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しおりを挟むカミーユが王太子と婚約することにしたのは、ジェロームのことをどうにかしてほしかったというより、色んなことで意気投合できたから婚約したに過ぎなかった。
それが、たまたま王太子だっただけなのだが、ジェロームはブチギレることになった。
だが、幸せになるのになぜ、ジェロームの許可というのか。許しが必要なのかと思っていた。
お前が悪いと責め立てられても、カミーユは自分の何が悪いなんて全くわからなかった。
それもそのはずだ。ジェロームの気持ちなど、未だにわかっていない。好きだったのに鞍替えした令嬢だと思われていることにも気づいてはいなかったからだ。
病弱だと言われていて、あまり表舞台に出て来なかった王太子は、そんな弟に対しても冷静だった。
「いい加減にしないか」
「兄上は、騙されているんだ! その女は、私をその気にさせて、兄上に近づいたんだ」
「自分がそう思いたいだけだ。いい加減、好かれていないどころか。迷惑していて、嫌われていることを認めろ」
「っ、そんなわけない!」
駄々っ子のようになったジェロームは酷かった。あまりの酷さから、王位継承権を剥奪して遠縁の養子になることになって、カミーユたちから離されることになったが、最後までカミーユに騙されて酷い目にあったと思うことをやめることはなかった。
「兄上は騙されているんだ!」
カミーユは、そんなジェロームになぜ、そんなことを言われ続けることになったのかが全くわからず、げんなりとした顔をしていた。
それこそ、もう幼なじみのようなのには会うことはないと思っていたのに同じようなのに会うことになって、益々カミーユは何も言わなくなった。
王太子と婚約したことで忙しいからと令嬢たちに誘われても、ジェロームのやることなすことを言葉にすることはなかった。
「あんな目にあったのに人を悪く言いたくないみたいね」
「よほどよね」
「そんな方を試すようなことをしてしまったわ」
「あの方こそ、王太子の婚約者に相応しいわよね」
そんな風に言われるようになったが、何度も言う。誤解でしかない。カミーユは、そんなつもりで話したくないわけではない。もう忘れたいだけだ。
「カミーユ。弟が、申し訳なかった」
「殿下が、謝ることは何もありません」
「だが」
「もう、いいんです」
「……」
カミーユは、王太子が謝罪するのを見て、そう言って何事もなかったようにした。
そんなカミーユのことを王太子は、後々こう言うようになった。
「私には過ぎた令嬢を婚約者に迎えられたようだ。こんなことは他では言えないが、弟には密かに感謝している」
そんなことをカミーユの義兄であるアドルフに話したことがあったようだが、それをカミーユが知ることはなかった。
アドルフは、王太子がカミーユのことをとても大事にしていて、いつ見かけても仲睦まじくしているのを見て、ジェロームの時があったせいで、カミーユが幸せにしているのを見て喜んでいた。そこに複雑な気持ちを持つことはなかった。
カミーユも王太子に溺愛され、ジェロームのせいで申し訳なかったと本気で思っているのがわかり、彼にそう思わせ続けるのも悪いと思って王太子妃として、自分ができることを全力で頑張り続けることをやめることはなかった。
そんなことがあっ て、幼なじみたちがどうなったかをカミーユはあまりよく知らなかった。
もはや、あちらのことなど、どうでもよくなっていたとも言える。
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