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しおりを挟む「あの、ずっとってことは、実家の方には帰って居ないんですか?」
魔界の方を実家と表現したのは、ユズカが最初で最後だろう。まぁ、確かにジュラルの生まれ育ったのは、そちらだし帰るべき家もあるのだから、間違ってはいないのだが。
そこに浮かれきっているユーフォルが突っ込むことをしなかったことで、話はそのまま続いた。
ここに他の者がいたら、突っ込まずにはいられないものだったが、そうはならなかったのだ。この2人は、こういうところでもお似合いだと言えるのではなかろうか。
「戻ったことはありません」
「そうなんですね」
魔王である社長の父親、つまり魔王は息子であるジュラルが戻って来るのを心待ちにしているが、この世界が面白くなりすぎて戻る気は全くなくなってしまっていて、あちらで頭を抱えているようだ。
「それこそ、それが原因で戦争になりかけたことも、一度や二度ではなかったんですけど」
「へ? せ、戦争?? 何でそんなことに……?」
「魔王とその息子ですから、その辺は仕方がありません」
(そういうものなんだ。わからないけど)
ユズカは、首を傾げつつ深く追求することはなかった。
それこそ、この世界で何かすれば、全面戦争になるだけだ。そうなれば、勝ち目は社長の方にあるようだ。それだけ、会社が大きくなっているようだもある。この会社が無くなったら困るものが多くできたことで、味方してくれる者がたくさんいることで、あちらが負ける状況になるようだ。
そこまで、会社が無くなるのを惜しむ者が増えたようだ。
そのため、社長の父親である魔王は何もできないようで、それを喜んでいいのか。好きにさせすぎたと嘆いていいのかが、魔王はわからなくなっているようだが、そんなことまでユズカにわかるわけがない。
(魔王の息子だから、みんな社長を怖がってたのか。……怖い、かな? まぁ、凄い存在感と圧は感じるけど)
ユズカは、そんなことにようやく行き着いて遠い目をしてしまった。ユズカは、怖いと思ったことがない。ただ、社長だと言われて、びっくりしたが、それが魔王の息子だと聞いても、びっくりしすぎているというか。現実離れしすぎたことに驚ろくというより、逆に冷静になってしまうのだから不思議だ。
きっと、ユズカの頭のキャパをオーバーしすぎて、オーバーヒートしていたからだろう。
しかも、みんなが仮装しているわけではなく、この世界で人間は物凄く貴重だということを知ったことも大きかった。
(人間は、ほぼ私だけ。そんなこと、知らなかった)
「ユズカ?」
それを知った時に倒れることになった。
「ユズカ!?」
ユーフォルが慌てて身体を支えた時にその異常な熱さにぎょっとして、大慌てすることになった。
あまりの衝撃に熱がじわじわと上がっていたが、限界を突破してぶっ倒れてしまい、ユーフォルは周りに見せたことない姿を再びさらすことになるほど慌てさせることになったが、仕方がないことだと思う。
なにせユズカは、人間なのだ。
「ユズカ!!」
仮装していると思っていたら、仮装ではなかったのだ。もはや何に驚いていいのかがわからなくなっていた。
(おばあちゃん。肝心なこと教えておいてよ。……いや、私がちゃんと見てなかったせいか)
何にせよ。ユズカは、それからしばらく熱を出して寝込むことになったのは言うまでもない。
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