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6、相思相愛に試練は野暮
しおりを挟むそれから、第2王子のサーダカが王太子となり、その婚約者にロメリアがなることに決まった。
「あなたは、ずっと1人で頑張ってこられていた。それを私は無駄にはさせたくはないのです」
サーダカは言いつつ、健気に呪いにたえ続けていた姿に感激したと語る王太子。何度となく、将来、義姉になる人だと諦めようとしたが、出来なかったのだとも熱っぽく話した。
ロメリアは最初こそ、断ろうとした。彼女はたえ続けることで、婚約が破棄されるのを望んでやっていたことだったのだから。
「どうか、私の妃になってはくれませんか? 私はバンダカのようにあなた1人で全部を押し付けるようなことは絶対にしません。共に乗り越えて行きたい。お祖母様や母上のように」
サーダカの中で、ロメリアのことが美化されていることが気になってしまったが、バンダカの時は、王太子妃にどうやったらならずに済むかと考えていたのにサーダカの時は、どうしたら彼のよいパートナーになれるかを考えていることで心が決まった。ロメリアは、受けることにした。
ロメリアが再び王太子の婚約者になることに難色を示した者は少なくなかった。前回は、10年近くも何の変化もなかったのだ。仕方がない。
だが、逆に悪化させた2人のこともあり、強い批判はなかった。同じことになったら何を言われるかはわかっている。それをサーダカとロメリアは覚悟して、妖精王の試練に挑むことにした。
妖精王に挨拶する時、サーダカは酷く緊張していた。言葉も完璧なのにそれでも真面目に勉強し、失礼がないように細心の注意をするような方だ。
兄弟で、こうも違うのかとロメリアは驚いたものだ。
『試練は、先の2人が継続中だ。だから、お前たちにはない』
「え……?」
「……あの2人が受けている間は、なしと言うことでしょうか?」
『いや、お前たちには必要ない。現国王も、先の王も相思相愛だった。かけるだけ、野暮というものだ。……そうであろう?』
「「っ!?」」
相思相愛という単語にロメリアたちは、顔を赤らめ、押し黙った。
『それにあの試練は、あの2人が悪化させたものだ。もう、我にも解けぬ』
「え?」
『大体、我の掛けたものを力づくで蹴散らせると思う人間がいることに驚きを禁じ得ぬ。勝てるわけがあるまい?』
「……確かに」
(それも、そうだわ。人間の掛けた呪いなら、まだ勝ち目はあるかも知れないけど。相手は妖精王なんだもの。勝てる人間がいるはずがないわ)
そこにロメリアは、自分が勘違いさせてしまったということまで頭が回らなかった。だが、回ったところで、説明されたのをわかったフリして、勝手に誤解した2人が悪いだけだ。
『あの2人のような人間ばかりになっていれば、加護を与えるのを止めるが、……あれは例外だろう。言葉がわからないのと見えも聞こえもしない婚約者では、我とて意志の疎通など出来ぬ』
「え?」
(あぁ、やっぱり、わかったふりをして、お互い確認しあっても、意味がなかったということね)
ロメリアたちは、試練はするだけ無駄だと言われてしまったが、それでは周りが納得してはくれるはずがない。そのため度々、神殿で祈って頻繁に妖精王と話すようにした。
ロメリアは平然としているし、サーダカも妖精の国の話に夢中になり、楽しそうに話をしていた。
神殿に仕えている者たちですら腰を抜かすほどの強い光とビリビリするような威圧があっるのだが、始めこそ、びびっていた王太子は興味のある話に夢中になると集中するタイプらしい。妖精王と長時間話していても平然としていることから、神官たちから偉大な国王となるだろうと期待された。そう言った噂話が広がり、ロメリアが悪かったわけでなく、前の王太子が良くなかったのだと思われるのに時間はかからなかった。
国民が期待するままにサーダカは賢王となり、ロメリアは献身的に支えて、初代王が目指したより良い国となった。
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