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しおりを挟む母と姉と絶縁してスッキリした美穂は、ハネムーンに行った。いや、目的地につく前に途中で、生まれたばかりの子猫たちを見つけた。ゴミのように捨てられている子猫たちを見つけて、放っておけなかった。
「浩一」
「美穂」
「「このまま、動物病院に行っても?」」
お互いが同じことを思ったようだ。それに驚きながらも笑顔になった。
「同じこと思ったみたいね」
「そうだな。問題ないといいが」
「早く行きましょ。琥珀を迎えた時より小さいもの。心配だわ」
「俺も、こんな小さい猫は初めてだ」
こうして、ハネムーンに行くことをやめて、子猫を拾って病院に駆け込んだ。
そして、予定よりも早く帰宅した美穂が琥珀をペットホテルに迎えに行った。琥珀には、早く迎えに言っている理由を知らないはずなのに不思議そうにしている気がした。
(やっぱり、わかるものなのね)
「琥珀。あなたの育メンっぷりを披露してもらいたいの」
「にぃ?」
「子猫よ。ゴミのように捨てられていて、野良さんみたいな親代わりもいなくて、必死に生きてた。私と浩一も、交代で見るわ。でも、琥珀にもあの子猫たちに色々教えてあげてほしいの」
車で迎えに行って、琥珀に美穂はそう話した。母や姉には、日本語を話しても全く伝わらなかったが、猫の琥珀には理解してもらえると思っていた。
琥珀は、じっと美穂の言うのを聞いていて、家に帰るなり、新しい匂いがするのか。うろうろしていた。
「美穂」
「……わかってる。相性が合わなければ、他に飼い主を探すわ。琥珀が大丈夫でも、あの子たちが駄目なこともあるだろうし」
「そうだな」
その後、美穂が思っていた以上の育メンっぷりを披露してくれて、それを見ているうちに美穂は懐かしい気持ちになった。
(育メンなところは、野良さん譲りね。頼もしいわ)
「オス猫が、子育てに積極的って、凄いな」
「野良さんが、琥珀たちにそうだったから。覚えてるのかも。家猫になったばかりでも、野良さんが琥珀に教えてたから」
「それは、凄いな」
「……」
「どうした?」
「ううん。何でもない」
(刷り込みって、恐ろしいな。いつの間にやら、私、誘導されてた気がする。母さんが、父さんみたいなのを結婚相手に選んだ理由って、優秀な自分をよりよく見せるために利用してたのか。似たりよったりだったから、選んでみたものの。やっぱり、似てると思われたくなくて、まともなふりしてた気がする。それで、自慢できる娘がようやくできたと思えば、それが思う通りに操縦できなくなったから、本性が出てきた気がする。本当は、母さんって、そんなに凄い人じゃなかったのかも)
子猫たちの世話に追われながらも、ハネムーンを満喫せずに戻って来て、思っていたよりもてんやわんやな楽しい新婚生活を送ることになった。
美穂たちは、子猫たちの世話に追われていたのが、いつの間にか我が子の世話に追われることになるのも、すぐのことだった。
その頃には、猫たちが完璧なベビーシッターっぷりを披露してくれて、美穂は大いに助かることになった。
美穂の周りには素敵な人と猫しかいないとしみじみと思ってしまった。
(なんて、幸せなんだろ)
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