見るに堪えない顔の存在しない王女として、家族に疎まれ続けていたのに私の幸せを願ってくれる人のおかげで、私は安心して笑顔になれます

珠宮さくら

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バーレントとマルへリートが婚約してからのことだ。彼も交えて王宮で食事する時にアンネリースがいないことを最初、彼は不思議そうにした。待てど暮らせども、アンネリースが姿を見せなかったのだ。

彼にとって、美しい婚約者とその両親との食事会で、もっとも楽しみにしていたのは、アンネリースと食事することだった。

彼は、他の者たちと違うところがあったのだが、それをひた隠しにしていた。だが、気になったバーレントは痺れを切らして聞くことにした。


「あのアンネリース王女は?」
「部屋よ」
「? 具合でも悪いのですか?」


そう聞いたのは、王族のしきたりを知っていたからだ。王族は、食事を一緒に取る。そこに仮面をつける者がいても、初代が決めたしきたりを破ることはできないはずだ。

それは、誰もが知っていることだった。そのため、バーレントは尋ねただけなのだが、国王は一瞬面倒くさそうにしたが、すぐに何でもない顔をした。


「まさか。君のような見目麗しい子息と食事なんてしたら、卒倒してしまう!」
「そうね。あなたのような子息と婚約者したマルへリートのことをいつも妬んでいるくらいだもの。一緒に食事させたら、勘違いしてしまうわ!」
「……」


まさか、自分たちが一緒に食事したくなくて部屋で取らせているとは言えず、そんなことを言った。

しきたりを違えることを知られるわけにはいかなかった。だから、当たり障りないようにしたかった。そのため、バーレントにこう言っただけだ。

それは上手い嘘だと国王と王妃、マルへリートは思っていた。しきたりを間違えてはいけないと必死に覚えていた。それを蔑ろにすると笑いものになるからだ。

そうでなければ、そんな訳の分からないものを覚えたくなかった。

それを聞いた彼は、勘違いをすることになるとは誰が思うというのか。彼は、王族のやり取りを都合よく聞いた。自分は、アンネリースに物凄く好かれているのだと。

バーレントは誰にも言っていないことがあった。彼の本当の好みは、アンネリースのような女性なのだ。アンネリースのような仮面をつけた女性ほど、魅力的な女性はいない。

それを国王と王妃、彼の実の両親も、マルへリートも、ましてやこの場にいないアンネリースも知らなかった。この国の誰も知らないことで、彼はこの後、仮面をつけた女性をアンネリースだと思い、誰彼構わずに口説いて回るとは誰も想像していなかった。

元より、美しくない者が他にも、それなりにいることを彼は知らなかった。それほどまでに世間知らずで、ローザンネ国では美しいと思われる姿形をしているだけで、中身のないお馬鹿な子息だった。それに気づいている者は少なかった。

でも、それでもまかり通るのが、この国だ。美しければ、中身がどんなに残念でもいい。

それがローザンネ国だ。それが、この国の当たり前にもなっていた。バーレントのように中身のないものが、多くいても成り立つ国だ。それが、どれほど危ういのかも知らない人たちの集まりとなっていた。


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