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しおりを挟む食屍鬼の秘書課の美人女性のアジュガ・トゥイニーが、ユーフォルに恋しているのは、社内では有名な話でユズカでも聞いたことがあった。それも、一度や二度ではない。
(並ぶと美男美女なんだよね。噂になるのもわかるな。お似合いだもの)
ユズカは、その噂を聞いた時にそんなことを思ったのだが、それがいつの間にやらおかしな方向に向かったようだ。
しばらくして、彼女がユズカを敵視しているとわかり、色んな方面から気をつけるように言われたのだ。
アゲラタムは、相変わらずのオネェ言葉で念入りに気を付けるようにユズカに言ってきた。
「ユズカ。気を付けるのよ~」
「はぁ、あの、それ、誤解だと思うんですが……」
(うん。誤解しかないとこなんだけどな)
特に研修の時にお世話になった面々からは、わざわざ会いにまで来てくれたかと思えば、そんなことを言われて、部署の面々にも釘をさしていくのだ。
部署の面々も、ユーフォル以外がそれに大きく頷いたり、その通りだと思っているようで意気投合しているのを見てユズカは苦笑せずにはいられなかった。
(わざわざ、申し訳ないな。でも、絶対に誤解しかないと思うんだよね。私は、秘書の人とは話したことすらないし、何より私みたいなのに太刀打ちできないくらい美人な人が、私をどうこうしようなんてそもそも思わないと思うんだけど……)
なぜ、敵視されるのか。その理由がわからずに困っていた。だからといって本人に聞くのも変な話でしかない。そんなことをしたら、益々怒らせる気がする。いくら鈍感なユズカでも、それで怒らないわけがない。
食屍鬼には珍しいべジタリアンという仮装をしていることまでは、ユズカは知っていた。
ベジタリアンでなければ、ここで雇われて居なかったらしいということも聞いたことがある。問題は食屍鬼が何の仮装なのかをユズカがよくわかっていなかったことも大きかったりするが。
(漢字から推察するにそういうことなのかな? でも、何でそんな仮装にしたんだろ? よくわからないな。美人なら、もっと似合う仮装なんていくらでもありそうなのに)
未だに仮装だと思っているユズカは、その辺が不思議でならなかった。
ベジタリアンだからといって、アジュガと2人っきりにはならないようにとユーフォル以外の営業部のメンバーからは何度となく、ユズカは耳にタコができるんじゃないかというくらいに言われている。
ユーフォルとは、相変わらず話していないが、食屍鬼の話が出始めてからは、目が合うようになってはきていた。それも、なぜなのかがわからないままだが。
「いいかい? 絶対にしばらくは誰かと行動するんだ。お前たちも、ユズカから目を離すんじゃないよ。いいね?」
「もちろんよ!」
モルセラの言葉にユズカ以外が大きく頷いていた。あの、ユーフォルまでも、いつの間にやら、参加していた。
(そこまですることなのかな? よくわからないや)
ユズカは、危機感なんて全くなかった。
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