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しおりを挟むユーフォルは、色んなことを話した中でも、自分が本物の吸血鬼だとわかってしまったことで、ユズカが何より幻滅したんだと思って凹んでしまっていた。
高熱が続いて、やっと良くなってからは、ユーフォルと恋人らしいことどころか。仕事に没頭しようとしているユズカにそんなことを思い始めていた。
だが、ユズカは生まれ育ったところで見た光景に触発されて、仕事に没頭しているだけにすぎなかった。
(あの笑顔が、ずっと続くといいな。そのために営業を頑張らないと)
ユーフォルと恋人同士になれたことも、すっかり忘れてしまっていた。
「あの2人、どうなってるんだ?」
「そんなこと、私に聞かないでよ」
ソカムやイベリスたちは、こそこそとユズカたちを見ては話していたが、それをユズカが耳にすることはなかった。
ユーフォルは、いきいきと働くユズカに恋人になったのだから構ってくれとか、気にかけてほしいなんて言える男ではなかった。
それこそ、吸血鬼のユーフォルが女性にそんなことをわざわざ口にしたこともなかった。特に人間のユズカに魅力が全く通じていないことを流石と思うべきか。悲しんでいいのかが、わからなくなってすらいた。
「でも、このままだとユーフォルが、干からびそうだね」
モルセラは、顔色がよくないユーフォルにそんなことを言っていて、それにはその話をしていた面々が激しく同意していた。
だから、一番忙しい時期だ。2人に構っていられるわけもなく、気にしながらも見守ることしかできなかった。
ユズカとユーフォルのどちらも余裕がなくて、すれ違うことになった。すれ違いというか、勘違いが物凄いことになっているというべきか。
10月なんて関係なく、年中営業部は何かと忙しいところだとユズカがわかるのも、それからしばらくのことだった。
(お、終りが見えない忙しさ。ここに新人が長くいないのって、疲れ果てるからなのかも)
色んな世界との交流するのにも、一役買っているようだ。それを売り込むのが、営業部だ。ユズカは、相手の求めることに毎回全力で対応しているせいで、再びユズカは体調不良になってしまったのだ。
やはりただの人間には厳しい部署だったようで、寝不足が続き、顔色が悪いまま働き続けることも多くなってしまい、ユーフォルだけでなくて、他からもユズカが早死しかねないとして、他の部署に異動することになるのも、それから大して経ってはいなかった。
(私がただの人間だってことを痛感させられるな。みんな、体力がお化けすぎる。……これが、ハロウィン近くが一番忙しいって言っても、他の月だって忙しいのにかわりがないままなんて、体力が持つわけがない)
体力不良を気合だけで、乗り切ろうと何度もして限界なんてとっくに越えていたこともあり、部署の異動について、反発することはなかった。
それどころか。どこか、ホッとすらしていた。
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