26 / 46
26
しおりを挟むユーフォルが色んな葛藤を抱えたまま、誰にも見つかることなく気配もなく、そっと姿を消した後に入れ替わりのように部署の面々が戻って来た。
ソカムやイベリス、モルセラがやって来て、とんでもないことをユズカがしたことを目撃され、それが何を意味しているかをユズカが知ったのは、この後のことだった。
ユズカが土下座する勢いでユーパトさんに謝罪したのは、すぐだった。
「すみませんでした!」
「いえ、そうですよね。あなたは、人間ですもんね」
「??」
(そこで、何で人間が関係するの??)
ユズカは、ユーパトが遠い目でそんなことを言う意味が全くわからなかった。そこに割って入るようにイベリスが、大きめの声を出した。
「とにかく、これで誤解はとけたわね!」
恋愛対象として全く見ていないと言わんばかりに平謝りされたミイラ男のユーパトは、自嘲気味にぼやいていたが、ソカムは何も言わずに肩をポンポンと叩いて側に立っていた。
それをユズカは不思議そうに見ていたが、イベリスが誤解が解けてよかったと笑っていたのを見て、ユズカもそれには激しく同意するように頷いていた。
(身内しかいちゃ駄目だなんて知らなかったな。……ってことは、身内がいないと病院で診てもらうしかないってことかな? ……なんか、学校でも教えてもらえてないことで、私、知らずに色々とやらかしていた気がする。もしかして、友達が中々できなかったのって、そのせいだったりして……)
そこに行き着いたユズカ。そんなわけないかとすぐに考えるのをやめたが、それが当たらずとも遠からずだったことを知ることはなかった。
そのせいで、ユズカは聞き捨てならない言葉を聞いたはずだが、それについて深く聞けずに終わった。
それこそ、人間うんねんを掘り下げようとしたところで、ここにいる者たちが違う方向に話を反らせるのは目に見えてはいるが。
まさか、本人が人間という存在が、この世界でいかに貴重で珍しい存在なのかを全く知らずに人間がほぼ自分だけなことに気づいていないとは思うまい。
ここに来て間もないのならば、それも仕方がないと思われるところだが、ユズカは一回りもここで生活して、学校まで卒業して、就職までしたのだ。知らないなんて言ったところで、本気にされることはないだろう。
ここにいる者たちも、誤解が解けたことにホッとしていて、さらなるとんでもない誤解が潜んでいるとは誰も思ってもみなかった。
ユズカ以上にソカムが、ユーパトのことを言葉ではなくて、態度で必死になって慰める姿に純情を弄んだ悪女のようだと思えて、胸がズキズキと傷んで仕方がなかった。
(これは、ユーパトさんじゃなきゃ、こんなあっさり許されないことよね……?)
「おや? ユーフォルは、直帰したのかい?」
「あら、いつの間に?」
ボードに少し前まで、ここに戻るとあったはずが、いつの間にか直帰とあって、モルセラとイベリスが首を傾げた。
(あれ? さっきまで、直帰にはなってなかった気がするけど……。どうしたんだろ?)
まさか、誤解されてしまっているとも知らず、ユズカは見間違いかなと首を傾げていた。
20
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された地味姫令嬢は獣人騎士団のブラッシング係に任命される
安眠にどね
恋愛
社交界で『地味姫』と嘲笑されている主人公、オルテシア・ケルンベルマは、ある日婚約破棄をされたことによって前世の記憶を取り戻す。
婚約破棄をされた直後、王城内で一匹の虎に出会う。婚約破棄と前世の記憶と取り戻すという二つのショックで呆然としていたオルテシアは、虎の求めるままブラッシングをしていた。その虎は、実は獣人が獣の姿になった状態だったのだ。虎の獣人であるアルディ・ザルミールに気に入られて、オルテシアは獣人が多く所属する第二騎士団のブラッシング係として働くことになり――!?
