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しおりを挟むある日、エディットの家でコンスタンスは転機を迎えた。
「あれ? エディットのお友達かな?」
「はい。コンスタンス・オクレールと言います」
「そうか。私は、エディットの父親の異母弟なんだ」
「異母弟……?」
「母親が違うんだ。クリストフ・オービニエという」
エディットは、隣国から来たクリストフに嬉しそうな顔をした。
コンスタンスは、一回り近く離れた兄くらいにその人が見えた。
ドゥニーズが勘当されて、エディットがどうしているか心配になって様子を見に来たようだ。
それを見ていて、昔の兄を思い出してしまった。
「どうした?」
泣きそうな顔をしているのをクリストフは気づいて心配そうにした。
そして、コンスタンスが溜め込んだことを涙ながらに話すと……。
「妹を泣かすようなのがいるとはな。よし、私が話してみよう」
「え?」
「妹に悲しい思いをさせてるのは、兄じゃないからな」
こうして、レアンドルと会って話をすることになった。
コンスタンスは、オクレール侯爵家で自室にエディットといると怒鳴り合う声が聞こえて来て、ぎょっとした。
「大丈夫よ」
「……」
その後、静まり返ったため、そろ~りとレアンドルたちのところに行くと……。
「コンスタンス嬢。どうした?」
「怒鳴り声がやんだから、見に来たのよ。……殴り合ったの?」
「ん? あー、ちょっと拳で語らった」
「っ、すぐ、冷やすものを持ってきます!」
コンスタンスは、大慌てで動いた。
「お兄様、大丈夫ですか?」
「っ、あぁ」
「冷やさないと。あと、お医者様も呼ばないとですね」
「いや、そこまでは……」
「駄目です」
「っ、」
「お兄様は、お医者様じゃないんですよ。素人の判断で決めたら、何かあった時、私が後悔します。妹に後悔させたいんですか?」
「っ、悪い」
そこから、レアンドルは昔の兄に戻ってくれた。コンスタンスは、それに笑顔が増えた。
そうこうするうちにコンスタンスは、エディットの父親の異母弟のクリストフと婚約することになり、兄も婚約をして半年ほどで結婚した。
その前にアルレットが王太子と結婚していた。幸せいっぱいの姉を見てコンスタンスも嬉しそうにしていた。
レアンドルと結婚した令嬢は、コンスタンスにとってアルレットに負けず劣らずの義姉となった。
コンスタンスの両親は、オクレール侯爵家が居心地悪くなって戻って来なくなっていた間にどちらも愛人ができたようだ。
それぞれが、浮気相手との新しい人生を送る道を選んで、母は離婚してオクレール侯爵家から出て行った。
その時も、あっさりしたものだった。でも、コンスタンスはあっさりしていて何とも思わなかった。
オクレール侯爵は、新しい妻を迎えたが、すぐにレアンドルが侯爵を引き継いだことで、再婚相手は話が違うとばかりに大暴れして、出て行った。
その程度の愛しかなかったようだ。それにコンスタンスたちの父親は、呆然としていたが誰も慰めることはしなかった。
その後、現実を受け入れて父は田舎にひっそりと暮らすことにしてしまい、滅多なことで会うことはなかった。
エディットは、姉妹のようにコンスタンスを心配してくれ、婚約したばかりなのに婚約者よりコンスタンスを大事にするのにコンスタンスの方が気が気じゃなかった。
でも、子息は友達を大事にするエディットが、彼女らしいとして微笑ましそうに見ていた。
コンスタンスは、それにホッとしていた。また、コンスタンスを大事にしてくれようとして、壊れていくことになるのではないかと気が気ではなかったのだ。
でも、その辺のこともクリストフは、よくコンスタンスを見てくれていて、1番何かと傷ついていたのを見抜いてくれていた。
そのため、コンスタンスをひとりぼっちすることはなかった。エディットの時のように頼もしいまま、家族が増えても、侯爵家のようにバラバラになることはなかった。
そのおかげで、コンスタンスはクリストフと結婚してから幸せいっぱいの人生を送ることになり、笑顔がコンスタンスから消えることはなかった。
ドゥニーズは、勘当されてからも相変わらず、アルレットのせいにし続けて散々な人生を送ることになったようだが、彼女をよく知る者たちの誰もが迷惑をかけられることはなかった。
誰も、彼女の話を真に受けることがなかったこともあり、誰からも助けてもらえない方向に進み続けたことが原因だったようだが、エディットですら姉は変わらずに好きなようにしていると思うだけだった。
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