王太子とは正反対で、全く頼りにならない王太子として有名になっていたようだが、その辺のことをアンリエットは知ることはなかった。

その頃には、アンリエットは花嫁修業をすべくリシャールの家にいた。

リシャールの両親は、アンリエットを実の娘のように可愛がってくれ、王太子は溺愛してやまない妹のように甘やかそうとしてきて、それが大変だった。

アンリエットは、結婚してからも色んな目にあったが、モニークや従姉の時のような酷い状態になることはなかった。

あれを経験してしまうとどれも些細なものに思えて、アンリエットがそこまで悩んで落ち込むこともあまりなかった。

おかしな話、アンリエットは色んな経験をしたことで、残りの人生を幸せいっぱいなものに変えることとなり、笑顔あふれる日々を送ることができたのだった。




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