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しおりを挟む(ジュラル視点)
父を超えるために別の世界で、着々と頑張っていたが、最初は物騒なことで勝敗を決めるために必要な仲間を増やそうとしていたにすぎなかった。
人間で行き来できる者たちが現れたのだ。それがユズカの祖父母だった。
ジュラルは、魔王の息子ということもあり、それを昨日のことのように記憶していた。
そして、その2人から生まれた子が伴侶を持ってからも、ここを訪れていた。そんなことをして、無傷な人間など後にも先にもジュラルは会ったことがなかった。
そんな夫妻からユズカは生まれた。ここの世界から、ハロウィンを満喫するためのツアーが組まれるようになったのも、ユズカの両親がその穴を安定させる能力を持っていたからだった。
それを悪用しようと思えばできそうだが、ちょっとでも人間たちの住む世界を酷くさせようと思うだけで、あちらに行けなくなるのだ。
行けなくなる者は邪な思いを持つ者として、元いたところにすぐさま戻されることにはならなかった。更生させるまでは、戻されることはなかった。
そんな彼女が成長して、就職しようとしていることを知って、他に取られないように動いたが、ユーフォルすらジュラルが前々から注目していたとは知らなかったはずだ。人間として珍しいからだとでも思われていたに違いない。
ユズカの祖父母によって、父と全面戦争してでも勝ち残る気でいたのが、変化して争いになっても戦争に誰も巻き込まないように終結させることに頭を悩ますことになるとは、ジュラルも思いもしなかった。
(変われば変わるものだな)
ジュラルは、生まれた時から魔王の息子でしかなかったが、いつの間にか社長として有名になっていたが、それでも魔王の息子と思われることで気絶されたり、泣かれたり、恐れおののかれたりして来た。
でも、ユズカはそんな連中のような態度を取ることはなかった。
それは、嬉しい驚きだったが、それ以上にユーフォルが彼女に惚れたことに驚かされたが、並び立つ姿を見ているとすぐにでも慣れそうだと思えた。
そんなユズカが高熱で生死の境を彷徨った時は、気が気ではなかった。ユーフォルも心配していたが、ジュラルもしていたし、ユズカをよく知る者たちも心配して、回復を祈っていた。
ただの人間の無事を種族を超えて祈ることにこれがユズカという人間の影響なのだと思った。
素晴らしい才能だとジュラルは思った。それだけでなく、ユズカが魔王である父との関係の修復にまで貢献してくれるとは、この時は思いもしなかった。
それこそ、全面戦争のために仲間を増やそうとしていたことが嘘のように他の誰かを巻き込むことなく自分でどうにか終わらせようとすることにもジュラルは自分のことなのに驚かされるばかりだった。
(何はともあれ、ユーフォルにはシャンとしてもらわなくては。あんな情けない姿ばかり見せられたら、ユズカに幻滅されるのは時間の問題になるはずだ)
ジュラルは、そんなことをよく思ったが、それは杞憂でしかなかったようだ。
ユズカは、その程度でユーフォルにげんめすることはなかった。
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