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しおりを挟む中間試験は、思っていたより悪くなかった。ヤマを教えろと頑張っていた友達が粘るのもわからなくはないほど、僕はこの辺が出そうだなと集中的に勉強していたところが出て、成績は悪いどころか。一学期の中間よりもよかった。
それはそれで、どうなのかと思うところだが、だからといって休んでいたところをきちんと理解しないままではいなかった。
復習も、きちんとやった。授業を受けたより、自力でやった方が楽しかったのは内緒だ。
「千晴さん、おはよう」
「おはよう」
あれから、千晴さんとはお隣りさんになった。席替えで近くなったことに二人してびっくりしてしまった。
2年の担任は、試験が終わるごとに席替えをして気分転換をしてくれていた。もっとも、他のクラスより平均が低いとやらないと言われていたが、今のところ席替えがなかったことはない。
「凪。お客さんだぞ~」
「?」
呼ばれたので、廊下の方に行くと園芸部の部長がいた。
「凪。ごめん! 園芸部の買い出しに人手がなくて、手伝い頼めないか?」
「あぁ、いいですよ」
「助かる! もう、このまま部活、入らないか?」
「長期休暇に全く部活動ができないので。それに2年のこの時期からって言うのも」
「あー、そっか。バイトしてんだったな。そうだよな」
買い出しには付き合えるが、それも予定があれば断っている。だが、買い出しも中々楽しいものがあったりする。
筋肉痛になるのは、覚悟するしかないけど。一人で行くより、別の楽しみがあるのだ。
「じゃあ、終わったら、園芸部の部室に来てくれるか?」
「え?」
いつもなら、校門のところで待ち合わせなのだが、なぜか部室と言われて僕はきょとんとしてしまった。
「買い出し、二手にわかれて別々のとこ行くんだ。凪に悪いが、公平にくじ引きすることになってもいいか?」
「あぁ、一気に行くんですね。了解です。いいですよ」
この学校の園芸部は、文化祭に向けて花壇をアレンジしていい区画が毎年、異なって設けられていた。
そのため、それに向けて買い出しが大変だったりする。去年は、棚をDIYして面白かった。文化祭で花の押し花やらプリザーブドフラワーなども販売して好評で、僕もその手伝いをして楽しんでいた。
今年も、楽しくなりそうだ。……でも、いつもより遅いな。大丈夫なのかな?
そんなこんなで、放課後に部室にお邪魔した。見慣れた顔と1年生がいた。
「園芸部の助っ人の伊東凪だ」
「どうも」
「助っ人……?」
「諸事情で部活に入れないんですが、臨時でお手伝いしてくれてる方です。昨年は、文化祭でも過去最高の売り上げに貢献してくれた方です。すみません。今年も、手伝ってもらうことになってしまって」
「いえいえ、今日は暇してたので大丈夫ですよ」
「教えていただい押し花やプリザーブドも、今年も順調なんですよ」
「あ、凄い」
副部長さんは、ふふっと笑っていた。その顔も素敵だ。去年は、こんなにフレンドリーではなかった。部長は、手先が器用なのだが、センスが壊滅的なこともあって大変なようだ。彼の家は造園業を営んでいるらしく、去年お邪魔させてもらった家はTHE日本庭園のようで凄かった。
まぁ、去年に続いて、助っ人要員で呼ばれて承諾したからには頑張るしかない。
そんなこんなで、くじ引きをして僕は1年生と副部長さんと買い出しに行くことになった。両手に花だ。
「今年のデザインも、先輩ですか?」
「あ、わかりますか?」
「このイラスト見て、わかりました。凄いですね」
「イラスト通りに仕上がればいいのですが」
「あー、この花とか。時期的にギリギリですもんね」
今年は暑さが半端なかったから、丁度いいのか。
そんなことを思っていたら、副部長さんは心配げにしていた。
「やっぱり、そうですよね。本当は夏休み中にでも買い出しに行って、中間試験前に組み立て作業に入ってるはずだったんですが、都合があわなくて。あったと思ったら定休日だったりしてしまって、こんなにおせおせになってしまったんですよね」
「あー、それ、凹みますね」
「凹みまくりました」
副部長さんとそんな話で盛り上がってしまい、1年生は手持ちぶさたになっていた。
それを見かねて、僕は園芸部の生徒が食いつきそうな話をすると彼女は、去年の押し花を購入していて、それでここの高校を受験して、部活に入ったとわかった。
「押し花で、妖精のアートものは初めてだったので感激したんです。先輩が、作ったんですね」
「あー、あれか。ただの押し花より常に飾れるものをコンセプトにしたから。ほら、押し花って、栞とかにするイメージが強いけど、本に挟んでる間、見れないでしょ? それが、勿体ないなとずっと思ってて」
「わかります! そうですよね!」
この一年は酒井陽葵さんと言うらしいが、あまり喋らない子のようだ。副部長が驚いていた。
いやー、僕の作品のファンがいて嬉しい限りだ。
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