25 / 25
25
しおりを挟む僕は、伯母が検査入院したと聞いて毎日のようにお見舞いに病院にいた。
最初は、遠慮していた伯母だが病院にいい思い出がないこともあり、僕が暇を持て余しているのに付き合ってくれることになった。
従弟妹たちは、花屋をしているし、叔父さんも仕事でお見舞いには中々来れていないようだ。
僕の奥さんも来たがっているが、丁度そろそろ生まれそうなこともあり、出産を終えたらお邪魔させてもらうことになっていた。
「そういえば、凪。高校生の時に二種類のリボンをラッピングに使おうとしてた意味、わかった?」
「叔母さん、いつの話しだよ」
「わからないのね」
「んー、わからないな」
「だろうと思った。あれは、あんたの無意識だもの」
「?」
僕は、依頼主とそのラッピングされた花束を貰う人が上手くいくように直感で選んだ色を結んでいたようだ。
「……マジで?」
「それに赤いリボンもよ。あれは、運命の赤い糸ね」
「……なるほど」
「凪は、人の想いを結ぶのが上手いから、私はすぐにわかったわ」
僕は全く気にしていなかったが、意味があったらしい。そんな話をして数日して、叔母は亡くなった。
検査入院だったはずで、結果が出る前にあっという間に亡くなってしまって、僕だけでなくて、みんなが驚いてしまった。
検査結果は、癌だった。
もしかすると叔母さんは、わかっていたのかも知れない。
更に母さんも、同じ年に亡くなった。癌だったと聞いたが、叔母さんの時より何ともなかった。
親不孝だと言われるのも無理ないかも知れない。
でも、その日に僕にとって、末っ子となる娘が生まれて、複雑な日になったのは言うまでもない。
我が子の誕生日で、母さんの命日となったのだ。
まぁ、うん。上の子は祖母の命日で、真ん中は父さんの誕生日だったりするから、意味がないわけがないのだろうが。
叔母さんの花屋は、従弟妹が引き継ぐことになった。2人とも、叔母さん譲りでセンスも良かった。
叔父さんは、叔母さんがあっという間に亡くなったことで、茫然自失となっていて心配したが、従妹が何かと世話をやいているようだ。
僕は、あの花屋に行くたび、伯母がいるような気がし続けた。そこで、従弟妹たちがお客様たちに満足いく花を誂えているのを見て、僕もそこに入りびたい気持ちでいっぱいになりながら、家族の待つ家がより恋しくなってしまった。
矛盾しながら、従弟妹たちが張り切って作った結婚記念日の花束を受け取った。
「やっぱり、凪兄さんは花が似合うよね」
「そうかな?」
「うん。琴葉さんが、羨ましがってたよ。女の私より似合ってる気がしてならない時があるって」
「え……?」
「おい、真理。余計なこと言うなよ」
従弟妹たちが喧嘩となったが、僕は複雑な気分と嬉しい狭間に苦笑してしまった。
まぁ、最後は花が似合うと言われて、女も男も関係ないと言いたいところだが……。
それを奥さんに言われるのは、堪えるな。
そんな風に落ち込みながら帰って、何があったかを伝えると子供たちに全力でフォローされ、奥さんにもフォローされ、複雑さは増すばかりだったが僕はそういう星の下に生まれたようだ。
10
お気に入りに追加
13
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
顔と名前を覚えることが苦手な私が出会ったお爺さんは、私とよく似た人を忘れられなかったようです
珠宮さくら
青春
三千華は結婚して家庭を持ってから、思い出深い季節が訪れて大学生の頃のことを思い出すことになった。
家族以外の人の顔と名前を覚えることが苦手な三千華は、そこで自分の顔にそっくりな女性と間違い続けるお爺さんとボランティアを通じて出会うことになるのだが、その縁がより自分に縁深いことを知ることになるとは思ってもみなかった。
マコトとツバサ
シナモン
青春
かっこいい彼氏をもつとすごく大変。注目されるわ意地悪されるわ毎日振り回されっぱなし。
こんなあたしのどこがいいの?
悶々とするあたしに
ハンドメイドと料理が得意なうちのお母さんが意外なことを教えてくれた。
実は、1/2の奇跡だったの。
片思いに未練があるのは、私だけになりそうです
珠宮さくら
青春
髙村心陽は、双子の片割れである姉の心音より、先に初恋をした。
その相手は、幼なじみの男の子で、姉の初恋の相手は彼のお兄さんだった。
姉の初恋は、姉自身が見事なまでにぶち壊したが、その初恋の相手の人生までも狂わせるとは思いもしなかった。
そんな心陽の初恋も、片思いが続くことになるのだが……。
彼氏と親友が思っていた以上に深い仲になっていたようなので縁を切ったら、彼らは別の縁を見つけたようです
珠宮さくら
青春
親の転勤で、引っ越しばかりをしていた佐久間凛。でも、高校の間は転校することはないと約束してくれていたこともあり、凛は友達を作って親友も作り、更には彼氏を作って青春を謳歌していた。
それが、再び転勤することになったと父に言われて現状を見つめるいいきっかけになるとは、凛自身も思ってもいなかった。
斎藤先輩はSらしい
こみあ
青春
恋愛初心者マークの塔子(とうこ)が打算100%で始める、ぴゅあぴゅあ青春ラブコメディー。
友人二人には彼氏がいる。
季節は秋。
このまま行くと私はボッチだ。
そんな危機感に迫られて、打算100%で交際を申し込んだ『冴えない三年生』の斎藤先輩には、塔子の知らない「抜け駆け禁止」の協定があって……
恋愛初心者マークの市川塔子(とうこ)と、図書室の常連『斎藤先輩』の、打算から始まるお付き合いは果たしてどんな恋に進展するのか?
注:舞台は近未来、広域ウィルス感染症が収束したあとのどこかの日本です。
83話で完結しました!
一話が短めなので軽く読めると思います〜
登場人物はこちらにまとめました:
http://komiakomia.bloggeek.jp/archives/26325601.html
君と命の呼吸
碧野葉菜
青春
ほっこりじんわり大賞にて、奨励賞を受賞しました!ありがとうございます♪
肺に重大な疾患を抱える高校二年生の吉川陽波(ひなみ)は、療養のため自然溢れる空気の美しい島を訪れる。 過保護なほど陽波の側から離れないいとこの理人と医師の姉、涼風に見守られながら生活する中、陽波は一つ年下で漁師の貝塚海斗(うみと)に出会う。 海に憧れを持つ陽波は、自身の病を隠し、海斗に泳ぎを教えてほしいとお願いするが——。 普通の女の子が普通の男の子に恋をし、上手に息ができるようになる、そんなお話。
大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話
家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。
高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。
全く勝ち目がないこの恋。
潔く諦めることにした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる