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しおりを挟む美穂の通知表だと思っているから、ボロクソに言っているが、それは過去の自分を由美がただ単にボロクソに言っているだけの状況に美穂だけが、途方に暮れた顔をしていた。
母は、由美のボロクソに言っているのを耳にして笑いそうになっていて、耐えるのが大変そうにしているのが、美穂には見えた。
でも、由美は母の方を見ていなかった。美穂だけを見るのに忙しくしていた。
(ここまで来ると母さんも、姉さんも、そっくりだな。でも、姉さんよりも、母さんのやってることの方が、私は嫌だな。こんな人のために私が、ずっと頑張ってきたなんて、凄く嫌だな)
姉が妹の本当の通知表を目にすることはなかった。本物の通知表を見せていたら、母は笑うのを堪えるよりも疲れていただろうが、偽造したものだということが、由美にバレることはなかった。
美穂は、それを言う気になれなかったのだ。
(自分の通知表を見たことないなんてことないはずなのに。それとも、私の名前が書いてあるってだけで、とやかく言いたいだけなのかな? 実際は自分の成績について言ってるだけなのに。それを偽造したのが、母さんだって知ったら、もっとショック受けそうだな)
そんなことを言う由美にお腹の筋肉を母は鍛えられることになったようだ。
それでも、長期休暇で姉が戻って来てる時は、美穂は図書館に避難したり、高校でやっと母や姉に振り回されない友達ができて、その子たちと出かけたり、バイトをしたりして、あまり家にいないようにした。
母も、家族で出かけたり旅行を考えるよりも、仕事している方がいいと思ったようだ。美穂も、姉や母と出かけることになるよりはと思っていた。その辺も、母と話して決めた。母と美穂だけで、出かけるのもしなくなった。高校の友達だけでなくて、バイトが忙しいということにした。
(あんな母さんを見て、今までみたいに2人っきりで出かけるなんてできない。もう、母さんのために行動して無理するなんてしたくない)
姉が一人暮らしを始めてから、美穂は充実した日々を過ごせていた。
姉がいない方がいいかと言うとそうではなかった。美穂は、早く自分も大学に行って一人暮らしをしたいと思うようになっていた。
わざわざ姉だけを仲間外れにしようと躍起になっている母を見て幻滅していくばかりと美穂はなっていた。
そんな姉は実家に戻って来ていても、家族も忙しくしていることもあったが、その他に一緒に出かける人がいないようだ。たまに地元の友達と出かけると自慢されるが、そういう時は決まって戻って来た時の姉の機嫌が良くなかった。
それも、ワンシーズンで1、2回あるか、ないかだった。中学、高校の友達と出かけると言って美穂に自慢しながら出て行って、戻って来たら……。
「あんなの友達でも何でもなかったわ。彼氏ができたことを自慢しまくって、最悪だった」
「……」
そんなことを良く言っていた。散々自慢していたのに真逆なことを美穂に聞かせているというのに由美は全く気づいてはいないようだ。そんなことを聞かされ続ける美穂は聞き流しながら、こんなことを思っていた。
(矛盾しているって自覚がないのよね。色々やってたのに未だにこっちには友達が多いみたいにしてるけど、やめてほしいわ。そんなことしなくとも、友達なんていないのよくわかってるのに)
美穂は、それを聞く一方となっていた。きっと、大学でも、そういう相手がいないのではなかろうか。
(そういうのをやめれば、友達くらいできそうなのに。どうして、嘘と見栄と私への罵りばかりなんだろ? そんなことして、何が楽しいんだろ?)
母は、帰って来るたびにボロクソに言う由美に苦笑しながらも、偽造する通知表を美穂の机に勝手に忍ばせて、笑っていた。
それを見るたび、美穂は母が嫌いになっていっていたが、母はそれに気づいていなかったようだ。
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