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しおりを挟む2年生の文化祭も思い出深いものになった。
1年の頃は、演劇をやることになって、あれは未知との遭遇だった。
まぁ、それはおいといて。今回の文化祭のその後だ。電車で会うと莉緒さんも気づいてくれて、会釈してくれるようになったのだ。
その上、話しかけられるまでになった。ここまで、長かった。
「友達も、喜んでくれました。ありがとうございました」
「いえ、それこそ、申し訳なかったです。時間ずらしてもらったのにケーキを結局、提供できなくて」
「あれは、仕方がないですよ」
ケーキは完成したが、運んでいる途中で喧嘩に巻き込まれてしまったのだ。それを莉緒さんたちは目撃したらしく、何があったかを僕よりよく知っていた。
それでも、戻って来てもらったのだ。お茶を振る舞って、お持ち帰り用のお菓子をサービスしたのでは割りに合わない気がするが、割り引き以上のサービスは拒否されてしまった。
喧嘩していたのは、僕の学校の生徒たちではなかった。他校生たちだったが、台無しになったケーキの作者や運んでいるクラスメイトが泣いていて、ぶちギレた僕は喧嘩していた面々に説教していた。
「部外者は引っ込んでろ」
「あ? 引っ込めるか。クラスの出し物、台無しにされて、クラスメイトが泣いてんだ。部外者呼ばわりされたくない」
ぶちギレた僕は、中々恐ろしかったようだ。何を言ったかを全く憶えていないが、先生方にそのくらいでいいだろうと宥められて、ハッと気づけば、喧嘩していた他校の生徒が半泣きで土下座していた。僕にだ。
あの時の僕は、一体、何を言ったんだろうか。
「それに感動したんです」
「?」
「凪さんが、あんな風にしっかりと説教して、本気で悪いと思ってるなら、片付けして行け。謝罪なら、口先だけで誰でもできるが、きちんと反省してる人間の誠意でしか、本当の謝罪はあり得ない」
……そんなこと言ったのか?全く憶えていないぞ。
せっかく来てくれる人たちにケーキ待ちが多かったのだ。あれは、本当に美味かったからわかる。
それを一瞬で台無しにしたのだ。キレないわけがないではないか。
「それで、片付け終わって、もう一度謝罪に来た人たちに前より綺麗にしてくれて、ありがとうってお礼言って、お茶を振る舞ってたの見て、凄いなって思ったんです」
「……」
いや、あれは、お茶があとちょっとで飲みきってなくなると助かると思って、茶葉を消費したかっただけなんだ。
確かにあの後、クラスメイトたちにも色々言われた。怖がられたり、尊敬の眼差しを向けられたりしたが、そうか。僕は、色々やらかしてしまっていたせいなのか。
なんだかんだ言って、喧嘩してた他校の生徒たちとも連絡先を交換した。喧嘩っぱやいが、いい奴らだった。アニキって呼ぶのは、全力で遠慮した。
そのせいか。修学旅行の班を一緒にならないかと色々と声をかけられていた。主に女子からだ。
どうしたものかと思っていたら、担任は公平にくじ引きでもしとけと言って、僕が何か言う前に決着がついてしまっていた。
これは、何か。モテ期が到来しているのか?
そのくじを担任は、僕に引かせた。それをまじまじと見返してしまったのは悪くないはずだ。
「え? 僕が引くんですか?」
「引いたとこの班の方が簡単だろ」
「確かに」
「ほれ、引け」
「……」
そんなこんなで引いたくじは、クラスメイトでよく話す女の子の千晴さんと同じだった。
「やったじゃん!」
千晴さんではなくて、その友達が喜んでいた。
「凪さん?」
「え?」
「着きましたよ?」
「あ、本当だ」
僕は、危うく乗り過ごすところだったようだ。
声をかけれて、僕の方が先に降りた。彼女は、この先の駅の近くの高校だ。
「ありがとう。それじゃ、また」
「はい。また」
ひらひらと手を振られ、フレンドリーな莉緒さんにつられて手を返した。
うん。今日も、いい日になりそうだ。
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