【第16回恋愛小説大賞 奨励賞受賞。ありがとうございました!】
「お前を愛するつもりはない」な仮面の騎士様と結婚しました~でも白い結婚のはずなのに溺愛してきます!~
卯月ミント
恋愛
「お前を愛するつもりはない」
絵を描くのが趣味の侯爵令嬢ソールーナは、仮面の英雄騎士リュクレスと結婚した。
だが初夜で「お前を愛するつもりはない」なんて言われてしまい……。
ソールーナだって好きでもないのにした結婚である。二人はお互いカタチだけの夫婦となろう、とその夜は取り決めたのだが。
なのに「キスしないと出られない部屋」に閉じ込められて!?
「目を閉じてくれるか?」「えっ?」「仮面とるから……」
書き溜めがある内は、1日1~話更新します
それ以降の更新は、ある程度書き溜めてからの投稿となります
*仮面の俺様ナルシスト騎士×絵描き熱中令嬢の溺愛ラブコメです。
*ゆるふわ異世界ファンタジー設定です。
*コメディ強めです。
*hotランキング14位行きました!お読みいただき&お気に入り登録していただきまして、本当にありがとうございます!
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない
結城芙由奈
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒―
私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。
「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」
その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。
※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています
死に戻りの魔女は溺愛幼女に生まれ変わります
みおな
恋愛
「灰色の魔女め!」
私を睨みつける婚約者に、心が絶望感で塗りつぶされていきます。
聖女である妹が自分には相応しい?なら、どうして婚約解消を申し込んでくださらなかったのですか?
私だってわかっています。妹の方が優れている。妹の方が愛らしい。
だから、そうおっしゃってくだされば、婚約者の座などいつでもおりましたのに。
こんな公衆の面前で婚約破棄をされた娘など、父もきっと切り捨てるでしょう。
私は誰にも愛されていないのだから。
なら、せめて、最後くらい自分のために舞台を飾りましょう。
灰色の魔女の死という、極上の舞台をー
追放された最強賢者は悠々自適に暮らしたい
桐山じゃろ
ファンタジー
魔王討伐を成し遂げた魔法使いのエレルは、勇者たちに裏切られて暗殺されかけるも、さくっと逃げおおせる。魔法レベル1のエレルだが、その魔法と魔力は単独で魔王を倒せるほど強力なものだったのだ。幼い頃には親に売られ、どこへ行っても「貧民出身」「魔法レベル1」と虐げられてきたエレルは、人間という生き物に嫌気が差した。「もう人間と関わるのは面倒だ」。森で一人でひっそり暮らそうとしたエレルだったが、成り行きで狐に絆され姫を助け、更には快適な生活のために行ったことが切っ掛けで、その他色々が勝手に集まってくる。その上、国がエレルのことを探し出そうとしている。果たしてエレルは思い描いた悠々自適な生活を手に入れることができるのか。※小説家になろう、カクヨムでも掲載しています
【完結】引きこもり令嬢は迷い込んできた猫達を愛でることにしました
かな
恋愛
乙女ゲームのモブですらない公爵令嬢に転生してしまった主人公は訳あって絶賛引きこもり中!
そんな主人公の生活はとある2匹の猫を保護したことによって一変してしまい……?
可愛い猫達を可愛がっていたら、とんでもないことに巻き込まれてしまった主人公の無自覚無双の幕開けです!
そしていつのまにか溺愛ルートにまで突入していて……!?
イケメンからの溺愛なんて、元引きこもりの私には刺激が強すぎます!!
毎日17時と19時に更新します。
全12話完結+番外編
「小説家になろう」でも掲載しています。
【完結】番(つがい)でした ~美しき竜人の王様の元を去った番の私が、再び彼に囚われるまでのお話~
tea
恋愛
かつて私を妻として番として乞い願ってくれたのは、宝石の様に美しい青い目をし冒険者に扮した、美しき竜人の王様でした。
番に選ばれたものの、一度は辛くて彼の元を去ったレーアが、番であるエーヴェルトラーシュと再び結ばれるまでのお話です。
ヒーローは普段穏やかですが、スイッチ入るとややドS。
そして安定のヤンデレさん☆
ちょっぴり切ない、でもちょっとした剣と魔法の冒険ありの(私とヒロイン的には)ハッピーエンド(執着心むき出しのヒーローに囚われてしまったので、見ようによってはメリバ?)のお話です。
別サイトに公開済の小説を編集し直して掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる