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「え? また?」
「これは、友達が別のとこに修学旅行に行ったので、トレードしたんです」
「トレード……?」


流石の叔母も、理解が追いつかなかったようだ。


「まぁ、続くとあれなんで、クリスマス辺りにでも渡してください」
「……ちょっと待って。これ、買い取らせて」
「へ?」


今度は、僕の理解が追いつかなかった。

何を言ってるんだ??

叔母は、夫であり、僕にとっては叔父が出張をしたことを話し始めた。

なんか、既に理解したかも知れない。

どうやら、子供たちに土産は何がいいかと聞いておいて、その土産をすっかり忘れて帰って来てしまったそうだ。

うん。やっぱり。叔父さんならありえる。


「忘れたんですか」
「そうなのよ。凪が、買って来てくれていたから、子供たちは見せながら、これの御当地キャラクターを買って来てほしいと頼んで安請け合いしたのにすっかり忘れて帰って来たのよ」
「……」
「あんな綺麗さっぱり忘れて帰って来たのには、こっちがびっくりしたわ。あれで、営業のやり手にはどう見ても見えないもの」
「……」

なんだろう。物凄く想像しやすい。そして、叔母さんがいつもに増して辛辣だ。

それだけ、酷かったのだろう。


「それで、帰って来て子供たちが出迎えたのよ。出張から帰って来てパパが恋しくなったと思って感激していたんだけど、お土産ほしさに群がってることに最初は全く気づいてなかったのよね」
「……」


群がるって、いい得て妙だな。物凄くわかりやすいけど。きっと、叔父さんは、それで喜んだに違いない。

普段は、叔父さんに塩対応なのだ。なんか、その対応の理由が垣間見えた気がする。


「それで、中々お土産を渡さないから、子供たちが痺れをきらして、御当地キャラクターの話をしたら……」
「忘れていたと?」
「そうなのよ。それで、子供たちは、すっかり怒っちゃって、旦那は凹むし、鬱陶しいったらないのよね」
「……」


鬱陶しいって言われてるんですけど。……まぁ、わからなくはない。

そんなことになるなら、約束なんてしなければよかったのだ。


「それが、同じ県なんですか?」
「違うわ。でも、どうにかして、別のとこのを手にしたことにするわ」
「なるほど」


まぁ、あのくらいの子たちにはわからないかも知れないが、わかってしまった後が問題になる。

約束破ったが、それなりに頑張って他のを入手したとなれば、少しは子供たちの怒りもおさまるかも知れないわけだな。


「だから、凪! 買い取らせて。旦那のお小遣いから引くから、言い値で買うわ」
「え? いや、言い値って言われても」
「旦那がやらかしたのよ。そのくらい強いで交渉してもいいわ」
「……」


そうかも知れないが、僕が買って来たものではないしな。


「あー、なら、僕にはそのままの値段で、買い物して来てくれた友達に何か渡したいんで、それでもいいですか?」
「……凪は、欲がないわね」
「ありますよ。でも、これ買って来てもらっ、たものなんで、僕が至福肥やすのも気が引けるんですよね」
「言わなきゃバレないでしょ」
「心は痛みます」
「流石ね」


僕の言葉に叔母は笑っていた。既に従弟妹たちをダシにしまくったのだ。これ以上はできない。


「なら、旦那に何が貢げるかを聞いて連絡するわ」
「貢ぐって、ことになってるし」
「ちなみに友達って、男の子? 女の子?」
「……女子です」
「わかった。どっちにも、お礼するわ」
「はい?」
「2人で、どっか行けるのにすれば、デートできるでしょ?」
「……」


叔母には何もかもお見通しのような気がして来た。

叶わないな。母さんは、のらりくらりとかわせても、何でか叔母さんにはバレるんだよな。

でも、デートか。口実になるなと思ってしまった僕の顔を見て、叔母はニマニマしていた。

その顔は、母さんにそっくりだった。


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