6 / 10
6
しおりを挟む「コンスタンス。それと、エディットも一緒なのね」
幼なじみの妹のことを覚えていたようだ。
「お姉様。お聞きしたいことがあります」
アルレットは何とも言えない顔をしたが、話すことはないと追い返すことはしなかった。
「あの、何があったかをご存じですよね?」
「……そうね。知っているわ。その前にエディット、入学おめでとう」
「っ、」
姉は、ずっと渡す機会を探していたのか。部屋の机の引き出しから、それを取り出してエディットに渡していた。
どうやら、ここに遊び姉が連れて来なかっただけで、妹のようにアルレットは前まで可愛がっていたようだ。
それを手にして、泣きそうな顔をエディットはしながら、お礼を言っていた。
「姉が、言っているのをどうして否定しないんですか?」
そこからエディットは、アルレットが姉を庇っているように思えたようだ。
「婚約が決まって、別れたと聞いていたのよ」
「え? 元々付き合っていたんですか?」
コンスタンスは、思わず会話にまじってしまった。エディットも、アルレットの言葉に驚いていた。
「えぇ。そちらと婚約したいと聞いていたわ。でも、お兄様と婚約することになったから、きっぱり諦めたって言っていたの。それが、あんなことを言うのだもの。物凄く驚いたわ」
「……パーティーに行っていないのに否定しなかったんですか?」
「ドゥニーズは、いるものと思っていたから。そうして、私のせいにして婚約を解消したかったのよ。でも、私のせいにしようとしているのに気づいたお兄様が激怒して、破棄になったのよ。そのせいで、そんな令嬢と婚約するのは面倒だと思われて本命と婚約できなくなった。それで、ずっと怒っているのよ」
そこから、逆恨みが生まれていったようだ。
その上、王太子との婚約でも競うことになったのに負けたと吹聴していたが、ドゥニーズは卑怯な手で負けたかのようにしていた。
でも、実際は……。
「王太子の婚約者の候補にも入ってもいないのよ」
「え?」
「……」
それをアルレットが広まらないようにしたようだ。王太子は、そんなことをするドゥニーズに本当のことを言おうとしていたが、止めたようだ。
「どうして?」
「私には、未だにドゥニーズが大事な友達だからよ」
「っ、」
そんな風に思っているアルレットの気持ちなどお構いなしにドゥニーズは、好き放題しているままのようだ。
実の妹や両親にすら、アルレットのことをボロクソに言い続けているのを信じているようだ。
「2人は友達になったのね」
「はい。他にも、お友達ができました」
「そう。良かったわ。ずっと、2人は気が合うと思っていたのよ」
アルレットは、ドゥニーズにあれこれ言われるのをそのままにするせいで、友達にもほっときすぎると言われているようだ。
エディットは、それを聞いて物凄く怒っていた。
「アルレット様」
「何かしら?」
「姉さんと友達なら、はっきり言ってください。こんなの本当の友達がすることじゃないです」
「……」
エディットの言葉にアルレットは、何とも言えない顔をした。
「アルレット様がしないなら、私が両親にします。みんなに話します」
「そんなことをしたら、婚約の話がなくなってしまうわ」
どうやら、婚約の話が持ち上がっているのをアルレットは知っているようだ。それを気にしているようだ。
「そんなことをしたのが、婚約してからバレた方がもっと大変になる。駄目です。そんなの。私が許せない」
「……」
「お姉様」
「……そうね。これからは、真実ではないことには否定するわ」
それは、ドゥニーズに言われなければ言わないと言っているようなものだが、コンスタンスは本当に悪く言いたくないのがわかってしまった。
それは、エディットにも伝わったようだ。
「なら、私も、そうします」
そう言って、意気込んで帰って行った日にドゥニーズは、いつものようにアルレットのことを家族の前で悪く言ったらしく、それにブチギレたエディットが事実じゃないと言ったことで、大変なことになったのはすぐだった。
165
お気に入りに追加
293
あなたにおすすめの小説

偽りの愛に終止符を
甘糖むい
恋愛
政略結婚をして3年。あらかじめ決められていた3年の間に子供が出来なければ離婚するという取り決めをしていたエリシアは、仕事で忙しいく言葉を殆ど交わすことなく離婚の日を迎えた。屋敷を追い出されてしまえば行くところなどない彼女だったがこれからについて話合うつもりでヴィンセントの元を訪れる。エリシアは何かが変わるかもしれないと一抹の期待を胸に抱いていたが、夫のヴィンセントは「好きにしろ」と一言だけ告げてエリシアを見ることなく彼女を追い出してしまう。

