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ユーフォルが色んな葛藤を抱えたまま、誰にも見つかることなく気配もなく、そっと姿を消した後に入れ替わりのように部署の面々が戻って来た。

ソカムやイベリス、モルセラがやって来て、とんでもないことをユズカがしたことを目撃され、それが何を意味しているかをユズカが知ったのは、この後のことだった。

ユズカが土下座する勢いでユーパトさんに謝罪したのは、すぐだった。


「すみませんでした!」
「いえ、そうですよね。あなたは、人間ですもんね」
「??」


(そこで、何で人間が関係するの??)


ユズカは、ユーパトが遠い目でそんなことを言う意味が全くわからなかった。そこに割って入るようにイベリスが、大きめの声を出した。


「とにかく、これで誤解はとけたわね!」


恋愛対象として全く見ていないと言わんばかりに平謝りされたミイラ男のユーパトは、自嘲気味にぼやいていたが、ソカムは何も言わずに肩をポンポンと叩いて側に立っていた。

それをユズカは不思議そうに見ていたが、イベリスが誤解が解けてよかったと笑っていたのを見て、ユズカもそれには激しく同意するように頷いていた。


(身内しかいちゃ駄目だなんて知らなかったな。……ってことは、身内がいないと病院で診てもらうしかないってことかな? ……なんか、学校でも教えてもらえてないことで、私、知らずに色々とやらかしていた気がする。もしかして、友達が中々できなかったのって、そのせいだったりして……)


そこに行き着いたユズカ。そんなわけないかとすぐに考えるのをやめたが、それが当たらずとも遠からずだったことを知ることはなかった。

そのせいで、ユズカは聞き捨てならない言葉を聞いたはずだが、それについて深く聞けずに終わった。

それこそ、人間うんねんを掘り下げようとしたところで、ここにいる者たちが違う方向に話を反らせるのは目に見えてはいるが。

まさか、本人が人間という存在が、この世界でいかに貴重で珍しい存在なのかを全く知らずに人間がほぼ自分だけなことに気づいていないとは思うまい。

ここに来て間もないのならば、それも仕方がないと思われるところだが、ユズカは一回りもここで生活して、学校まで卒業して、就職までしたのだ。知らないなんて言ったところで、本気にされることはないだろう。

ここにいる者たちも、誤解が解けたことにホッとしていて、さらなるとんでもない誤解が潜んでいるとは誰も思ってもみなかった。

ユズカ以上にソカムが、ユーパトのことを言葉ではなくて、態度で必死になって慰める姿に純情を弄んだ悪女のようだと思えて、胸がズキズキと傷んで仕方がなかった。


(これは、ユーパトさんじゃなきゃ、こんなあっさり許されないことよね……?)






「おや? ユーフォルは、直帰したのかい?」
「あら、いつの間に?」


ボードに少し前まで、ここに戻るとあったはずが、いつの間にか直帰とあって、モルセラとイベリスが首を傾げた。


(あれ? さっきまで、直帰にはなってなかった気がするけど……。どうしたんだろ?)


まさか、誤解されてしまっているとも知らず、ユズカは見間違いかなと首を傾げていた。


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