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しおりを挟む母が猫にモテなさすぎることがわかり、猫に引っ掻かれて噛みつかれたことで、苛立っていた。
機嫌の悪いのを隠すことがない母との生活は長く続かなかった。長期休暇のたびに由美が家に戻って来るようになったのだ。猫に苛立つより、上の娘のことで母は苛立っていた。
(母さんの苛立っている姿って、姉さんに似てるかも。……やっぱり母娘だな)
母を見て、美穂はそんなことを思うようになっていた。
最初は、姉が大学1年の時だけ長期休暇に丸々戻って来ているのだと思っていたが、余程やることがないのか。次の年も、その次もと普通に長期休暇の度に戻って来て、長期休暇を殆ど実家で過ごす姉に母は、あれやこれやと忙しいだろうからわざわざ戻って来ることもないと由美に伝えていた。
だが、特にやることもないようで、忙しい合間にわざわざ戻って来てあげているのだと姉は偉そうに言っていて、それに母はうんざりした顔をして、勘弁してほしそうにしていた。母はいつも説得しきれないのが、いつものパターンとなっていて、げんなりもしていた。
美穂は、そんな姉と母のやり取りを見聞きしながら、どちらの味方にもならなかった。
(流石に長期休暇の間中、こっちにいることまでは想定してなかったけど、母さんもあからさまになってきたな)
戻って来るたび、由美は母と言い合い、そのうち美穂の成績について根ほり葉ほり聞き出そうとするのが、いつものパターンになっていたが、美穂がそれに答えることはなかった。
すると何を思ったのか美穂の机を勝手に開けるようになったのだ。
(最悪。これは、私の成績がわかるまではしつこそう)
そんなことを姉にされていることを母は見ていて、姉のことでずっとイライラしていたのをどうにかしたくなったようだ。
「美穂のを勝手に見るんだから、美穂だって勝手に見てもいいはずよ。まぁ、見ても面白くはないと思うけど」
「……え?」
由美の通知表を母は、美穂に渡して来たのだ。だが、美穂は姉の成績をそこまで知りたいとは思っていなかった。
母は、見る気がないとわかったのか。わざわざ読んで教えてくれた。美穂は、それに眉を顰めずにはいられなかった。
(これで、私と比べてたと思うところなのか。そらとも、こんなことまでして、わざわざ姉の成績を私に教えた母さんに何か思うのが正解なのかな。なんか、凄く理想の母親と違ってきたな)
あんまりな成績表に言葉を失っているものと母は思ったようだ。母は、自分が何をしているかがわかっていないようだ。
「これを偽造しましょ」
「え? 偽造??」
「成績うんねんの話をして、美穂を馬鹿にしてるの聞いてるのも、うんざりなの。それこそ、自分はそこまでじゃないでしょって、由美に言ってやりたくなるのよ」
「……」
(確かにこの成績を知ってれば言いたくなるだろうけど、でも、だからって偽造するなんて言う? それに私にそれを言う必要あるの? どうして、こんなことするの?)
どうやら母は、相当由美に苛ついていたようだ。それはわかる。母は、美穂がドン引きしていることに全く気づかないまま、行動に出ることにしたのは、すぐだった。由美がやってることへの仕返しをしたかったようだ。
流石に自分の通知表の名前の部分だけを美穂のものにしたような物を見つけても、すぐに気づくと思っていた。でも、由美は通知表を見つけるなり、美穂にこう言ったのだ。
「こんな成績で、大学に行けると思ってるの?」
「……」
勝手に机を開けて漁って見つけた通知表のことで、由美はそんなことを言ったのだ。全く自分の通知表だと気づいていないらしく、美穂の物だと思って散々なことを言ってきたのだ。
(どうしよう。この人、自分の通知表なのに全く覚えてないんだわ)
美穂は、散々なことを言われながら頭を抱えたくなってしまった。
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