姉に問題があると思ったら、母や私にも駄目なところがあったようです。世話になった野良猫に恩返しがてら貢いだら、さらなる幸せを得られました

珠宮さくら

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そんな会話を伯父として、何とも言えない顔をしていたら、帰って来た浩一に不思議がられた。野良さんのことがあってから、同棲をしていた。

琥珀が、美穂の座っている膝に乗ってゴロゴロと鳴いていた。撫でくりまわしている美穂の方は放心状態となっていた。


「どうした?」
「えっと、びっくりしてるだけ」
「何に?」


言いながら、美穂の後ろに座って美穂を抱きしめぬがら、琥珀の背中を浩一は撫でていた。浩一は、仕事で忙しいはずなのに美穂のことをよく見てくれている人だった。


「姉さんが、伯父さんたちのところに婚約者と結婚式に出てほしいって言いに行ったらしいの」
「お姉さん? 絶縁してたんだろ?」
「うん。向こうから、絶縁するって出て行って、何事もなかったみたいに連絡なく、母さんのところに行って、門前払いになったから、おばあちゃんと伯父さんのところに行ったみたい」
「あー、それで?」
「その、日付が同じだったの」
「同じ?」
「うん。私たちの結婚式と同じ日に結婚式やるからって、母さんと母方の親戚にアポ無しで突撃して出てくれって行ったって、さっき聞いたの」


美穂が、呆然としている理由が浩一にもわかったようだ。


「つまり、お義母さんも、君の親戚たちも、お義姉さんから結婚式の参加してくれって言われて、俺らの結婚式に出るって断ったのか?」
「ううん。予定があるからって丁重に断ったって」
「それは、びっくりするな」
「うん。びっくり」


美穂がぼーっとしていて、浩一は首を傾げた。


「他にもあったのか?」
「おめでた婚だって。でも、婚約者の親は結婚式に出る気はないみたいで、婚約者の方も結婚式に乗り気じゃないみたい」
「それで?」
「親戚に断られて、私に出てほしいって言ったみたい。しかも、結婚式は出会いの場にうってつけだから、招待してあげるって私の連絡先を聞きたがったって」


そこまで聞いて浩一は、ようやくこれでもかと眉を顰めていた。出会いの場うんねんの時に抱きしめている腕に力がこもっていた。


「なぁ、美穂」
「ん?」
「聞いてたより、お義姉さん、酷すぎないか?」
「うん。思っていたより、グレードアップしてたみたい」


言いながら、美穂は琥珀のお腹に顔を埋め始めた。琥珀は慣れたもので、なされるがままにになっていた。


「美穂」
「一番ショックなのは、姉さんじゃないわ。婚約者を連れて来た姉さんのことを母さんが門前払いしたことよ」
「……」
「同じ娘なんだなら、私みたいに出席してほしければ土下座しろって言ってくれたら、同じ扱われ方してるんだって思えたのに」


琥珀が、大丈夫なのか?と浩一のことを見ていたようだが、美穂がそれに気づくことはなかった。

浩一は、美穂の頭を撫でてくれていた。


(よりにもよって、姉さんも同じ日に結婚式をやるなんて。う~、変な気分)


姉と同じ日に結婚式をしようとしていることが、美穂には物凄いショックだったようだ。

その日から寝込むはめになり、高熱を出すことになり、仕事を休むはめになったほどだ。

その間、浩一と琥珀が美穂の側にいて寄り添い続けてくれた。高熱を出していた美穂は、その間ずっと子供の頃のことを思い出していた。


(あぁ、そっか。私は母さんと同じでいようとした。母さんの自慢できる理想の娘になろうと必死になってた。母さんを喜ばすのに必死で、似てない姉さんみたいになりたくなかった。でも、母さんと姉さんは、そっくり。私だけが、似てない)


姉妹で、同じ日に結婚式をやるとなって、先約が美穂の方だとして、母方の親族はみんな美穂の方に出る気で、由美の方を断ってくれた。

母はどちらも娘のはずだが、たとえ絶縁した娘でも、常識が欠落していようとも、結婚式をやるとなったなら、門前払いせずに話を聞いてほしかった。通知表の偽装のことを謝るべきは、母の方だったのにそれもしていない。

それが、ここに来て美穂が高熱を出してまで受け入れられないことだったようだ。


(母さんのこと、ずっと大事な家族だと思っていたけど、あれから違っていたとわかった。私は、これから私の大事な家族は浩一と琥珀だけになる。姉さんも、結婚して子供も生まれれば家族ができる。姉妹で、新しい家族ができる。それでいいのよね)


熱が引いてから、そんなことに行き着いた美穂は、生まれ変わった気分だった。

気のせいかも知れないが、野良さんがずっと美穂の側にいてくれた気がした。


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