私は途中で仮装をやめましたが、周りはハロウィンが好きで毎日仮装を続けていると思ったら……?

珠宮さくら

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ケーキセットを食べ比べつつ、シレネが買った戦利品の話から話題は、テーブルの端に置いたユズカの手帳へと移った。

そこにスケジュールを書き込んでは、面接までたどり着けずにため息ばかりついているユズカのことをシレネは誰よりも見ていた。

ユズカも、シレネと出かけるスケジュールを書き込むのなら楽しくてワクワクするが、そうでないことばかりとなっていて、手帳をテーブルなり、机なりと見えるところについついおいてしまっているのだ。それで、誰かの目につかないわけがない。


「そろそろ、例の会社の面接だよね? 緊張してる?」
「緊張というか。何で、私が面接まで通ったのかなって考えてた」
「あー、この間のなら、気にしちゃ駄目よ。あんなのただの僻みじゃない」
「……」


この間とは、どこから聞いたのか面接まで通らなかった大学生に待ち伏せされてしまい、ユズカは講義を終えて教室から出るやいなや「何で、あんたみたいなのに私が負けたのよ!」と初めて会った女子にいきなり嫌味を言われてしまったのだ。

しかも、名前も知らない彼女のみならず、他にも同様に面識もないのにユズカは罵詈雑言をあびせられることになったのだ。


(え? 何で? 私が面接受けるのを知ってるの? 私、別に言いふらしてないのに)


数時間の間に複数から、名前も知らない相手に何でか知らないが、ユズカが面接を受けることを知っていたのだ。

それが不思議でならなかった。ユズカは、それを気持ち悪いとは思わなかった。ただ、疑問ばかりが頭をしめることになった。そして、ちょっぴり怖いとも思った。

ユズカとしては、自分でもなぜ面接を受けられるのかと思っているくらいで、受けるのだと吹聴してなどいない。言ったのは親友のシレネとその彼氏に何かの間違いではないかと相談したくらいだ。


(どうして、みんな、知ってるの??)


そんなことを思っても、シレネやその彼氏が話して回ったなんてことを思うことはなかった。

ただ、そんなことを言われることを不思議がっていたこともあり、ユズカは自分でもどうしてなのかと疑問に思っていることのせいで、言われ放題となってしまい、それをいいことに更によく知りもしないというのに言いたい放題の罵詈雑言を浴びせかけられることになってしまったのだ。

次から次へと嫌味のオンパレードを耳にすることになり、咄嗟すぎて誰かを罵倒することもなければ、怒鳴るなんてこともしたことのないユズカは、上手いこと言い返せなくて、ついには固まってしまっま。

ただ、知らない相手から罵詈雑言を浴びせかけられて悲しいと思うことはあれど、それで怒りに任せて怒鳴り散らす気持ちにならないのも、ユズカらしいところではあった。

普通なら、あにたに関係ないと言ってもいいはずだが、それすらユズカはできなかった。

そこにシレネと彼女の彼氏が颯爽と現れてくれて助けてくれたのだ。他は、何事だと思っていても一方的すぎて状況がわからなかったようだ。


「言いがかりもいいところね。落ちたあんたたちみたいなのにユズカの良さがわかってたまるもんですか」
「君たち、見苦しいぞ。文句があるなら、彼女にではなく、落とされた理由を直接、聞けばいいじゃないか。まぁ、君たち以外は、落とされた理由なんてわざわざ効かなくとも、わかることだと思うが」
「「「「「っ!?」」」」」


そんな風に言われたことで、痛いところをつかれた顔をユズカに散々好き勝手言って来た面々はしていた。

どうやら、何だかんだ言っても、本人たちもそれなりに思うところはあったようだ。


(そういえば、彼氏くんは意味深なこと言ってたな。あれは、どういう意味だったのかな?)


思い返してユズカは首を傾げたくなった。

周りの何人かは、その通りだというように頷いてもいたのをユズカは見ていた。

ザクッとケーキに罪はないのにフォークを突き立てて、シレネは怒りをあらわにしていた。


(勿体ない)


ケーキを見てユズカは思わず、そんなことを思ってしまっていた。


「落ちたからって、面接まで通った人間を調べあげて嫌味を言うなんて、ホント信じられないわ。とんでもない暇人がいたものよね」
「私に聞かれても、私もわかんないから答えようがなかったし」
「……そんなに気になるなら、面接で聞けば?」
「え?」


シレネにそんなことを言われて、ユズカは物凄く驚いてしまった。


「自信がもてるようになるには、直に聞くしかないじゃん。まぁ、私はユズカの方をよく知ってるから選ぶとしたら、断然、ユズカ一択だけど」
「シレネ。それ、買いかぶりすぎだって」
「そんなことないわよ。あんたは、自分の良さが全く欠片もわかってないのよ。そこが面接官に伝われば、絶対、内定もらえるわ。伝わらないのは、そもそも面接官の見る目がないせいかも知れないし」
「それは、流石に言い過ぎだって」


力説されて、ユズカはこっぱずかしく思いつつ、シレネに元気をもらって面接に挑むことになった。


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