私は途中で仮装をやめましたが、周りはハロウィンが好きで毎日仮装を続けていると思ったら……?

珠宮さくら

文字の大きさ
上 下
44 / 46

44

しおりを挟む

まぁ、付き合い始めるまでも色々あったし、付き合ってからもが色々あったが、その辺のことをユズカはユーフォルに話してはいないし、周りにもしたことはない。

そんなことをしていれば、物凄く落ち込むことになったのはユズカではなくて、ユーフォルだったはずだ。


(あの頃の私の勘違いは、酷いなんて言葉で片付けられるものではなかったのよね)


それも、ユズカにとってはいい思い出となって、数十年が過ぎていた。


「母上~」
「は~い」


ユズカは、ユーフォルと結婚して、子供たちの母親となって、毎日子育てに奮闘していた。

ユーフォルは、愛妻家で子煩悩として有名となっていた。子供たちが、ユズカの考えたお菓子が大好きで思いついて好評価になるとそればかりをせがまれるのだ。

子供たちだけでなくて、その友達も期待した目でユズカを見ていて、その子供の母親は我が子が喜ぶのを見て、こっそりとユズカにお菓子の作り方を聞いたりしていた。

それだけでなくて、我が子の誕生日にもなると特別なケーキを毎回作っていて、それを羨む子供の友達は、ケーキやお菓子はユズカの考えたものがいいとまで言っていた。


(お菓子関係の部署でも、私はやってられたかも。でも、悪戯の方のお菓子は、未だに苦手だけど)


見た目だけが、キモ可愛いものだが味は美味しいものだった。







社長のジュラルも、ユーフォルに負けず劣らずな愛妻家だった。

ユズカがデザインしたドレスが素敵だと噂にのぼる前から、記念日ごとにオーダーメイドを頼めないかとこっそりとユズカに頼みに来るほどだった。

もっとも、こっそりと言っても彼は存在感を消そうとしても消しきれないところがあって、ユズカにこっそりと頼みに来ようとするのをユーフォルは何かと察知して、2人っきりで会わせないようにしていた。

それは、ユズカが結婚していても仕事を続けていた頃の話だ。子供が生まれてからは、子育てしつつできる範囲の仕事をしていたが、それは会社に勤めながらではなくなっていた。


「ユーフォル、またいるのか。自分の仕事をしろ」
「あなたに言われたくありません」


(会うたび、一触即発になるのは、いつものことだけど、それで怯えて他の人たちが仕事にならなくなるから、やめてほしいんだけどな)


ユズカは、そんな中でも平然としていたが、少し離れたところでも、怯えて仕事にならない者たちが見えていた。それは少なくなかった。慣れるなんて無理なようだ。

そんな2人の不毛な争いにも慣れたもので、そろそろ社長が来そうだとなるとユズカもデザインを用意していたり、社長の話を聞いて、すぐにデザインを描けるまでになるのも、そんな2人が騒ぐせいに他ならなかった。

他の人たちのためにも、不毛な争いをさっさと終わらせることでしか、平和にならないことを悟ったとも言えなくもない。


(まさか、あれで能力が更に向上するとは思わなかったわ。短い時間を無駄にせずに効率よく仕事ができるようになったのも、あの2人が言い争うのを見ていたからこそなのよね。言葉より手を動かした方が早く解決するなんて、誰も思わないわよね)


そんなことを思っていることも、男性たちは全く気づいていなかったと思う。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

【完結】私の望み通り婚約を解消しようと言うけど、そもそも半年間も嫌だと言い続けたのは貴方でしょう?〜初恋は終わりました。

るんた
恋愛
「君の望み通り、君との婚約解消を受け入れるよ」  色とりどりの春の花が咲き誇る我が伯爵家の庭園で、沈痛な面持ちで目の前に座る男の言葉を、私は内心冷ややかに受け止める。  ……ほんとに屑だわ。 結果はうまくいかないけど、初恋と学園生活をそれなりに真面目にがんばる主人公のお話です。 彼はイケメンだけど、あれ?何か残念だな……。という感じを目指してます。そう思っていただけたら嬉しいです。 彼女視点(side A)と彼視点(side J)を交互にあげていきます。

将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです

きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」 5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。 その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

とまどいの花嫁は、夫から逃げられない

椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ 初夜、夫は愛人の家へと行った。 戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。 「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」 と言い置いて。 やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に 彼女は強い違和感を感じる。 夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り 突然彼女を溺愛し始めたからだ ______________________ ✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定) ✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです ✴︎なろうさんにも投稿しています 私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?

水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。 日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。 そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。 一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。 ◇小説家になろうにも掲載中です! ◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています

【完結】私、殺されちゃったの? 婚約者に懸想した王女に殺された侯爵令嬢は巻き戻った世界で殺されないように策を練る

金峯蓮華
恋愛
侯爵令嬢のベルティーユは婚約者に懸想した王女に嫌がらせをされたあげく殺された。 ちょっと待ってよ。なんで私が殺されなきゃならないの? お父様、ジェフリー様、私は死にたくないから婚約を解消してって言ったよね。 ジェフリー様、必ず守るから少し待ってほしいって言ったよね。 少し待っている間に殺されちゃったじゃないの。 どうしてくれるのよ。 ちょっと神様! やり直させなさいよ! 何で私が殺されなきゃならないのよ! 腹立つわ〜。 舞台は独自の世界です。 ご都合主義です。 緩いお話なので気楽にお読みいただけると嬉しいです。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

処理中です...