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シャーリーの家はオールポート侯爵家で、アンゼリカはバークロンビー伯爵家なのだが、アンゼリカの母親が元公爵令嬢だったこともあり、未だに公爵令嬢の振る舞いが、夫人は抜けていないところがあった。

そんな母親のやることなすことを手本にしていたアンゼリカは、シャーリーのことも自分より下に見ていたのは間違いない。

そんな面倒な一家に周りが関わりたくないことが大きくて、これまで放置されていた。それが、こんな形で最悪な結果になるとは思いもしなかった。

そもそも、アンゼリカと同じく、その母親とも話がかみ合ったことがないのだ。会話しているはずが、どんなに頑張っても通じないせいで、そのままになっていた。


「この度は、娘がちょっとした勘違いをしていたようで……」
「ちょっとした……?」


エイプリルは、アンゼリカの父親がそう言うのにわざとらしく言葉にした。


「えぇ、ちょっとした勘違いですとも。アンゼリカは、自分の婚約者にと望む子息を取られたと思っただけです。そうよね?」
「そうです」


アンゼリカの母親が、そう言うとアンゼリカはしおらしくそう答えた。

そもそも、その前に婚約していたのを破棄にしているのだが、それは突っ込まないことにした。ややこしくなるだけだ。


「いきなり平手打ちしたのにちょっとした勘違いだと?」
「え? 平手打ち??」


伯爵は、それを聞いていないかのように娘を見た。


「っ、頭に血がのぼってしまっていて……。シャーリーは、そんなことしないと思っていたから」


そこから、少しずつ雲行きは怪しいものになっていった。

なにせ平手打ちをしたのを見ていた令嬢たちも、間近に複数いて、その後に何があったかを見ていたジェレマイアが、ここにいたのだ。


「言いがかりだわ! アンゼリカが、そんなことするはずないわ!」


アンゼリカの母親もまた娘が何をしたかを正しく聞いていなかったようだ。すぐにそんな野蛮なことをするはずがないと言ったのだ。


「シャーリーに聞いてください。私たちは、親友なんです。わかってくれるはずです!」
「わかるわけないでしょ。親友じゃないと先に言ったのは、そっちじゃない」
「シャーリー」
「お姉様のことをなんて言ったかも覚えているわ。そんなのと親友なままでいるわけがないわ」


シャーリーは眠っていたが、再び目が覚めて、アンゼリカが両親と来ていると聞いて現れた。


「ちょっと! 謝罪に来たのにその態度は、何なの!!」
「謝罪? 私は聞いていませんけど? その前になさっていたのですか?」
「いや、ただの言い訳しか聞いていない」


シャーリーの父は、冷めた表情でそう答えた。


「シャーリー。私とあなたの仲じゃない。謝罪なんてしなくとも、わかってくれるでしょ? わざわざ、こうして両親と一緒に来たのよ?」
「来たから、何なの? 私を平手打ちして、姉を侮辱して、私があなたが目をかけた婚約者を奪ったかのように喚き散らしたのを許せって? ふざけないで。絶対、許さないわ」


その態度が気に入らないバークロンビー伯爵夫人が怒鳴り散らしていたが、ジェレマイアがロッドフォード公爵家の子息でエイプリルの婚約者だと知らなかったようだ。

それでもバークロンビー伯爵夫人は実家に言えば、どうにでもなるかのようにしていてアンゼリカも同じようにしていたが、バークロンビー伯爵は……。


「謝罪しに来たのにことを荒げないでくれ」
「荒げているのは、あっちよ!」
「そうです! お父様」


バークロンビー伯爵夫人とアンゼリカは、急に弱気になったと思ったようで、そんなことを言い始めた。

それをシャーリーたちは、白けた目を向けていたことにバークロンビー伯爵家の面々は気づいていなかった。


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