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しおりを挟むアンリエットの祖国では、王女がイライラしていた。
王太子である兄と婚約してくれたらと思っていたのに留学してしまい、従姉のところに留学すると思っていたが、違うところに行ったことは良かった。
アンリエットの従姉が、良さげな子息をアンリエットに紹介したかったからだと留学をすすめる理由を掴んでいて、王女は気が気ではなかった。
王太子は、ずっとそわそわしていたが、今度は知り合いもいないところにしたと聞いて、心配していた。
「アンリエットは、どうしている?」
「お兄様。私に聞かずにご自分で手紙を書いて聞いたら?」
「そこまで親しくない。……それに返事がなかったら立ち直れない」
「……」
王女は、そんな兄にイライラしていた。
そのうち、アンリエットが婚約したと知って王太子は目に見えて落ち込み、そんな兄をほっといて王女は、あちらの王太子と婚約して自分だけでもアンリエットと一緒にいられるようにしようとした。
なのに王女が、必死にアプローチしていたのもなかったかのようにあちらの王太子の婚約が決まったと知って、王女は激怒した。
「この私と婚約せずに他の令嬢を選ぶなんて、許せない!」
王太子のところに出向いて怒鳴り散らすなんてことはしなかった。婚約した令嬢が気に入らなくて、王女は事実無根な嘘を広めようとした。令嬢が恥をかいて婚約が解消になることを楽しみにしてのことだ。
それが間抜けなことに王女がそう言う噂を広めようとしているというのが、広まったのだ。そう、王女がそう言っていたと広まったのだが、王女はそれに気づかなかった。
しばらくして国王たちの耳にも入り、王女が呼ばれた時には、あちらの婚約が解消したから、お前と婚約したがっていると言われると思い込んでいて、ご機嫌だった。
「え?」
「だから、あなたが変な噂を流して、あちらの婚約を台無しにしようとしていると広まってるのよ」
「なっ、」
まさか、そんな広まり方をしていると王女は気づいていなかった。最近、王女の誘いを断る面々が増えていたのを思い出して、王女は顔を赤くさせた。
とんでもないことをしていると広まっていて、王女の誘いをみんなやんわり断っていたのだ。
そんなことをしようとしている王女の友達だと思われたくなかったのだろう。
「あちらにまで広まっているそうだ」
「っ、」
王女は広めようとしていたが、思っていたのと違う本当のことが広まっていることにぎょっとした。
「あちらは、ただの噂で、根も葉もいかないものだから本気にはしていないが、もしそれが本当だったらと釘をさされた」
「わかっているわよね? 今回のは、ただの噂なのよね?」
「もちろん。噂です!」
王妃にも確認されて、王女はそう答えるしかなかった。
その後、王太子は未練たらたらで他の令嬢と婚約しても、長続きすることはなかった。
そんな兄を見限って王女はさっさと婚約した子息のところに嫁いで、兄とも、アンリエットに関わるのもやめた。
それによって幸せになれたが、あの噂が時折浮上して、あんなことをするんじゃなかったと後悔するようになり、その頃には噂が浮上することはなかった。
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