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新しくできたおばあちゃんとの生活は、不思議なことの連続で、ユズカにはとても楽しいものだった。両親が生きていた頃のユズカの周りには、楽しいと思えることはあまりなかったが、おばあちゃんと暮らし始めてからは、学校はイマイチでもおばあちゃんの周りは楽しいことが多かった。

もっとも、それを心から楽しめる人間も、ユズカくらいしかいないようなことも多々あったが、ユズカは自分が物凄く変わっているとは一度も思ったことがなかった。

更に一緒に暮らし始めたおばあちゃんも、ユズカにそんなことを言うことは一度もなかった。

奇妙なことが、そこかしこに溢れていたのは確かだった。毎日、毎日、ユズカの周りには奇妙なことがあった。それが、ない日はなかったが、そこに元から住んでいる者たちには、奇妙ではなくて当たり前のことだった。

ただ1人、ユズカだけが他の世界で生まれ育ったからこそ、奇妙だと思うことに溢れていた。

おばあちゃんのところに来るお客さんは、みんな仮装が好きな人たちだったのだ。ユズカは、引き取られた時から、それをとても面白いと思っていた。


(みんな凝ってるな。リアルを追求してるようだし、披露したくなるのもわかるな。どうなってるんだろ? 尻尾とか、耳とか、動いているお客も来たりするんだよ)


仮装好きな人たちが、おばあちゃんのお客に多くいても特に気にしてはいなかったが、仕掛けが気になったことは多々あった。

そういう時のユズカは、不躾にもガン見していたと思うが、おばあちゃんのお客たちはそれで気分を害する者はいなかった。


(最近は、尻尾や耳がよく動くお客様が多いな。……そういうのが流行ってるのかな?)


それこそ、ユズカが凄いなと耳や尻尾をガン見しているせいで、見られっぱなしなお客が面白がって動かしていることにユズカだけが全く気づいていなかった。

お客に遊ばれていることに店主は気づいていたが、面白がって教えることはしなかった。


「あれ? 今日、ユズカちゃんは?」
「学校に行ってるよ」
「あー、そっか。学生だっけ。ユズカちゃんに会えるのを楽しみにここに来てるのに残念」
「……あんまり、あの子で遊ぶんじゃないよ」
「仕方ないでしょ。あの子の反応、面白いんだもの」


にこにこと笑いながら、猫耳と尻尾をつけた猫娘のような仮装をしている女性はニィタァ~と笑う。その尻尾も、耳も、楽しくて仕方がないと動いていた。


「やれやれ。ユズカのおかげで繁盛してるのは、ありがたいけどねぇ。あんまりからかいに来るようなら、出禁にするよ」
「え~、ユズカちゃんに会いたいだけなのに」
「あの子に変わるような変化をもたらしたら、困るなんてもんじゃ許されないんだよ。わかってるのかい?」
「っ、わ、わかってるって」


猫娘は、殺気立つ老婆に冷や汗をかいていた。店の中の気温が一気に下がるのを感じずにはいられなかった。


「なら、からかいに来る奴らによぉ~く言っときな。ここの常連でいたいなら、からかうのも程々にしろってね」
「っ、」


老婆とはいえない殺気に尻尾を内股に隠して強さのあまり声が出なくなった猫娘はこくこくと頭を縦に振ることしかできなかった。

それから、しばらくは客が少なかった。


「おばあちゃん。最近、お客さん、来ないね」
「んなことないよ。ユズカが、学校に居る時に来てるんだよ」
「そうなんだ」


(残念。前は、私が帰って来てからお客さんがひっきりなしに来てたこともあったのに)


ユズカは、内心で物凄く残念がっていたが、本当のところ何があったかを何も知らなかった。

老婆も、それをユズカに伝えることはなかったし、ましてやお客もユズカに話すことはなかった。みんな自分の命が惜しかったようだ。


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