兄が、姉の幼なじみと婚約破棄してから、家族がバラバラになったように見えていましたが、真実を知ると見え方が変わってきました

珠宮さくら

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それからしばらくしてコンスタンスが、学園に通うようになるまでになった。

学園に通うまでになって喜んでくれたのは、アルレットと使用人たちだった。そして、第2の兄のようになった姉の婚約者の王太子が、兄の代わりのようにしてくれていた。


「コンスタンス。入学おめでとう」
「ありがとうございます」


両親やレアンドルは、そういえばもうそんな時期かと思う程度で、王太子のようにわざわざ忙しい時間をやりくりして会いに来てくれて話してくれることはなかった。

王太子が、オクレール侯爵家にいるのに驚いて何があったかと両親とレアンドルがアルレットや使用人に聞いているのをコンスタンスや王太子、アルレットと使用人たちは呆れた顔と目で見ていた。


「そ、そうか。コンスタンスも、入学か」
「アルレットったら、王太子がお見えになるなら、言っておいてよね」
「お知らせしました。何なら、プレゼントのことも相談しましたが、適当に決めておけとおっしゃったのは、お2人ですよ。私は、どうせ、そう言うと思って聞かずにいましたが、殿下が被るといけないからと気を遣ってくださったのに」
「「っ、」」
「それとお兄様にも聞こうとしましたけど、話しかけるなと言われたのでやめましたけど」
「っ、そんな大事なことなら、言ってくれ」
「大事? 今の今まで忘れていたのに?」
「っ!?」


そんなやり取りをアルレットが家族としているのをコンスタンスは聞いていなかった。

その間、コンスタンスは王太子が入学祝いにくれた物を開けるのに忙しくしていた。


「本」
「おとぎ話が好きだと教えてくれただろ? これは、外国語で書かれているから、勉強しながら読むといい」
「外国語。読めるかな」
「難しければ、聞いてくれていいぞ。アルレットも、堪能だ」


王太子は、それを見越して選んでくれたようだ。コンスタンスは、嬉しそうにして笑顔になった。

その後、アルレットもくれたものを開けている間に姉が戻って来て、それにお礼を言ったりしたが、しばらくして両親や兄も入学祝いをくれた。

それは、何年も放置していた家族からのものでしかなかった。コンスタンスが、今何を好きなのかを全く知らないものだった。

それでも、渡したからいいだろうとする両親とあまり喜んでいないように見えるコンスタンスにレアンドルは眉を顰めていた。


「殿下の時は、あんなに喜んでいただろ?」
「……」


兄は、喜び方が気に入らなかったようで、コンスタンスはげんなりしてしまった。

するとそこに疲れた表情をしたアルレットが帰って来て、コンスタンスの手元を見た。


「お兄様。コンスタンスが、何が好きなのかを知らないんですね」
「は? 好きなものだろ?」
「……何年前の話をしてるんですか。今のコンスタンスの好みを両親と同じで知らなさすぎでしょ」
「っ、」


レアンドルは、それを聞いてハッとした顔をしていた。使用人たちも冷めた表情をしていて、コンスタンスが喜ばないのを咎めるようなことをしていたのだ。バツが悪くなったのか。すぐにいなくなってしまった。

これなら、申し訳ないが入学祝いのプレゼントはなくてもよかったとコンスタンスは思わずにいられなかった。

特に両親のプレゼントは、流行り物だったようだが、それぞれが選んだものというより、入学祝いに良さげなものを見繕っただけのようだ。

それに比べれば、コンスタンスの好きだったものを選んだのだから、まだマシなのかもしれないが、その後の喜び方が気に入らないかのようにしているところも含めると両親よりも酷いとしか思えなかった。

そんなことがあって、コンスタンスの学園生活が始まった。始まり方が複雑すぎて、げんなりしてしまった。

そんなことの後で、兄たちに何があったかを知ることになったのだが、それも酷い始まり方だった。

ドゥニーズの妹がコンスタンスに会うなり、怒鳴り散らして来たことから始まったのだ。いきなり初対面で怒鳴られるのは初めてだった。


「あんたが、性悪女の妹ね!」
「?」


いきなり自己紹介もなく、その令嬢はそんなことを言って来た。色んな経験をしてきたが、そんな風に登場したのは初めてできょとんとしてしまった。

何を言いたいのかとコンスタンスは、その令嬢が怒鳴り散らすのを黙って聞いていたのは、怒鳴り散らす令嬢が、誰かに似ている気がしてそれが気になっていたのが大きかった。

そうでなければ、言い返すことなく立ち去っている。関わるのが面倒なタイプだと思っていたことだろう。


「ちょっと、あなたの知り合い?」
「ううん。初めて会った、はず」


怒鳴り散らすのをぼんやりと聞いていたコンスタンスは、入学してできたばかりの友達が割って入ってくれた。

どうやら、言われ放題で言い返せないでいると思っているようだが、それができないわけでなくて、する気がないだけなことに気づいていないようだ。


「そうよ! ずっと会えたら、言ってやろうと思っていたのよ!」


積年の恨みとばかりに怒鳴るコンスタンスは、何とも言えない顔をし始めていた。だが、性悪女というのがコンスタンスは引っかかってならなかった。


「ねぇ、性悪女って、私の姉のことを言っているの?」
「そうよ!」
「……」


コンスタンスは、なぜ姉のことを性悪女と言うのかがわからなかった。

どうして、そんなことを言うのかと問えば、ドゥニーズの妹は……。


「白々しいこと言わないで! あなただって、婚約破棄した理由くらい知ってるでしょ!!」
「ううん。知らない」
「コンスタンス。それ、私でも知ってるわよ。というか、誰もが知ってると思うわ」
「そうなの?」


友達にもあり得ないかのように言われたが、コンスタンスは……。


「興味なかったから聞いてない」
「「……」」


そう言うと友達と怒鳴り散らしていた令嬢が顔を見合わせて、コンスタンスを見た。本当に興味なさそうに見えたのだろう。


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