【完結】仕事を放棄した結果、私は幸せになれました。
キーノ
恋愛
わたくしは乙女ゲームの悪役令嬢みたいですわ。悪役令嬢に転生したと言った方がラノベあるある的に良いでしょうか。
ですが、ゲーム内でヒロイン達が語られる用な悪事を働いたことなどありません。王子に嫉妬? そのような無駄な事に時間をかまけている時間はわたくしにはありませんでしたのに。
だってわたくし、週4回は王太子妃教育に王妃教育、週3回で王妃様とのお茶会。お茶会や教育が終わったら王太子妃の公務、王子殿下がサボっているお陰で回ってくる公務に、王子の管轄する領の嘆願書の整頓やら収益やら税の計算やらで、わたくし、ちっとも自由時間がありませんでしたのよ。
こんなに忙しい私が、最後は冤罪にて処刑ですって? 学園にすら通えて無いのに、すべてのルートで私は処刑されてしまうと解った今、わたくしは全ての仕事を放棄して、冤罪で処刑されるその時まで、押しと穏やかに過ごしますわ。
※さくっと読める悪役令嬢モノです。
2月14~15日に全話、投稿完了。
感想、誤字、脱字など受け付けます。
沢山のエールにお気に入り登録、ありがとうございます。現在執筆中の新作の励みになります。初期作品のほうも見てもらえて感無量です!
恋愛23位にまで上げて頂き、感謝いたします。

私を売女と呼んだあなたの元に戻るはずありませんよね?
ミィタソ
恋愛
アインナーズ伯爵家のレイナは、幼い頃からリリアナ・バイスター伯爵令嬢に陰湿ないじめを受けていた。
レイナには、親同士が決めた婚約者――アインス・ガルタード侯爵家がいる。
アインスは、その艶やかな黒髪と怪しい色気を放つ紫色の瞳から、令嬢の間では惑わしのアインス様と呼ばれるほど人気があった。
ある日、パーティに参加したレイナが一人になると、子爵家や男爵家の令嬢を引き連れたリリアナが現れ、レイナを貶めるような酷い言葉をいくつも投げかける。
そして、事故に見せかけるようにドレスの裾を踏みつけられたレイナは、転んでしまう。
上まで避けたスカートからは、美しい肌が見える。
「売女め、婚約は破棄させてもらう!」

【改稿版】婚約破棄は私から
どくりんご
恋愛
ある日、婚約者である殿下が妹へ愛を語っている所を目撃したニナ。ここが乙女ゲームの世界であり、自分が悪役令嬢、妹がヒロインだということを知っていたけれど、好きな人が妹に愛を語る所を見ていると流石にショックを受けた。
乙女ゲームである死亡エンドは絶対に嫌だし、殿下から婚約破棄を告げられるのも嫌だ。そんな辛いことは耐えられない!
婚約破棄は私から!
※大幅な修正が入っています。登場人物の立ち位置変更など。
◆3/20 恋愛ランキング、人気ランキング7位
◆3/20 HOT6位
短編&拙い私の作品でここまでいけるなんて…!読んでくれた皆さん、感謝感激雨あられです〜!!(´;ω;`)

【完結】こんな所で言う事!?まぁいいですけどね。私はあなたに気持ちはありませんもの。
まりぃべる
恋愛
私はアイリーン=トゥブァルクと申します。お父様は辺境伯爵を賜っておりますわ。
私には、14歳の時に決められた、婚約者がおりますの。
お相手は、ガブリエル=ドミニク伯爵令息。彼も同じ歳ですわ。
けれど、彼に言われましたの。
「泥臭いお前とはこれ以上一緒に居たくない。婚約破棄だ!俺は、伯爵令息だぞ!ソニア男爵令嬢と結婚する!」
そうですか。男に二言はありませんね?
読んでいただけたら嬉しいです。

それは報われない恋のはずだった
ララ
恋愛
異母妹に全てを奪われた。‥‥ついには命までもーー。どうせ死ぬのなら最期くらい好きにしたっていいでしょう?
私には大好きな人がいる。幼いころの初恋。決して叶うことのない無謀な恋。
それはわかっていたから恐れ多くもこの気持ちを誰にも話すことはなかった。けれど‥‥死ぬと分かった今ならばもう何も怖いものなんてないわ。
忘れてくれたってかまわない。身勝手でしょう。でも許してね。これが最初で最後だから。あなたにこれ以上迷惑をかけることはないわ。
「幼き頃からあなたのことが好きでした。私の初恋です。本当に‥‥本当に大好きでした。ありがとう。そして‥‥さよなら。」
主人公 カミラ・フォーテール
異母妹 リリア・フォーテール

この国では魔力を譲渡できる
ととせ
恋愛
「シエラお姉様、わたしに魔力をくださいな」
無邪気な笑顔でそうおねだりするのは、腹違いの妹シャーリだ。
五歳で母を亡くしたシエラ・グラッド公爵令嬢は、義理の妹であるシャーリにねだられ魔力を譲渡してしまう。魔力を失ったシエラは周囲から「シエラの方が庶子では?」と疑いの目を向けられ、学園だけでなく社交会からも遠ざけられていた。婚約者のロルフ第二王子からも蔑まれる日々だが、公爵令嬢らしく堂々と生きていた。

殿下の愛しのハズレ姫 ~婚約解消後も、王子は愛する人を諦めない~
はづも
恋愛
「すまない。アメリ。婚約を解消してほしい」
伯爵令嬢アメリ・フローレインにそう告げるのは、この国の第一王子テオバルトだ。
しかし、そう言った彼はひどく悲し気で、アメリに「ごめん」と繰り返し謝って……。
ハズレ能力が原因で婚約解消された伯爵令嬢と、別の婚約者を探すよう王に命じられても諦めることができなかった王子のお話。
全6話です。
このお話は小説家になろう、アルファポリスに掲載されています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる