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美穂にとって、大事なはずだった人間の家族は空中分解したが、大事な家族に愛猫たちが加わって、元々大事な家族の中にいれていなかった姉が絶縁となっていながら、美穂は気になっていた。

母との関係が絶縁状態のまま、伯父たちが美穂を気にかけ続けてくれていたが、あちらは1人なのだ。姉は、敵を作ることは上手いが、味方を作るのは下手くそ過ぎる人なのだ。それに友達作るのも下手くそだし。仕事仲間とも良好な関係になれてるかも厳しそうなのは、簡単に想像できる。


(ストレス発散の私がいなくなって、どう過ごしているのかな。別に八つ当りする人を見つけて、意地悪しすぎてないといいけれど)


それと母方の親族たちも、由美のみならず、美穂も母と絶縁することになったことを心配してくれていた。母の兄夫婦や従兄弟たちとの交流が、増えていった。

母は、娘たちとは仲良くする気はないようで、美穂のことを欠片も気にしていないかのようにしているようだ。母にとって、美穂も自慢の娘から呆気なく外されてしまったようだ。物凄くわかりやすいと思うくらい娘なんていないように生活している。

それに祖母や伯父たちは、お手上げのようになっていて、美穂よりも怒っているのは伯父や叔母だった。母は親族たちともやり合って、縁を切ることにしたようだ。


(母さんって、仕事ができるバリバリのキャリアウーマンのイメージが強かったけど、そんなことなかったみたいね。修復するより、見放して捨てる。そんなことをするとは思わなかったのに。余程、余裕がなくなってるみたいね。それか、自慢できる娘が自分を馬鹿にしたのが許せなかったのかも)


その分、美穂に味方ができた。そんなつもりで、ぶちまけたわけではないが、結果的にそうなっていた。

そんなことになって、就職が決まって喜んでくれた親族たちがいてくれて、猫たちも側にいてくれた美穂は幸せな日々を過ごしていた。

そんな時に祖父の葬儀や法要の時に会えなかった従弟が美穂の知り合いだったことを知ることになるとは思わなかった。


「え?」
「あれ? 君、栗原さんだよね?」
「あ、はい。お久しぶりです」
「大輔。知り合いだったのか?」
「あー、大学の講義で会った。え? 美穂さん、僕の従妹ってこと?」
「そうだ。お前、早生まれだから、美穂の方がお姉さんだと思うぞ」
「従姉ってことか。あー、マジか。全然、気づかなかった」
「私も」


伯父たちは、同じ大学でも大勢いるし、留学中だったこともあり、息子の話を美穂にしていなかったようだ。

従弟の長谷川大輔とは、大学の講義で会ったのは確かだったが、合コンでもよくあった。祖父の葬儀の前のことだ。美穂は、彼氏が欲しかったわけではない。いや、全然ほしくなかったわけではないが、大勢で食事をしたかっただけだ。まだ、一人暮らしに慣れていなくて、1人分の食事に美穂が慣れるのに時間が必要だったのだ。

彼氏は作れなかったが、楽しく過ごせていたのは、大輔がいたからだ。

葬儀の時と法要の時は留学中だったはずだ。それで、これまで従姉弟として会わなかったようだ。

昔の話は、伯父さんたちや美穂の母がいない時に大輔とした。合コンで出会っているとは言いにくいのは、お互いさまだ。


「びっくりした。流石に合コンで、よく会ってたとは言えなかった」
「よく会ってたけど、もっぱら猫の話題で盛り上がってただけなんだけどね」
「早々。野良さんは元気?」
「……野良さんが、だいぶ歳だけど」
「そっか。あれ? 猫のこと助けてくれた足長おじさんって、親父?」
「そうなるわ」


猫を家族にしたと知らせていたから、琥珀のことも話している。


(そういえば、猫も好きだけど、犬がもっと好きって言ってたっけ。動物好きなのは、伯父さん譲りみたいね)


「まぁ、親父は金持ってるし、いい足長おじさん見つけたな。野良さん、栗原さんが中学くらいからの付き合いだったよな? なら、十年近い付き合いで、それよりも年上なら、そうなるか」
「そうなるよ。……でも、よく覚えてるわね」
「あー、昨日も、話題になったから」
「え? 昨日??」


大輔は、家で話題になったのではなくて、あの時合コンにもいた大輔の友達が美穂のことやら、猫のことやらを話題にしたと聞いて、美穂はきょとんとした。

そんな風に話題にのぼるようなことをした覚えが全くなかったのだから、そんな顔にもなる。


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