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しおりを挟む「あの、お姉様」
「どうしたの?」
「お兄様は、どうして婚約が駄目になってばかりいるの?」
コンスタンスは気になって、姉に聞いていた。どうにも、ドゥニーズのことがあぁなってから気になってしまったのだ。
「……知らないの?」
「今まで聞いたことないもの。誰も、私にしてくれなかったし」
アルレットは、やさぐれた兄のことを思い出して困った顔をした。
「最初の婚約の時のドゥニーズの本命の子息が、お兄様の親友だったのよ」
「……それで?」
「婚約したかったなら、ちゃんと言ってくれればよかったのにしなかったことで腹を立てて、ドゥニーズとの婚約を破棄にしたら、そんな令嬢とは婚約したくないって、別の令嬢とあっさり婚約したのよ」
「あっさり……?」
「あちらの本命は、そっちの令嬢だったのよ」
「……」
まんまと親友にはめられることになったレアンドルは、その後、元婚約者のドゥニーズがアルレットのせいだと責めたてるのもムカついているようだ。自分が本命と婚約できなかったのを全てなかったことにして、アルレットのせいにしたかったのだ。
その後、婚約する令嬢は、みんな一癖も二癖もある令嬢ばかりで、アルレットが前々から好きではない令嬢ばかりなこともあり、ちょっとでもちやほやそれると婚約していてもお構いなしに別の子息のところにいくようなのばかりが続いていて、そのせいで信用ならなくなってしまったようだ。自分と婚約した令嬢は、誰かと浮気しているのではないかと疑心暗鬼になってしまったようで、とやかく言えば気味悪がられることも増えて、益々イライラしていた。
親友はレアンドルを騙して本命の令嬢と婚約してから、何事もなかったように幸せそうにしていて、レアンドルはそれに1番イライラしていたようだ。
その上、ドゥニーズはあの調子だ。アルレットを馬鹿にしていて女性はそんなのばかりだと思って色眼鏡で見るようになってしまったのもあったようだ。何もかも、悪い方向に受け取るようになっていた。
そんなことを思っている子息と婚約していたいと思う令嬢が、どのくらいいるというのか。
それを聞いてコンスタンスとして、そんな婚約者は嫌だと思ってしまった。それも、自分のことに手一杯になりすぎて、一回り近く離れた妹にすら八つ当たりするような兄だ。嫌すぎる。
両親は、やさぐれていくレアンドルにどうにかして婚約者を見つけてやろうとして、真逆なことになっていき、そのうち自分たちの幸せのみを追いかけるようになっていた。
「お兄様って残念な人ね」
「え?」
「そんな風に見られていたら、側にいたいなんて思わないわ」
「……そうね」
レアンドルは家族すら、女性だからと見ているようでコンスタンスはそんな兄に近づくこともしなかった。
ただ、オクレール侯爵家がどうなるかが心配になったが、それだけだった。
父はコンスタンスを見ても早く帰って来ようとしなくなっていたし、母も侯爵家にいると息が詰まるかのようにしていた。
そのため、エディットがコンスタンスのことを彼女の家によく招いてくれた。
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